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13話 まぁあなたは代理なんですけどね

「ここは、夢じゃ……ないんですね」


 今この現状を確認するように、ライターに問うた。

 とても信じられないことだけれど、ここが自分の元いた世界ではないことは感じていた。そしてそれが夢や幻でないことも。

 今は受け入れるしかないと、そしてひとまず今起こっていることを知りたいと思った。


「えぇ、残念ながら夢じゃありません。むしろここは真実の世界。あなた達の世界を創る者たちの存在する真理の場所」


「しんりの…ばしょ」

「えぇ。私はライター、記す者。そして彼女は運命」

「フェイトだよ、よろしくね」


 空中に寝そべるように浮いた、桃色の髪の少女が笑って手を振った。


「そして先ほどの男はイレイザー、消しさる者。まぁ彼と私らでは少々違うんのですが、まぁそれは今はいいでしょう。そしてあなたは真理世界と創造世界、あぁ創造世界というのはあなたが本来過ごしていた世界の事です。そのふたつの世界のキーになる存在、主人公」


「主人公?僕が」

「えぇそうです」


 先程の会話にも主役という単語が出ていて、自分の事を言われているのではとは薄々感じていた。


「まぁあなたは代理なんですけどね」

「え?」


 なにかショッキングな事をさらっと言われた気がした。

 正直よく理解はできてなかったけどなんか持ち上げられてから突き落とされたような気分になって思わず聞き返してしまった。


「えっと、代理って、なんですか?」

「もともと今の世界の主人公はあなたの彼女、春香さんだったんです」

「春香?」

「春香さんの記憶はお持ちですか」

「そりゃまぁ…いや…ちょっと待ってください、あれ……えっと、聞きたいんですけど、春香って僕の彼女って事になってるんですか?」

「春香の世界ではそういうことになってるみたいですが」

「えと、そうなんですか」


 うん……彼女がどうとかいう話が耳に入るたびに気にはなってたんだよね。なんだか春香が俺の彼女であるようなていで皆が話していたことが。

 たしかによく一緒にいるし、毎日一緒に登校しているし、なんなら周囲に誤解を生んでいる事も自覚しているが、実はお付き合いなどしてないし、そういう関係だったことも一度もない。

 だけどここで彼女の話題が出たのもちょうどいいタイミングだし、俺は自分が抱えている疑問をぶつけてみることにした。


「あの、いいですか?」

「はい」

「実は、うまく言葉にできないんですけど。女の記憶が曖昧というか合致しないというか、こっちに来てから思い出した記憶とここに来る前まで一緒にいた彼女とが一致しないんです。なんていうか、なんか違うっていうか、時々別人みたいに感じてたっていうか…なんて言ったらいいんだろう」


 俺はずっと胸に秘めていた違和感を吐き出した。はっきりとはわからないけどモヤモヤとつきまとい続ける違和感。その中心は春香だと、ぼんやりと感じていた。


「彼女に…ですか。記憶の混乱等からもたらされるものということはないのですか?一度ここに訪れたあなたを無理やりあちら側に帰してしまいましたから、なにか後遺症が残ったのかも」

「ちょ、そんなことあるんですか?!」

「いえ、ありませんけど」

「怖いこと言わないでください!」


 この人、冗談なんて言う人だったのか。

 ここまでの会話でなんとなく、この人が嘘くさい人だということを感じ取っていた。作り笑顔で当たり障りなく誰でも同じように笑顔で大人に、自分を見せずに接する人なんだろうなと。それが俺のライターへの率直な印象だ。


「確かに最近、自分自身の調子がおかしかったのはあるけど。それでも最近の春香は……特にここに来る前の春香は絶対におかしかった」

「他になにか気づいた点、違和感を感じたり記憶と食い違ったりという点はありませんでしたか?」

「あったような…なかったような…、よくわかりません」

「そうですか…」

「あの、結局なにがどうなってるんですか?今いるこの場所が夢じゃないとしてなにが起きてるんですか?」

「そうですね、ちょっと待ってください」


 ライターはあごに手を添え、少し考え込む素振りを見せて、そして顔を上げてフェイトの方をちらりと見る。


「いいんじゃない?どうせもうあたし達だけじゃどうにもならないだろうし」


 ライターの視線に気付いたフェイトが察したように言葉を返した。


「そうですね。それでは先程決めた通りで。彼への説明もお願いします」

「え?あたしが?」

「えぇ、私はまだやらなければならないことがあるので。任せましたよ」

「いや、そういうのはあんたのが得意でしょ。あたしやーよ。ちょっと!」


 少女の呼びかけを無視してライターも部屋の暗がりへと消えていった。

 なにか方針が決まったようだけど、相変わらず俺には何の説明もない。


「もうっ!みんな勝手なんだから!説明しろったって、あたしそういうの苦手なのよ。……まったく」


 この子、フェイトっていったっけ。ここであった3人の中では一番幼く見えるから頼りなく感じてしまう。まぁ怒鳴り散らしてばかりで態度の悪い白髪の、イレイザーだっけ?あれは絶対にごめんだけれど。俺としてはできれば一番話の通じそうなライターさんから話を聞きたかった。


「しょうがないから私が説明するわ!こういうの苦手だからうまく伝わらなかったらごめんね!」


 フェイトさん、なんか半ギレだし。


「まぁ簡単に言うと、主人公がこっちにいると困るから創造世界に戻して世界を正常な状態にしたいんだけどイレギュラーが発生してるからまずそれをなんとかしなきゃいけないって状況なの」


「………ん?」


 説明終わり?えらくざっくりと伝えられたように思えるうえによく理解できなかった。もう一度、細かくそしてゆっくりとリピート願いたい。

 表情から、俺がまったく理解できてないことを察してくれたのか。フェイトはもう一度説明を始める。


「だーかーらー!えーーっとー…とにかく!私たちはあなたをこの世界の主役にしようと思います!正式な!」


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