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嫁(カッパ)シリーズ

嫁(カッパ)に弱点があった件

作者: まるだまる

今回は短めです。

あとがきにて、ナツメちゃんの3サイズと体重発表。

 自称嫁の河童一族の少女ナツメには一つ弱点がある。

 

 まあ、実際はもっとあるのだろうけれど、致命的な弱点だと士郎は思っている。

 士郎が一緒に生活していて気が付いたのである。


 ナツメの弱点――――甲羅の状態でひっくり返ると自力解除ができなくなる。

 

 通常の甲羅展開であれば、ただ甲羅がそこにあるだけで、通行の邪魔になってもたいした害はない。

 部屋にオブジェのように甲羅が置かれているときは、大抵ナツメが何かドジを踏んだときだ。

 踏んでも乗ってもびくともしない。移動させようにも重すぎるため基本放置である。


 天上家の人間は家の中に甲羅が置いてあることに慣れてしまっていた。

 台所の上の戸棚から物を取るためにナツメが甲羅展開し、母の千里が脚立の代わりに甲羅の上に乗って物を取り出している姿を士郎は何度か見たことがある。

 リビングでナツメが甲羅状態で昼寝していて、あとから来た士郎がクッションを挟んで甲羅を背もたれにしたこともある。ちょっと便利な時もある甲羅だった。


 通常の甲羅展開はナツメが解除すれば甲羅を消すことができるのが分かっているからだ。


 ただし、そんな甲羅もひっくり返っているときは別物に変わる。

 何故か、ナツメがパニックを起こすのだ。

 ひっくり返った状態を元に戻そうとするのだけれど、中から伸ばした手も足も床に届かず、もがくことしかできないのである。自力で元に戻せないことへの恐怖からかパニックを起こす。

 

 ナツメが甲羅状態でひっくり返った場合、士郎たちが元に戻すのだが、それは至難の業だった。

 まず一人ではどうにもならない。絶対的に力が足りない。

 

 士郎の父がいると手早く返せるのだが、釣りバカの父はすぐに釣りに出かけて不在がち。

 そうなると、母の千里と士郎の二人で頑張るしかないのである。


 また、母が問題なのである。


 初めてナツメが甲羅状態でひっくり返ったとき、


「あははははははは! 甲羅がひっくり返ってる。ちょっと士郎、ナツメちゃん自分で元に戻せないんだって! あははははははははは。やばい。超うける」


 ひっくり返ってもがく甲羅状態のナツメを見て大笑いしたのである。 


 そのうえ―― 


「士郎、いいこと考えた!」


 千里はそういうとつかつかと甲羅に近寄り、甲羅の端を掴みぐんっと独楽みたいに回したのである。


『はにゃあああああああ! 目が回るー』


 悲鳴を上げながらぐるぐる回るナツメ入りの甲羅を見て、


「あはははははははははははは! やばい。ガメラよ! 士郎、家の中にガメラがいる。あはははははははははは!」


 床をバンバンと叩きながら笑い転げる千里に士郎の視線は冷たかった。

 ナツメに一生物のトラウマを植え付けそうな千里の行動だった。

 

 千里が回転させた甲羅を止めるのにも苦労した。

 まず、遠心力のせいか甲羅に攻撃力が付加されていた。

 士郎が近づいて止めようとしたら、甲羅に身体が当たった途端、ふっ飛ばされたのである。 


 息子が宙を舞うのを見て笑い転げていた千里も身の危険を感じて笑うのを止めた。

 千里は未だに回転の止まらない甲羅をみたまま、背後に飛んだ士郎に声をかける。


「士郎、生きてる?」


「痛いけど生きてる」


「クッションで身体を保護しなさい。ナツメちゃんを止めるわよ」


「誰のせいでこうなったのかな?」


 やればなんとかなるものである。

 回転する甲羅に果敢にアタックを繰り返し、千里と士郎は勝利した。

 

 甲羅を止めたあと、二人で力を合わせて甲羅をひっくり返す。

 甲羅を叩いて中のナツメを確認。


「ナツメ! 大丈夫か? 生きてるか?」


 甲羅が消え、青白い顔をしたナツメが姿を見せる。


『はにゃ~、目が回るですー』


 まだナツメの目はぐるぐると回っていた。

 弱点が分かったところで対策というものが何もない。


 防衛反応で甲羅展開する場合もあり、甲羅の向きは姿勢によって左右されるという。

 甲羅展開する際に背中から落ちさえしなければいいらしいのだ。


 面倒なので二度と起きないようにと、士郎は心から祈るのだった。


 ☆

 

「きゃあっ!?」


 ドア越しにナツメの悲鳴と共に大きな音がした。

 部屋にいた士郎はナツメの悲鳴を聞いて部屋から飛び出す。


 ナツメの姿はなく、士郎が階段を見てみると衣類が散乱していた。

 階段下からゴロゴロゴロと何かが転がっているような音も聞こえてくる。


 士郎が階段を下りてみると、通路の真ん中で裏返った甲羅がゆらゆらぐるぐると、バランスを失った独楽こまみたいに回っていた。


 士郎の祈りは神に通じなかった。


 回り続ける甲羅を見て、気合を入れなおす士郎だった。

 ナツメが来てから何度繰り返したことだろう。


『助けてー』


 甲羅の中からくぐもったナツメの声が聞こえた。

 ナツメの助けを求める声に応じて、士郎は甲羅の回転を止めようと甲羅に体当たりする。


 だが、質量を伴った硬質の甲羅は、遠心力による攻撃性を身に着けていた。

しがみつこうとした士郎はあっさりと甲羅に弾き飛ばされる。 


「いってー。おいナツメ、大丈夫か!?」


『はにゃ~。気持ちわるい~。目が回るー』


 士郎は何度もトライして甲羅の回転を止めることに成功した。


「ナツメ、大丈夫か?」


『……士郎様……やばいです……落ちてからぐるぐる回っていたので……もう……吐きそう』 


「中で吐くなよ!? ちょっと、母さんこっちきて! ナツメがまたひっくり返った!」

 

 ナツメは三半規管も、胃も弱い子でした。 


体長1メートル60センチ。最大幅80センチ。最大高さ80センチ。

体重150+αキログラム。


甲羅状態のナツメちゃんですが、何か問題でも?


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