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あなたはまことに死んでしまった2
彼は天国へ行きたいと常々想っていた。晩年、夢枕に立った天女の姿をした天界人を見て、ついにお迎えが来たのだと想った。家族・親族に囲まれている自分の体を置いて、魂のみで呼吸を始める。それによって、生前の世界と死後の世界がさほど、違いがないのだと気付かされる。天界人の手を恭しく取り、共に歩き始める。「空を飛ぶ事も今は可能なのだと。」とその方は話す。桜美はるか。彼女は警告者件案内人なのだ。その天国への道のりを共に歩く彼を仮谷ありか。随分と男らしくない、女の様な名前だろう。彼女は彼の事を知っていた。具体的には、名前、性格、生き方、家族名、コンプレックス等である。警告者として、案内人として、それぐらいは把握するものらしいのだ。(天国の描写については、読者の想像にお任せするとしよう。)