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2話 転移するという事





 冷たい、苦しい。




 息が……!でき……!




 「ぶはっ!!!!」




 目が覚めるとそこは、小川の真ん中だった。冷たい水が学ランにしみてくる。あれだけ大きな地割れに飲み込まれたにもかかわらず、運良く生き残ったようだ。


「さ…寒い………いつの間に日本はこんなに寒くなったんだ?」


 母さんと妹は無事だろうか?あれだけ大きな地震の後だ、今頃テレビは地震の情報で溢れかえっているはずだ。


 周りを見渡す。背の高い水草が生えている、電信柱や雑居ビルのような高い建物が見当たらない。地震の影響で倒れてしまったのだろう。足元を見る。水がものすごく綺麗だ。夕日に照らされてオレンジ色にキラキラと輝いている。

 地震の影響で地下水のようなものが吹き出しているのかもしれない。昔、おばあちゃんの家の近くの川みたいに透明度も高く、綺麗だ。


 「とりあえず川からあがらないと…」


 川から立ち上がる。いつまでも呆けているわけにはいかない。家族の安否を確認しなければいけない。


 「…!!」


 背後にあった小さな橋の上から、見たこともないような美少女が心配そうにこちらを伺っていた。


 肩のあたりで綺麗に切りそろえられた金色の髪が風に揺れている。細い髪の毛はまるで作り物のように美しく、真っ青な瞳は宝石を連想させるほど綺麗だった。間違いなく、大和が会ってきた、いや見てきた中で1番の美少女だった。ついでにおっぱいも大きかった。


 「ーーーーーーッ!」


 「ん…何語だ?英語?」


 「ーーーーーーーァ…」


 英語と何か混じったような聞き覚えのない言語。留学生なのだろう、きている服も学生服のような服装だ。日本に来て早々、巨大地震に巻き込まれるとは不運な美少女だ。仕方がないので道案内してあげよう。下心があるわけじゃない、日本人の心はおもてなしの精神で溢れているのだ。


 「アノ、ダイジョウブ、デスカ…?」


 驚いた。


 金髪碧眼巨乳美少女が日本語を喋ったのだ。いや、当たり前か、日本に留学するくらいなら少しくらいは日本語の勉強をするだろう。


 「おう!全然大丈夫!!ちょっと体がだるいけど。」


 「ツウジタ…!?」


 「通じた??当たり前じゃん、ここは日本だぜ??」


 「ニホン!?……クロカミクロメ…アジア…キュウジンルイ……ニホン??」


 「旧人類ってのはよくわからんけど、佐倉大和、正真正銘の日本人だ。ジャパニーズサムライ!」


 金髪碧眼巨乳美少女がなにやらあたふたしている。金髪碧眼巨乳美少女と呼ぶのはかなり長いので金色おっぱいとこれからは呼ぶことにする。心の中で。


 「コチラニ…キテクダサイ。」


 「?」


金色おっぱいがジェスチャーを交えて橋の上から手招きしている。断る理由もないので橋にあがる。寒い。


 「……キュウジンルイ…スゴイ…!」


 「求人…?おいおい、俺は学生だ、別にアルバイトを探しているわけじゃあないぜ?」


 「コチラニキテ!」


 「うぉい!!」


 金色おっぱいに腕を抱えられて引っ張られる。どこかに連れて行きたいようだ。しかしそんなことはどうだってよかった、問題は金色おっぱいのおっぱいが腕におっぱいしていることだけだった。もうなにも考えられなかった。柔らかかった。妹のおっぱいを昔試しに揉んで以来、異性のおっぱいに触れたことはなかった。思春期真っ盛りの大和にとっておっぱいは抗いようもない大きな力だった。




 夕日が沈んでいく、濡れた学生服が風に揺れる。大和はおっぱいに気をとられて気づいていないが、橋を渡るとそこには、大和が求めてやまなかった。まごうことなき魔法の世界があった。







 2分ほど歩くと、木造の小さな家が見えた。とんがった屋根、乱雑に組まれた石垣、壁は粘土のようなもので固めてあった。ヤマトは物置かと思ったけれど、どうやらここがミリアという女の子の家らしい。





 大和は扉を開け部屋に入ると、大きく息を吸った。ものすごく良い匂いだった。


 「ちょっと!やめてください!!」


 「ごめん、ちょっと緊張しちゃって。」


 彼女の名前は金色おっぱいではなく、どうやらミリアというらしい。ここに来る間の道中でなにやらそんなことを言っていた。そしてこのミリアという美少女、日本語がめちゃめちゃ上手い。いや正確には上手くなった。知識として日本語を知っていたのだろう。俺の発音を聞いてそれを真似しているようだ。


 「ミリアママ、お腹すいた。なんかない?」


 「ちょっ!!!勝手に戸棚を漁らないでください!!」


 そんなことを言われても困る、朝からなにも食べていないのだ。お腹と背中がくっついても仕方がないくらいにはお腹が空いていた。もうくっついてるかもしれない。このままなにも食うなというのならもうミリアママを食べるしかない。

 洋風の戸棚を漁る。部屋の内装もなにやらファンタジーな感じだ。不思議なランプや大きな水瓶、水道も電気もガスもどうやら通ってないらしい。苦学生なのかな?


 「ちょっ!力つよっ…!やはり私の仮設通り!旧人類は新人類に比べて身体能力が高いんだわ!!すごい!!」


 「お!バターロール的なのみっけた。」


「それは私の晩御飯です。食べちゃダメです!」


「うめぇ…。」


「もう嫌!この旧人類言うこと聞いてくれない!!」


 ミリアママはせわしなく俺の学ランの裾を引っ張っている。それにしても力が弱い。新人類やら旧人類やらよくわからんことを言っているし、もしかしたら電波さん的なアレなのかもしれない。


 「足りん…。」


 「えっ…パンを三つも食べたのにまだ食べるんですか?」


 「食べ盛り成長しまくり男子が小さなバターロール三つで満足できると思ってるなら考えが甘いぜ?ミリアママ。」


 「そのミリアママっていうのやめてください。私はあなたのママじゃありません。」


 「えっ……?」


 やばい泣きそう。今日一泣きそう。地割れに巻き込まれた時よりショックがでかい。もう死のうかな。


 「ぅっ…っ……!」


 「ちょっと!泣かないでください!!うわ鼻水すごいことになってるし!!!はい!この布でふいてください!」


 「ミリアママがふいて…っっ…」


 「えぇ…自分でふいてくださいよ……。」


 「お前が泣かせたんだろうがぁぁあ!!!!責任とれやァァァ!!!!!」


 「ひぃっ!!!」


 ミリアママに鼻水をふいてもらう。女の子に泣かされるなんて何年ぶりだろうか、いやよく考えたら妹によく泣かされていた。股間にヘッドバッド、思い出すだけで涙がでてくる。


 「じゃあ私が晩御飯を作りますから、あなたはそこでじっとしててくださいね。絶対ですよ。」


 「あなた?俺には大和というかっけぇ名前がある。大和くんと、母親が子供に語りかけるように呼んでくれ。よろしく。」


 「わかりました、ヤマト。じっとしててくださいね?イタズラしちゃダメですよ?」


 イタズラしちゃダメですよなんて言われるとイタズラしたくなっちゃうのが男の子心というものなんだが、イタズラする前に母親に連絡しなければならない。もう夜も近い、地震もあった。連絡が取れないと心配しているだろう。

 防水のスマホをポケットから取り出す。国内最大級のメールアプリ、リャインを開き母親にメッセージを送信する。

 今日は卒業式の為、朝帰りになります。俺、大人になってきます。

 送信ボタンを押す。


 「……あれ?」


 送信ボタンを押しても全く送信されない。スマホの左上には圏外と表示されていた。地震の影響で、電波が届きにくくなっているのだろうか。小さな窓から外を眺める。


 「えっ……?」


 宙を漂う火の玉。見たこともない格好をした人たちがランプを中心に漂う火の玉の明かりを頼りに進んでいる。大きな水瓶に杖で魔法のようなものを唱え水を注いでいる人もいた。電信柱も雑居ビルもなにも見えない。あるのは木造建築の建物。目の前に広がるのは、小説やアニメ、ゲームで知っていた、ファンタジーの世界だった。




 「まさか…本当に異世界転移……したのか?」


 汗が吹き出る。まずい。母親は?妹は??学校の友達は??みんなどうなったんだ??俺だけ転移したのか??


 「ミリア!ここはどこだ!??今は西暦何年だ!?」


炊事場のようなところでシチューのようなものを煮込んでいるミリアに問いただす。ミリアは焦っている俺に一瞬だけ驚いたようだか、すぐに、冷静に答えた。


 「ここはアーガレス大陸グレゴリア領、西暦4708年春の月です。」




 「嘘…だろ……?」




 「あなたはおそらく、2700年前に滅んだ、旧人類。時代を超えてこの地に流れてきてしまった時駆人(タイムスリッパー)です。」






 頭が真っ白になる。






 母親の顔、妹の顔がフラッシュバックする。頬に何かが伝っている。状況が整理できない。異世界転移というよりも、タイムスリップに近い現象、なのかもしれない。


 いや、そもそもまだ転移したとは決まっていない。もしかしたら夢を見ているだけかもしれない。


 たまらず外へ駆け出す。


 「ヤマト!!!」



 火種がわからない魔法陣の様なものが刻まれている街灯。屋台で炎を操り大きな肉を焼く人、水を凍らせて氷菓の様なものを作る人。風や水を操り洗い物をする人。屋台や露店、祭りの前のような活気のある街がそこにあった。見知らぬ顔立ち、見知らぬ言語、見知らぬ服装。見たこともない魔法。





 本当に……きてしまったんだ…。





 異世界に…。



 




 「ヤマト…っ…ハァ…ハァ……足早すぎです…!」


 「なぁ、俺の家族は……友達は…もうみんな……いなくなっちまったのか……?」


 「………現状がわからない今、確定的なことは言えませんが…その可能性は、かなり高いと思われます……。」


 「………そうか…。」




 恋い焦がれていたはずの異世界に来れたはずなのに、小説の主人公のように、俺は強くないらしい。家族にもう二度と会えない。考えるだけで、胸が締め付けられるように痛かった。


 母子家庭で余裕がほとんどなかったのにパートをいくつも掛け持ちして、俺を高校に入学させてくれた母親。何一つ取り柄のない俺をずっと愛してくれた。落ち込んだ時なんだかんだで励ましてくれた妹。たくさん迷惑かけたし、かけられたけど、かけがえのない大切な家族だったんだ…。


 けれど、もう二度と、会えない。



 涙が落ちる。頬を伝って。



 暖かいものが背中にあたる。ミリアの細い腕が見えた。



 「胸…あたってるぜ?」



 精一杯の虚勢だった。



 「私が泣かせてしまったので、責任はとります。」



 「そうか……。」




 堰を切ったようように涙がでた。もう止められない。


一日三話くらい更新できたらいいなって思ってます、至らない点が多々あると思いますがどうぞよろしくお願いします。

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