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願い(3)

こういうことになると、マルコーは決まって、


「いいぜ!」


と言うに決まっていた。今回もまさにそうだった。その威勢のいい声には、一欠片の躊躇もない。昔から悪戯は専売特許だ。嫌いな教師に馬鹿みたいな罠を仕掛けたり、立ち入り禁止の場所に秘密基地作るとか、過去に実際目の前で見てきたから分かっている。僕は苦笑というか、じとっとしてその様子を見守った。


「マルコー、うまくいくかな?」

「俺らに任せとけって。大丈夫大丈夫、仮にばれたとしても俺達2人で怒られればいいんだからな!あとは俺が言ってやるよ。勉強もそうだけど、外の世界や友達付き合いも意外と大事だってな。」


マルコーはルチアに軽くウィンクして見せる。…僕の肩をしっかりと組んでいるのが見逃せない。こうやって人を巻き込んでいくのが、いつものやり口だ。


「…シオン、大丈夫?青筋がたってる。」

「大丈夫。こういうことは慣れてるよ。」

「そうと決まれば作戦会議だな!」

「ルチアはもう帰った方がいいだろ、あとは明日までに、俺達で考えておくから。」

「そっか、…明日ね。時間って早いな、今日も終わっちゃうんだ。」

「そうだぜ。過去は取り戻せない!今楽しめることはとことん楽しむ!それが俺のやり方だぜ。だから大船にのったつもりで任せておけよ。」

「…ふふ、ありがとう。じゃあ、楽しみにしてる。」


そう、今日もまた一日が終わる。僕らの夏休みは、こうして三人でに過ごしているうちに、あっという間に過ぎていく。明日はどんな一日になるだろう、そんな期待に胸を膨らませながらも、僕らは終わりを告げる今日への別れを惜しんだ。やがてルチアが見えなくなって、僕らは作戦会議しながら帰った。そこで真剣に協議した結果、


「…原始的だね。」


というのがルチアの感想だった。真っ昼間のなか、マルコーはこれが確実だ!と胸を張っている。脇で、僕は何とも言えずに重りをくくりつけたロープを持っていたのだった。


「な、ルチアの部屋って二階とかだろ?」

「うん、家の裏の角のところ。よく分かったね。」

「…気付かれずに外に出るならなるべくドアを通らない方がいい。なら自分の部屋の窓から出入りするのが安全だろう。」

「それ窓に投げるの?外さないようにしなきゃね。それと多分、夜は入口の門もしまると思うけど…大丈夫かな?」

「俺の投球センスをあまくみんじゃねーぞ!これでも名ピッチャーなんだぜ!」



ーー毎月訪れるその夜は、いつもこうだ。明かりと言う明かりがない。家の明かりも電灯も勿論灯っていなかった。真っ暗闇のはずだが、明かりがなくても僕らは互いの事がはっきりと見える。


「シオン、今何時?」

「…今12時過ぎた。」


何故なら月と星の光であたりが真っ昼間のような明るさに包まれているからだ。過去にここから見るだけでも凄いと思ったものだが、街中の狭い路地から見上げるのも飽きてきている所だった。フルクシオ家の入口付近、家の陰になった所で、僕らはほくそ笑んでいた。見れば入口はこれまで開いているところしか見たことがなかったが、高い柵で閉ざされているのが分かる。


「シオン……周りに人、いないよな。」

「………。気配はないな。」

「よし、なら…行くぞ!」


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