空のかなた 第二話
おいおいおい・・・・・・・。おいたわしや。天命もとい運命には逆らえない。それは道理なのに、この後に及んで私は抵抗しようとするも、それは彼女が彼の姉に成る程度にしか影響しない。
まったく。私の無能さは神もとい運命の女神に申し訳が立たない程である。
今回の出来事はまったくもって私はノータッチで、進んでいく。
後ほど私がフォローする予定なのだが、罪悪感にたえない。
悪を目の前にして、スルーするほど私は意固地に成る人間ではない。つまり、今している事が絶対に正しいとは思っていない。選択肢があれば、迷わず、歩み寄るだろう。意固地すなわち頑固者は絶対に自分が正しいと。選ばされた選択肢を度外視する事はないのである。
これが現実の人間だと、カルトにはまった人間が選ばされたにも関わらず、意固地に成って、そのまま、テロ行為をしてしまう行動原理に似ている。地下鉄サリン事件等もその類である。
結局の所、私が正しいと宣言する者は大体は意固地に成っているだけなのである。
私は自分こそが神もとい天の申し子だとは思っていない。私はクリスチャンだったが、今は天国に住まう案内人である。案内人すなわち「神曲」におけるウェルギリウスである。
自己紹介はこれまでとして、本編へ移ろう。
転移される。
転移魔法だろうか?日常の中にぼわ~っと、空間が浮かび上がり、三人はそこ、庭の中から消去される。後に残されたものは、彼方の大学ノートと野外用のテーブルとイス。それから、運動不足解消用の小型のダンベルだけだった。
三人が転移された場所は、箱のようなヨゴレやシミのない四角い部屋だった。
部屋は白色球のライトによって、照らされていた。
そこのテーブルには、ナイフやロングソード、日本刀等が数多く置いてあった。
三人の反応はそれぞれで。
「刀!この輝きはまさしく刀。」
これが彼方である。
「えっ?物騒な部屋だね。」
これが作意である。
「狂気めいている部屋ね。まるで、私達に殺し合え。と言わんばかりね。」
また、別のテーブルには、メッセージが書いてあった。いわく、一時間時間をやろう。それらの武器で一人を刺し殺せ。それでお前達は解放される。
彼方が言う。
「そんなの見てないで、外に出るドアを探しましょう。オレもちょっと刀が気に成るけど。」
作意が言う。
「そうだね。さっさとこの物騒な部屋からおさらばしたいからね。」
作家が言う。
「って言っても、ドアらしいドアは見当たらないけど。さわった感じで隠れているのが解るのかしら」
しばらく、広くない部屋をぐるっと回って作意が言う。
「ないね。ドア。」
作家が言う。
「漫画に良く有る、死んだら出られるワールドなのかしら?いっそ、刺してみる?」
作家はどうやら、事態に興奮して、冷静さを欠いているようだ。
彼方が言う
「どうやら説明書通り、一人を刺すしかないみたいね。」
「えっ?なぜそんな結論に成るの?」
「「全ての可能性を疑い尽くして、最後に残ったものが真実である。」誰のセリフだったかしら?オレもそう思う。」
「じゃあ、殺すしかないじゃない。」
作家は武器を手に取る。ナイフであった。
作家が一番、武器のテーブルに近く、次に作意、一番遠くに彼方がいた。
作家が彼方にナイフを投げつける。横に避ける。武器のテーブルにて、作家と向かい合う。無論、作意は反応出来ていない。
ロングソードを手に取り、作家を剣の先端にて、刺す。
無論作家も無抵抗ではない。縦に避け、彼方がロングソードを取った衝撃で落ちたジャガーナイフを床上にて取る。
しかし、それよりも早く日本刀とロングソード両方を取った彼方が唯一の盾テーブルを蹴りあげる。多勢に無勢。何とかしようと、作家はジャガーナイフを投げてしまった後は当然のごとく、二刀流によって弾かれ作意の目に映るのは、姉が斬殺される場面であった。
「いやーーーっ!!」
作意はそう言って座り込む。
作意は女の子の様にしくしく泣き出す。
理解力が高いのは、姉ゆずりだろう。現実を否定しているという事は、現実を見ているという事だろう。
戦いは終わってしまった。
殺人劇。私は身も心も引き裂かれそうだ。
しかし、姉を悼む弟というのも、中々様に成っているものである。
この殺人劇は一切の実際の団体、個人、国家が関係しません。すべて、創作物の産物です。