表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/44

夏の終焉(7)

「なんだか、シオンがいれば何でも乗り越えられる気がしてきたよ。」

「自分で乗り越えなくていいときだって、あるんだよ。その時は、僕らを頼って。」

「本当?じゃあ全部交代してもらおうかなあ…」

「う。…僕はルチアほど頭がよくないから代わりにはならないと思うけど…」

「ふふ、冗談。だけどシオンだって十分頭いいじゃない。普通、中学生には物理化学なんて分からないよ。」

「前に言ったけど、それ以外はからっきし。僕は好きなこと以外興味ないから。」

「右に同じ。」

「特に興味ないのは?」

『…社会科。』


二人の声がぴったり合わさると、僕らは互いに目を細めて小さく笑いあった。その時間は僕にとって、あるいは一番幸せな時間だったかもしれない。ルチアの本当の気持ちをずっと知りたかった。本当に断片的だけど、それを打ち明けてくれたのが何より嬉しくて。僕は何だか使命感にうたれたのだった。何があってもルチアを傷つけたりさせない。


その時、


僕は進行方向に振り返り、ルチアが顔を上げた。遠くから何か聞こえてくる。洞窟内を反響して微かに聞こえてきた、マルコーの声だ。言葉ははっきり聞き取れないが、僕たちを呼んでいるようだ。僕らは一瞬見合わせてから、駆け出した。過去にルチア一人で歩けていた道だ、さほど進みにくいということはない。走り続けると程なくして遠かったマルコーの声が近付いてくる。


「おーい何やってんだ!早く来いよ!」


僕らは緩やかな坂を降りていき、暗闇の奥深くへ誘われていったのだった。真っ直ぐ行くとカンテラの薄い明かりが向こう側に見えて、それを頼りにいくと、今までとおった道よりはるかに開けた空間に出た。その端の方でマルコーが明かりの中心に立っていて、僕らは息を切らしながら駆けよった。


「やーっと来た。…なあ、ルチア。ルチアがいつも来てたとこって、ここか?」

「…うん。そうだよ。これ以上は進めなかったと思う。」


ピチャリ


近くで聞こえた水音に僕は反応する。思わずカンテラをそちらに向けると、息をのむーー何故なら僕らの目の前に広がっていたからだ。


「これは…地底湖?」

「みたいだな。俺も初めて見た。」


僕のつぶやきにマルコーが頷いた。暗闇で分かりにくいが、照らしてみると確かに、僕らの前には広々とした水面が、空間一杯に静かに横たわっていた。


「…ここ、何もなかった筈なのに…いつの間にーー」


ルチアは湖のたもとに立って目を伏せる。その隣に、僕らもしゃがみこんだ。


「へーそうなのか?きっと潮の満ち引きなんだろうな。確かこの草原の裏は海だっただろ?きっと引いたときに水が取り残されるんだよ。俺達よく分かんなかったけど…随分下まで降りてきちまったんだなあ。」

「?」


ふと、僕はルチアの視線が気になった。どうしてだろう。普通に水面を見ているだけの筈なのに、なんとなく、マルコーとは違うところを見ているような感じがする。それから僕らは少し何も言わずに湖面を見ていたが、ルチアが何時までたっても微動だにせず一点を見つめているので、やっぱり気になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ