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第四十五話 封術師とガーディアン

 キルゲルの告げたガーディアンマスターと言うフレーズに、僕も愛もただ唸るだけだった。

 “初代”と、言う事は一番最初に存在したガーディアンなのだろうが、一体いつの時代の話なのだろう。それに、初代と言う事は今もそれは引き継がれているのだろうか。

 不意に浮かんだ疑問に、キルゲルは気付いたのか、静かに答える。


『今の時代にそれが存在するか分からぬが、あの時代には少なくとも五人のガーディアンマスターがいたのは確かだ。火・水・雷・土・風の五つのな』


 少なくともと、言う事はキルゲルが知る限りはと、言う所なのだろう。


『そして、その中でもずば抜けたアームズ製造能力と、戦闘能力を誇った一人の男が、ガーディアンマスターと言う称号を一つにまとめ、初代ガーディアンマスターとなった』

「ちょ、ちょっと待ってよ。そ、それって、五人のガーディアンマスターが戦って称号を奪い合ったって事?」


 愛が慌てて話の腰を折る。五つのガーディアンマスターと言う称号を一つにまとめたと言う事は、少なからずそう言う事があったと、言う事だったのだろう。けど、まだそう決まったわけではなく、他のメンバーがその人に称号を譲ったと言う考えもあるからだ。

 愛の問いにキルゲルは『フムッ』と、小さく息を吐き、


『確かに……争った』


 キルゲルの言葉に「くっ」と愛は声を漏らした。と、同時にキルゲルは『勘違いするな』と静かに言うと、


『争ったのは、称号欲しさにではない』

「それじゃあ、一体、何の為に?」

『今の話に、封術師と、言うワードが出てこなかった事に、違和感を感じないか?』


 僕の問いに、キルゲルがそう告げる。

 確かにおかしいとは思っていた。ガーディアンは封術師を守る為の存在、と聞かされていたからだ。今のキルゲルの話を聞く限り、封術師よりもガーディアンの方が先に存在している事になる。ガーディアンは元々封術師を守る存在ではなかったと言う事を言いたいのだろう。

 不意に愛の方に顔を向けると、俯き不安そうな表情を浮かべていた。


「その言い方だと、その時代に封術師はいなかったの?」

『少なくとも、我は聞いた事も見た事も無かった。だが、存在していたのは確かだろう』


 キルゲルの言葉に愛と顔を見合わせ、首を傾げる。


「えっと……どう言う意味だ? 聞いた事も見た事も無いのに、存在してたのは確かだって?」

「何かそう確信する理由があるの?」

『ああ。確信する理由はある。鬼獣の存在だ』


 その言葉にもう一度愛と顔を見合わせる。鬼獣の存在が、何故封術師が存在する確信なのか分からなかったからだ。まぁ、鬼獣を封じるのが封術師の役目と、言う事ならば、鬼獣が存在するイコール封術師は存在していたと、言う事になるんだろう。

 ただ、どうしてガーディアン側のキルゲルが、その封術師の名前を聞いた事が無く、姿すら見た事無かったのか、と言う疑問が浮かぶ。それは愛も一緒だったのか、僕が質問する前に身を乗り出し問う。


「鬼獣がいるイコール封術師って事なら、どうして、あんたは聞いた事も見た事も無かったのよ? ガーディアンは守護者でしょ? 今は封術師を守る事になってるけど、その当時封術師を見た事無いなら、ガーディアンのサポートアームズだったあんたは一体何を守ってたって言うのよ?」


 今までの話を聞いて纏め上げた問いに、キルゲルは黙り込んでしまった。迷っているのか、それとも言い難い事なのか、どちらか分からないが、キルゲルは沈黙を守る。

 やがて、六時を告げるチャイムが公園内に響き渡る。静かな園内に響き渡るチャイムが終わると、キルゲルは静かな口調で告げる。


『ガーディアンが守っていたもの……それは、一国の姫だ』

「姫? えっ? じゃあ、ガーディアンって、単なる一国の姫を守る兵士だったって事?」

『まぁ、簡単に言えばそうだ』


 呆れた様な愛の声に、吐息混じりにキルゲルが答える。だが、すぐに真剣な口調で告げる。


『だが、こう考えろ。その姫は、ガーディアンが守らなければならない程の存在だったと』

「ガーディアンが守らなければならない存在って……」


 怪訝そうに愛がオウム返しの様に呟くと、愛の視線がこっちに向けられた。


「それって、その姫を鬼獣が狙っていたって事になるわけだよね? じゃあ、封術師は一体何処に出てくるのよ? 今の話じゃ、ガーディアンは姫を鬼獣から守っていたって話しにしかならないじゃない?」


 愛が真っ直ぐな目を向けそう言う。だが、僕の中で一つの仮説が出来上がっていた。多分、キルゲルの言いたい事と、おおよそ当たっている気がする。だから、軽くキルゲルに触れ、考えをキルゲルへと伝達する。愛には気付かれない様に。その答えに、キルゲルの声が頭に響く。


(おおよそ正解だ)

「そうか……」


 ボソッと呟くと、怪訝そうな視線を向ける愛と目が合った。その目が訴えかける。「何こそこそしてるのよ」と。思わず苦笑してみせると、ムッとした表情を向けられた。


「ちょっと。考えがあるなら、私にも聞かせなさいよ」

「えっ、でも……」

『過去の話なんだ。話しても別に問題はない』


 戸惑っていると、キルゲルが静かに口を挟んだ。その言葉を聞き、愛がコッチを睨む。苦笑し、その場を切り抜け、自身の考えた結論を述べる。


「今の話を聞いての僕の考えだ。ガーディアンは姫と言う存在を守っていた。じゃあ、一体誰から?」

「それは、鬼獣からでしょ? キルゲルの話の内容からして、そう言う事じゃない?」


 当然じゃないと、言いたげに愛がそう答える。僕は軽く首を振り、


「じゃあ、鬼獣は何故、その姫を狙うのか。確かに、自分の意思を持つ鬼獣ともここ最近戦ったけど……そう言う鬼獣は珍しいんだろ?」

「そうね……。考えてみると、ああ言う自我を持った鬼獣って言うのは、極少数だって聞いてたけど……今よりも、昔はそう言うのが多かったって言うのはどう?」

『その線はゼロだな。あの時、自我を持っていたのは、五大鬼獣と呼ばれる最上級ランクの鬼獣位だ』


 キルゲルの発言に「そっか」と呟いた愛は、腕を組み小さく息を吐いた。


「今の言葉からすると、多分、鬼獣が生まれたのは、その当時だと思うんだ」

「鬼獣が生まれたって……存在を知らなかっただけで、鬼獣はいつの時代にも普通に存在してるものよ。私は、そう言う風に教わったけど?」

「じゃあ、聞くけど……ガーディアンが存在する以前、鬼獣はどうしてたんだ? もし、存在を知られる事無く、存在し続けてたとして、そいつ等は人に危害を加えていなかったのか?」

「そ、それは……」


 僕の問いに愛が口ごもる。


「そもそも、ガーディアンの使う武器は、封術師の使う奴とは違うだろ? 封術師は、鬼獣を封印する為に、だけど、ガーディアンは……」


 俯きそう述べる。この言葉の意味を、愛も理解したのだろう。鬼獣を封じる為にサポートアームズを扱う封術師と、鬼獣を倒す為にサポートアームズを扱うガーディアン。この対極の様な用途に、愛の頭にも同じ考えが浮かんだのだろう。


「そ、そんなバカな事あるわけ無いじゃない! それじゃあ、その当時、姫を狙ってたのって――」

『封術師だ』

「――ッ!」


 キルゲルの言葉に愛の表情が険しくなった。

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