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第十一章:命が欲しいなら

 「お前等が幾ら貰ったか知らねぇが・・・・命が欲しいなら消えろ!!」


 俺達が戦う相手は教皇一派だとアフォンソは言いながら周囲を警戒した。


 そして魔術師に眼で命じて敵の位置を確認させた。


 『四方に散らばっていますが、ある程度は纏まり始めています』


 魔術師の返答にアフォンソは更に追い打ちを掛けるように叫んだ。


 「てめえ等が死んでも神様は救いの手aを差し伸ばしたりしねぇ!ただ上から見下ろすだけだ!!」


 神に救いを求めるな!


 自分を救えるのは自分だけだとアフォンソは叫んだ。


 「それでも二束三文のはした金で死にたいなら掛かって来い。俺が神様のお膝元に送ってやるよ!!」


 殺気を放つアフォンソの言葉に刺客達の足が浮き足立った。


 そして魔術師が手を振り翳して詠唱する姿を見せると・・・・蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。


 「・・・・どれくらいに減った?」


 アフォンソは逃げ去った、にわか刺客達に見向きもせず魔術師に尋ねた。


 「にわか刺客達は殆ど逃げました。ただ、正真正銘の刺客達は・・・・ゲス野郎の私兵団と一緒に残っています」


 最後の教会に居ると魔術師が言うとヤンは嘲笑を浮かべた。


 「罠師の割には勇気があるな。とはいえ・・・・それこそ奴の仕掛けた罠かも知れんな」


 「自分を餌にしているからな。しかし・・・・その糞不味い餌を食ってやるよ」


 アフォンソは大刀で肩を叩くと自分付きの従者が連れて来た愛馬に跨がった。


 「これより夜間の巡回を行う。怪しい奴等は片っ端から斬り伏せろ」


 こんなゴミ溜めに何時までも居たら臭くなるとアフォンソは言いながら愛馬の腹を蹴った。


 愛馬は小さく鳴くと早歩きで進み、それに他の者達も続いた。


 「夜間の巡回なんて・・・・ついてないわね」


 アフォンソの隣に馬に乗ったマグダラが近付くと大きく嘆息した。


 「あぁ・・・・泣きたくなるぜ。何の因果で野郎に会うために夜を偲んで行かなきゃならねぇんだよ」


 「悲観的に考えるなんて貴方らしくないわね?愚痴も多いし年を取ったんじゃない?」


 マグダラはここぞとばかりにアフォンソを茶化し、ヤンも同調してアフォンソを老けたと揶揄した。


 「残念だな?俺は“キラキラ王国”から来た王子なんでな。日を跨ぐ度に若返るんだよ」


 「あら、羨ましい国から来たのね。なら・・・・貴方が赤ちゃんになる前に巡回を終えましょう」


 船で日光浴しながら眠りたいとマグダラは言い、アフォンソは口端を上げて笑ってみせた。


 「あぁ、そうだな。俺も早いところ船の上で日光浴したいぜ」


 「お前の場合はテレサの日光浴姿を眺めて酒を飲むの間違いだろ?」


 やる事が親父臭いとヤンは言い、それに皆は爆笑した。


 しかし・・・・敵の気配を感じると臨戦態勢を取り現れた敵を・・・・血の海に沈めた。


 そして燃え盛る朽ちた教会を背にしてオラクロの巡回を再開した。

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 オラクロを一気に巡回しようとばかりにアフォンソ達は馬を駆った。


 夜という事もあり周囲は静かだった。


 しかし気配を殺してアフォンソ達が近付いて来るのを待つ者達は居る。


 そして・・・・直ぐ会う機会は訪れた。


 アフォンソ達が角を曲がろうとした際に何かが上空に飛び上がった。


 上空に飛び上がった人物は黒いローブを開けさせた。


 両手に持ったのはショートソードとダガーで、それをアフォンソに振り下ろした。


 「悪いが男はお呼びじゃねぇんだよ!!」


 アフォンソは襲い掛かってきた白刃を黒作大刀で裁くと刺客の眼に平突きを放った。


 平突きは刺客の眼球を数㎝貫いて、刺客はビクリと体を震わせる。


 それを確認したアフォンソは大刀を刺客の眼から引き抜いた。


 刺客の眼球から赤い鮮血が飛び散り、体は力なく地面に吸い寄せられ・・・・アフォンソ達の愛馬に踏み砕かれた。


 馬達に踏み砕かれた刺客だった死体は無惨な姿で地面に転がった。


 しかしアフォンソ達は見向きもせず前進し、次々と襲い掛かる刺客達を尽く倒していく。


 それはアフォンソが前しか見ていないからとも見えた。


 部下の何人かが手傷を負っても進む辺りがそれを証明している。


 ひたすら前へ進むのみ・・・・・・・・!!


 ただ、アフォンソ達の行く手を遮るように巨大な壁が立ちはだかった。


 その壁は鋼鉄製で厚さは2メートルを優に越えている代物で、地面から出て来たようだ。


 それは無惨にも左右に別れた建屋の残骸が証明している。


 恐らくラミーロが用意した魔術師がやったのだろうとアフォンソは察した。


 かなり大掛かりなものだから魔術師の実力が垣間見えたがアフォンソは鼻で笑った。


 「ケッ!こんな壁で俺達を止めようってか?舐められたもんだな」


 そうだろ、ヤンとアフォンソは問い掛けた。


 「笑止千万だな・・・・皆の者!壁を打ち破れ!!」


 ヤンの言葉にシュガール騎士団は戦斧等を掲げると立ちはだかった壁に向かって突っ込んだ。


 シュガール騎士団が壁に迫ると壁は自ら体を前へ傾けた。


 アフォンソ達を押し潰そうとしているが・・・・壁は無惨にも砕け散った。


 鋼鉄製の壁を粉々に粉砕するなんて凡そ人力では有り得ないと常人なら考えるだろう。


 しかし、それをシュガール騎士団は真っ向から否定してみせた。


 そして粉々に砕け散った破片を魔術師達は綺麗に溶かした。


 「こんな小細工しか考え付かないから女にモテないんだぜ?ラミーロ」


 アフォンソは何処かで見ているだろうラミーロに皮肉を言いながら肩を回すヤンに言葉を掛けた。


 「相変わらず派手な突破だな。清々しい気分になるぜ」


 「俺からの選別と思って受け取れ」


 「有り難く受け取るぜ。そのお返しって訳じゃないが・・・・俺の方はあいつにプレゼントを送った」


 ヤンはアフォンソの言葉を聞いてクスリと笑った。


 「男にプレゼントを送るのはお前の主義ではないだろ」


 「まぁな。だが今回は例外だ」

  

 「しかし・・・・果たして奴は受け取るかな?」


 「なぁに・・・・嫌がっても押し付けてやるさ」


 拒否権は無いと断言するアフォンソにヤンは如何にもお前らしいとアフォンソを見ながら笑った。


 「あらあら、運命の赤い糸で結ばれているからなの?」


 あれだけ嫌がっていた相手にプレゼントなんてとマグダラが更にアフォンソを皮肉る台詞を発した。


 些か遅い点は否めないがアフォンソには関係ないのだろう。


 口端を上げて笑ってみせた。


 「さっきは否定したが・・・・どうやら俺と奴は本当に赤い糸で結ばれているらしい」


 ただし、とアフォンソは区切ってマグダラに顔を近付けた。


 「俺は奴と今夜を最後に縁を切る」


 「あら・・・・それだと貴方の方は手ぶらになっちゃうわね?」


 マグダラはアフォンソの顔が更に近付いてくるのを面白がるように見ながら眼を細めた。


 しかし途中で気が変わったのか・・・・アフォンソと擦れ違うように顔をずらした。


 そしてアフォンソの耳元に顔を近付け・・・・こう言った。


 「ラミーロと縁を切って手ぶらになるなら・・・・その糸に私を結んでも良いかしら?」


 「あぁ、大歓迎さ。しかし・・・・条件付きだろ?」


 「あら酷い言い草ね。“お願い”と言い直してよ」


 「こいつは失礼。なら聞かせてくれよ。どんな願いなんだ?」


 アフォンソはマグダラの訂正に苦笑しながら改めて問い直した。


 「今までの中で一番難しい内容だけど・・・・私とテレサの・・・・2人のお願いよ」


 だから叶えてねと妖艶な声でマグダラはアフォンソの耳元に願いを囁いた。


 それを聞いたアフォンソは苦笑したが・・・・首を縦に振りマグダラの頬に軽いキスをした。


 この非常時にと常人なら思うだろう。


 しかし・・・・それこそアフォンソは狙っていた。


 些か安っぽい「罠」ではあるが・・・・・・・・ 

 

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