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第五十二話 異様な世界

 そこは異世界の様だった。

 凍りついた建物。電気を纏う犬。刀を持った真っ白な死に装束の白髪の女性と、小麦色の肌をした凛々しい女性。そして、空にはミニスカートで翼を広げ舞う愛の姿。一体、どう言う状況なのか、全く把握できていないが、一つだけ分かる事がある。ここに居る皆が愛と僕を敵視していると言う事だ。

 こちらとしては全くもって戦う意思は無い為、両手を顔の高さまで上げ、


「あーっ……。僕に戦う意思は無いんだけど……」


 と、苦笑すると、上空で愛が怒鳴る。


「コォォォラァァァァッ! ふざけた事言ってんじゃないわよ! あんた!」


 いや、ふざけてるのはどっちだ、と呆れた表情を向ける。流石にここは紳士的に対応した方がいいのだろうと、普段とは違う言葉遣いで言い放つ。


「あのさ。言い難いんだけど、そろそろ降りてくれるかな? キミは恥ずかしく無いんだろうけど、僕は凄く恥ずかしいよ」


 その言葉にキルゲルは『何か気持ち悪いぞ』と頭の中で呟き、『うるさいよ』と僕は返した。上空で顔を真っ赤にした愛は、


「な、何が恥ずかしいのよ! 大体、あんた来るのが遅いのよ!」


 と、何とも理不尽な言い掛かり。その言い掛かりに思わず、


「残念ながら僕はキミと違って空を飛べない。故に、空を飛んで下着を見せびらかすキミとパートナーだと言う事が凄く恥ずかしい」


 と、今まで思っていた本音が漏れた。思わず言ってしまった本音に、右手で頭を押さえる。きっと怒るだろうと思っていたが、やはり怒った。


「うるさい! バーカ! あ、あんたなんか、パートナーだ何て思ってないわよ! ボケッ!」


 子供の様に。流石にこれ以上醜態をさらされるのも嫌なので、とりあえず下りる様に説得する。


「はいはい。分かった。分かったから、取り敢えず降りて来い。愛」


 そう言うと、ムスッと頬を膨らせながらゆっくりと隣りに降り立つと、セイラの具現化を解く。セイラはイヤリングへと戻ると同時に、その綺麗な声をこちらへ向ける。


『晃。ごめんね。愛ちゃんが迷惑ばっかりかけて』

「いえ。もう大分慣れたよ」


 と、返すと、セイラが小さく『ふふっ』と笑った声が聞こえ、思わず苦笑する。隣りでは愛が目立たない一人の少年の後ろに佇む白の死に装束を身に纏った女性を睨み、他の人達は僕らを警戒しているのか、武器をかまえ睨みを利かせているのが分かった。

 流石にこの場でこのメンバーを相手にする程の力は無いし、そもそも戦う意思も無い為その場を収める為に慌てて口を開く。


「あっ。僕ら、あなた方と争う気はありません!」


 と、言うと隣で驚きの声を上げる。


「はぁっ! ば、馬鹿! あんた何言ってんのよ! こいつらここを凍り付けに――」

「その現場を見たのか? どうせ、また早とちりだろ?」

「は、早とちりじゃないわよ! だ、大体、そこに居るのは白髪の女は人間じゃないわ!」


 早口でそう言いながら、白い死に装束を身に纏った女性を指差す。この言い分だと、確実にその光景を見たわけじゃないんだと理解し、小さくため息を漏らす。


「セイラ……」

『えぇ。晃の言う通り、ワタクシ達は見てないわ。でも、彼女が人間じゃないのは確かよ』


 落ち着いたセイラの声に、私の言い分は正しかったと言わんばかりに、「ほ、ほら! 私の言った通りでしょ!」と、愛が胸を張る。自信満々の愛に対し、呆れため息を漏らす。


「でも、半々だろ? ったく、第一に僕らはこんな事をしに来たわけじゃないだろ!」


 軽く怒鳴ると、愛が萎縮した様に俯く。流石に言い過ぎたと思ったが、現状を考えると無駄に戦う事は避けたい為、ここは厳しく行こうと心に刻む。


『愛ちゃんだって、悪気があった訳じゃないわ』


 と、愛に代わってセイラが言うと、電撃を纏った犬が渋い声で、「悪気があって、こんな事をしてもらっては困るがな」と、言い放つ。流石に驚いた。犬が喋ったのだから。けど、感覚が少し麻痺しているのか、普通に隣りで鬼獣を召喚しようと愛が取り出したカードを奪い取っていた。


「あっ! 何すんのよ!」

「これ以上ややこしくしない!」

「なっ、や、ややこしくって何よ!」

「この現状を見て、ややこしくないと言えるか? そもそも、僕等がここに来たのは――」

「あのさ、私達の事無視するの止めてくれないか?」


 軽くもめていると、小麦色の肌の少女が鋭い眼差しを向け刀を抜く。やばいと、思い慌てて、


「ま、待って! ほ、本当、僕等に戦意は無いんだって!」


 と、言うと、突然奥の方に立っていた少年の大剣から低い声が響く。


『そっちの娘はそうは見えんが?』


 そっちの娘と言うのは愛の事だろう。と、思っていると突然キルゲルが具現化され、戸惑っている僕をよそにその大剣に対し言葉を向ける。


『久しいな。フロードスクウェア。貴様が人間に使われているとはな。昔のお前ではありえない光景だな』

「知り合いですか?」


 唐突に投げかけられた言葉に、持ち主の方がそう投げかける。


『知らん』


 即答したフロードスクウェアと呼ばれたサポートアームズに、苦笑しキルゲルに目を落とす。


「あんな事言ってるけど、本当に知り合いか? キルゲル」

『フッ。相変わらず、都合の悪い事は忘れる様にしているんだな』


 挑発する様にそう告げるが、相手は全く興味が無い様に、


『都合の悪い事? 残念ながら、俺に都合の悪い事など無い』


 と、サラッと言い退けた。その言葉に対し、キルゲルの方がキレた。


『ならば、その体に刻んでやろう』

「や、止めろ!」


 思わず叫ぶが、一瞬で意識が飛び、体が支配される。そして、意識が戻ると、目の前に白髪の死に装束を纏った女性の顔があり、互いに刃をぶつけ合っていた。

 何が何だか分からない状況の中、この場は退こうと反射的に後方へ飛び退くと同時に、キルゲルがボソッと呟く。


『邪魔が入ったか』


 と。そんな僕らに鋭い眼差しを向ける白髪の女性は、白刃の刀の切っ先をこちらへ向け構える。威圧的なその視線で彼女の強さが少なからず分かった。今まで戦ってきた鬼獣達の中でもトップクラスに近い強さだ。先日あった雷怨や土愚兎と同等の強さだろう。


「どういうつもりです。返答次第では――」


 彼女が一度目を伏せた後、殺気を帯びた目が向けられ、


「殺しますよ」


 と、背筋が凍る様な静かな口調で告げられた。だが、その言葉に対し、キルゲルは静かに笑う。


『殺す? フッ……面白い! やれるモノなら、やってみろ』

「止めろ! キルゲル! 僕等はこんな事をしている暇は――」


 キルゲルを止め様として言った一言が、彼女の逆鱗に触れた。


「私など相手にならない、そう言いたいのですか!」


 怒りの篭った言葉と同時に刃が振り抜かれ、それをキルゲルが右腕だけを動かし全て受け返す。体力が奪われていくのが分かるが、それを表情に出さずただ奥歯を噛み締める。一方で、白髪の女性は苦痛に表情を歪めながら、何度も刃を振り抜く。


『鋭い切り込みだが、倍の力で打ち返せば、そちらが先にくたばるぞ』

「クッ!」

「止めろ……って……言ってるだろ……」


 彼女の刃を受けながらも、必死にそうキルゲルに言い聞かせる。だが、全く言う事は聞かず、体力だけあ奪われ、額から汗が溢れる。

 抗戦する僕の後ろで、「ヴァン」と愛が声を上げたのが分かった。そして、青白い弾丸が脇を過ぎ、少年の方へと向かうが、それを大剣で一閃し爆音が周囲に広がった。

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