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三つの夢 〜冴えないOLとクロの不思議な2か月~  作者: 田古 みゆう


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p.1

 少し早い昼食をとったあと、福田真由は、小さなポーチを手にいつもの公園へと急ぐ。


 愛煙家である真由には、食後の一服は欠かせないものだった。しかし、世間の風潮は禁煙傾向にあり、もちろん真由の職場もそれに倣っている。同僚たちは皆、タバコを吸わず、喫煙スペースすら設けられていない職場には、真由が至福のひとときを味わえる場所など、どこにもない。


 そのため、雨の日も雪の日も、台風の日でさえも、真由の足は公園へと向かうのだった。


 真由が至福の時を味わうその場所には、子供向けの遊具は一切ない。奥の方には、なんとなく整備された小さなグラウンドがあり、広場の中央には、まるでプリンを思わせるような台形のモニュメントが聳えている。プリンの山頂は噴水になっているようだったが、時間が決まっているのか、それとも、噴水としての機能を止められているのか、真由が足を運ぶようになってから、まだ一度も彼女はその本来の姿を見たことがなかった。


 プリンから溢れた水は、公園の遊歩道を二分するかのように造られた水路を流れ、公園の入り口に造られた小さな池を終着地として流れるのだろう。しかし、水路もまた本来の機能を果たすことなく、乾いた姿をありありと見せている。公園に入ってすぐに目につく水路の終着地には、泥や枯葉が積もっていて、なんとも寂しい感じの公園だった。


 そのせいなのか、人影を見かけることはあまりない。利用者が無く、園内はいつも閑散としていたが、それが返って真由の心を落ち着かせていた。やはり、至福の時間は誰にも邪魔されたくないものだ。


 入口を入ると、石の台座と低木の植え込みが等間隔に並べられ、遊歩道の道筋を作っている。台座は、ちょうどベンチの代わりになる大きさで、大人が2人並んで座れる広さだ。


 その台座の入り口に一番近い場所が、真由の指定席だった。理由は特にない。敢えて理由をつけるとしたら、入り口に一番近いから。それだけのことだった。いつも、ただなんとなく同じ場所に座り、それが習慣になっていただけのこと。別にこだわりがあった訳ではない。


 しかし、公園に着いた真由はドキリとした。指定席に先客がいたのだ。背丈からして、子どもだろう。顔が隠れてしまうほど大きな鍔のついた帽子を被っているので、その子が男の子なのか、女の子なのか、はっきりとはわからない。服はもちろん、被っている帽子も、先の丸まった靴までも、全てが黒という格好をしている。

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