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第十二章:罠師との対決

 アフォンソ達はオラクロを巡回し続けたが・・・・次第に空が明るくなってきた。


 「ちっ・・・・徹夜でゴミ溜め場を巡回するとは嫌な日だぜ」


 「あら、何時から三無騎士団のモットーに愚痴が入ったのかしら?」


 アフォンソの言葉にマグダラが小さな皮肉を込めて問いを投げるとアフォンソは肩を落とした。


 「お前の代わりに言ってやったんだぜ・・・・睡眠不足は女の肌には天敵だろ?」


 「御心遣い感謝するわ」


 マグダラはアフォンソの皮肉返しに肩を落として笑い返した。


 しかし、急に笑みを消したと思いきや額を抑えた。


 そして少し疲れた表情でアフォンソを見た。


 「・・・・テレサが起きようとしているわ。ケリをつけるなら・・・・早く、した方が良いわ」


 「分かった・・・・もう少し頑張れ」


 もう直ぐ終わるとアフォンソが言うとマグダラは「期待しているわ」と返したが・・・・やはり先ほどに比べて声に元気がなかった。


 『こんな時に・・・・・・・・!!』


 アフォンソはマグダラとテレサの2重人格が抱える問題に頭を悩ませた。


 それはマグダラとテレサの人格が入れ替わるとラミーロとの戦いで支障を来たすからに他ならない。


 マグダラならラミーロと戦う折りは大した問題にはならない。


 しかしテレサの場合はラミーロに多少なりとも慈悲の心を見せる。


 そこをアフォンソは危惧していた。


 もっともマグダラとテレサの人格はマグダラ自身が言ったように「光と影」のようなものだ。


 または「昼と夜」の関係とも言えるだろう。


 それは大体マグダラが出て来るのが夜で、テレサが昼間という単純な理由からだが・・・・・・・・


 だからこそ2人は同じ体で生きていられるとも言えた。


 昼も夜も2つで1つだからこそ成り立つ関係だ。


 テレサとマグダラも2人で1人だから成り立っている。


 もっとも今みたいな状況だと昼間だろうとマグダラが出て来たのだが・・・・・・・・


 『ここ最近・・・・テレサは眠りから目覚めるのが早くないか?』


 片方の人格が眠り、もう片方の人格が起きているのは別におかしい事柄ではないとアフォンソ個人は考えている。


 2重人格は昼と夜のように互いが交互になる事で成り立っているからだ。


 その証拠に今まで2つの人格は何事もなく上手く行っていた。


 ところが最近はテレサの起きる時間が早くなっている。


 対してマグダラも起きる時間が早くなっているなど・・・・まるで互いに攻撃し合っているようにも見えるが・・・・・・・・


 「・・・・大丈夫よ、ミ・ビータ」


 マグダラの掠れた声にアフォンソは視線を向けた。


 アフォンソの視線を見てマグダラはやや青ざめた表情でいながら笑った。


 「ミ・ビータ・・・・安心して。私はテレサの人格を”滅失”しようとは思ってないわ」


 ただテレサの方が戸惑いと「焼きもち」から動いているに過ぎないとマグダラは語った。


 「フッ・・・・やはり女泣かせだな」


 ヤンがここぞとばかりにアフォンソを皮肉ったがアフォンソは無言となるしかなかった。


 それは今まで子供みたいな態度をテレサに対し通してきたから如何に態度を改めるか考えたからである。


 とはいえ・・・・・・・・


 「この非常時に考える問題ではないぞ」


 神妙な表情を浮かべ続けるアフォンソにヤンは突っ込んだがアフォンソはこう返した。


 「俺にとっては大事だ」


 「フッ・・・・如何にもだな。しかし・・・・その考えは嫌いではない」


 アフォンソの返答にヤンは口端を上げて笑いつつ「もう直ぐ」と答えた。


 「あぁ・・・・ここでケリをつけてやるさ」


 アフォンソはヤンの言葉に頷き・・・・愛剣の柄を握り直した。 

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 アフォンソ達がオラクロの終着点に辿り着いた時・・・・まだ夜は明けていなかった。


 しかし、間もなく夜が明けようしているのは暗い空に僅かだが顔を出した日の出が教えている。


 「ちっ・・・・よりにもよって野郎と日の出を拝むとは運が無いぜ」


 アフォンソは腕を組んで自分達を待ち構えていた罠師一味に悪態を吐いた。


 「死ねば2度と拝む事は無いぜ?三無騎士」


罠師ことラミーロは「待っていた」とばかりにアフォンソを残忍な笑みで見ながら返した。


 「生憎だな?これから旗持ちと”婚前旅行”に行くんだ。悪いが・・・・お前が死んでくれよ」


 「御断りだ。そして婚前旅行なんて・・・・俺は許さねぇ」


 ラミーロはマグダラを見ようとしたが、それをヤンが前に出て隠すと殺気立った眼でヤンを見た。


 「ケッ・・・・血に飢えた狂犬野郎が」


 「俺が狂犬なら貴様は卑しい野犬だ」


 ヤンの言葉にラミーロは殺気立った眼でヤンを睨んだが直ぐ勝ち誇った笑みを浮かべる。


 「ちっ・・・・俺のいけない所だ。直ぐにカッとなりやがる」


 ラミーロの自嘲にアフォンソとヤンは無言となり、白十字騎士団とシュガール騎士団は前後左右を警戒した。


 対してラミーロの部下達は勝ち誇った笑みを浮かべていたが・・・・徐に左右に分かれて一人の人物を前に出した。

 

 その人物は全身をローブで覆い全貌を隠しているが魔術師には分かるのだろう。


 『総長・・・・こいつ・・・・・・・・』


 「へへへへへ・・・・流石は魔術師。察しが良くて助かるぜ」


 ラミーロはケタケタと笑いながらアフォンソに残酷な笑みを見せた。


 「三無騎士。てめぇ、俺と結ばれた赤い糸を引き千切ると言ったが・・・・そいつは俺もだ」


 ここで・・・・てめぇとの赤い糸を引き千切ってやるとラミーロは断言した。


 「さぁ大家。あの目障りな奴等を焼き殺せ。ただし、旗持ちだけは傷一つ付けるな」


 俺等の大事な旗持ちになるとラミーロは言うが、それを聞いてアフォンソは口端を上げて嘲笑した。


 「お前等の旗持ち?残念だな・・・・俺等の旗持ちは俺等限定なんだよ。てめぇ等、あの腐れ罠師を叩き潰して船出するぞ!!」


 アフォンソが愛剣を掲げると白十字騎士団は「おぉ!!」と大声で答えた。


 「皆の者、あの卑しい野良犬の群れを始末して鴉の餌にするぞ!!」


 ヤンも続いて大声で叫ぶと部下達も呼応した。


 そして・・・・それを合図としたのか・・・・魔術師の大家が両手を掲げた。


 詠唱も無し魔術師の大家は両手から巨大な火の玉を連続で打ち出した。


 その火の玉はアフォンソとヤン達目掛けて周囲の物を焼き尽しながら突っ込んできたが・・・・それを魔術師達は数名ほど前に出るや水を掛ける事で消火しようと試みる。


 しかし火の玉は消えるどころか水を忽ち蒸発させた。


 「てめぇ等、散れ!!」


 アフォンソが叫ぶより早く一斉に皆は左右へと散った。


 火の玉はアフォンソ達が居た場所を完全に焼き尽し、その背後にあった建物にぶつかると瞬く間に紅蓮の炎で包み込んだ。


 「おいおい、避けるなよ。仮にも教皇を守護する騎士団が聖地を破壊して良いのか?」


 ラミーロが勝ち誇った笑みを浮かべながら汗を流しているアフォンソに皮肉を込めて尋ねた。


 「無法地帯で何が聖地だ。大体てめぇみたいな陰険な罠師を私兵に抱える時点で名ばかりの教皇だぜ」


 「へんっ。口は減らねぇな?まぁ良い・・・・タップリ時間を掛けて殺してやるよ」


 ラミーロはアフォンソの態度に苛立ちを隠さなかったが直ぐ蛇のような笑みを浮かべると魔術師の大家に命令した。


 「大家。こいつ等を徹底的に痛め付けてやれ」


 その言葉に大家は右手に炎、左手に風を宿らせて弄ばせると一歩、前に踏み出した。


 それを見てアフォンソ達は一歩、後ろへと下がった。


 しかし・・・・アフォンソには秘策でもあるのか?


 口端を僅かに上げてみせた。


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