9話 地面に引きずり込まれてる真っ最中とか、魔王城が突如召喚されてたりとか
「で、やっぱり行くんだな」
放課後、俺、春香、宗吾の3人で公園に向かって歩いていた。といっても俺と春香にとっては橋の時とは違って正規の帰路だから別に構わないんだけど。
公園に到着すると他の生徒達の姿も見えた。今回は朝方という事で目撃者も多く2回目という事もあって野次馬の数も前より多い気がする。
公園はというと、いつもと変わらない姿でそこに何事も無かったかのように存在していた。
「ちぇ、戻ったって聞いてたけど、やっぱり何もないか。つまんないの」
宗吾は文句を言いながら公園の中に駆けていく。俺と春香も歩いて公園に入る。
「久しぶりだな。公園に入るの」
「えー、入ったばっかじゃん。ほら、小学生たちがさ」
「あぁ、そういやそんなこともあったな。まぁあんとき入ったのはお前だけだけどな」
「まぁそっか。いつも横を通ってるけどなかなか入る事ないよねー。なんか懐かしいなぁ、昔はよく遊びに来てたのに」
そう言いながら春香は思い出を馳せるように周囲を眺めている。
「あーあ、なんもおもろいもんねぇな~」
一通り公園を見て回ってきた宗吾が戻ってきた。
「もっとこう、公園に踏み入った人達が地面に引きずり込まれてる真っ最中とか、魔王城が突如召喚されてたりとか」
こいつはなに言ってんだ?前々から夢見がちな奴だとは思っていたがここまで沸いてるとは……ぉ、三下だ。あいつもまた来てんのか。ああ見えてやっぱりオカルト好きなのか?
三下もこちらに気づいたようだ。相変わらず鋭い目つきだ。
「あっ!おーい、みっしーー!!」
「みっしー?げっ!三下じゃん」
春香が手を振って三下を呼ぶ。こちらにゆっくりと歩いてくる三下に宗吾は緊張を走らせていた。
「みっしーも野次馬?」
「まぁな」
「なにか見つかった?」
「いや、なにも」
淡々と静かに応答する三下。
今朝の一件があったとはいえ、俺と三下がお近づきになったということは全くない。顔見知りになった、ただそれだけなだけで別に会話する仲になったわけでは無い。
このメンバーで三下と会話できるのは春香だけだ。
宗吾はというと輪から抜け出すこともできず、かといって混ざることもできず、学校で一番の不良だと噂の男の横に冷や汗を流しながらただ立っているしかない状況だ。
「マジで!今?」
野次馬のひとりの通話する声が耳に入った。
「おい、今消えてるってよ。行ってみようぜ」
走り出す人たちを目で追う。
「ほほぅ、これは行くしかないでしょう」
宗吾は嬉しそうな顔を見せる。だが俺はそれとは対照的に興味なさそうな顔をして溜め息ひとつつく。
「俺パス、帰るわ」
「えーー、なんだよ釣れねぇなぁ。春香はー?」
「私もそろそろ帰って夕飯の支度しないと」
「ちぇ、なんだよみんなして…」
と、順番的に三下と目が合う。
「ぁ・・・ぇっと、じゃあ俺ひとりでいくわ!じゃあまた明日な~!」
流石に三下と二人で行くのは遠慮願った宗吾はその場から逃げるように立ち去った。
三下も歩いてその場を後にしようとする。
「それじゃあね、三下君。また明日」
「あぁ」
一言だけ残して三下は公園から出て行った。
あいつはこれから次の現場に行くのだろうか。それだけちょっと気になった。
「それじゃあ帰ろっか」
「あぁ、うん」
僕らも二人でいつもの帰路についた。日が落ちてきて少し暗くなった道を2人で歩く。
「なぁ春香」
「ん?なに?」
「おまえ、三下と仲いいのか?」
「う~ん、そうだねぇ。まぁまぁかな」
「ふーん、そうなのか」
「なに~?気になるの~?」
「はぁ?!別に気になったりしてねーよ!」
「どしたの?急に怒っちゃって」
「バカ、なんでもねぇよ」
「ふ~ん…まぁ別にいいけどね。んじゃまた明日、ちゃんと時間通りにね」
「ぉ、おう」
走り去る彼女の後姿に手を振りながら返事を返した。まぁいつものことながら当然俺は5分遅れるんだろうけどな。