仮想/現実② カースト上位
仮想/現実②
「カースト上位」
私は、この学校でカースト上位にいる。私の友達はみんなカースト上位。みんな私たちの顔色を見るし、私たちの言うことを一言も聞き逃すまいと必死になってついてこようとする同級生もいる。小さな世界の話だけど、小さな世界でも、トップはトップ。
そんな私を妬んだカースト下位のモブが、私を階段の上から突き落とした。私の体は、一瞬ふわっと宙に浮いて、そして丸太のように転がっていった。痛みなんて、不思議となかった。ただ、死にたくない、と思った。
死にたくない死にたくない、と思っていたら、遠くの方で、七色のまばゆい光と派手な音楽が流れてきた。私は光の方に吸い寄せられた。
「星5、きたーっ。」
と、歓喜の声が聞こえた。私は光る玉座を与えられ、たくさんの供物を捧げられた。嫌な気分はしなかった。身体の内側から、説明できないような力が湧き出でてくる、そんな感じだった。
それから、異形の敵と戦うことが日課となった。私は強かったから、一撃で相手を倒すことができる。相手の攻撃は、私を守る兵装が防いでくれる。私は無敵だ。しかし、そんな毎日は長くは続かなかった。敵はどんどん強くなり、防ぎきれなくなってしまったのだ。初めて敵の攻撃が当たった時は、焼けつくような痛みで、気を失いそうになった。肌を切り裂かれるような痛み、骨を砕かれるような痛み、様々な痛みが私に降りかかった。しかし、私の戦いは終わらなかった。どんなに激しい痛みでも、一瞬で治ってしまうのだ。そして、また戦いの場に引きずり出される。戦う、傷つく、治す、戦う、傷つく、治すの繰り返しは、いつまでたっても終わらなかった。もう嫌だ、もう嫌だ、とどんなに叫んでもそのループから抜け出すことはできなかった。そんなある日、あの歓喜の声の持ち主が「売却」と言った途端、私の身体は滑り台を一気に滑るように下に下にへと落ちていった。
気が付くと病院のベッドの上だった。そして、体中に包帯を巻かれた私がそこにいた。私の横には、母がいた。
「ああ、気が付いたのね。良かったわ。大けがだけど、大丈夫、元に戻る、歩けるようになるわ。ただ・・・」
母が暗い顔をした。何か言いたそうな、でも言えないようなそんな雰囲気。私は声を振り絞って聞いた。
「何なの。言ってよ、何なの。」
「顔の傷が、残るかもしれないって。顔をひどく打ち付けて、治るには時間と奇跡が・・・」
私はカースト下位になるのだ。私の戦いは終わらないのだ。小さな世界の話だけど、小さな世界でも、戦いは戦いなのだ。




