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子は親を見て

作者: 山田結貴

「こら! お食事中に、テレビばかり見るのはお行儀が悪いわよ!」

 和やかな一家団欒の時間に、雷がぴしゃりと落ちる。息子の行儀の悪さを見かねた女が、耳をつんざくような怒号を上げたのである。

 しかし、それを浴びせられた息子はというと、素直に従う素振りを見せず不服そうに口を尖らせる。

「そんなあ。パパだって、ご飯食べないでずーっとしゃべってるお姉さんばっかり見てるよ? そんなに言うなら、パパのことも怒ってよ」

(子供って、よく親のことを見てるよなあ……)

 男は決まりの悪そうに、リモコンに手を伸ばしてテレビの電源を渋々切った。


「こら! 指をしゃぶっちゃ駄目だってあれだけ言ってるのに、どうしてやめないの!」

 和やかな一家団欒の時間に、またも雷が落ちる。息子の癖を見かねた女が、ヒステリック気味に怒鳴り散らしたのである。

 しかし、それを浴びせられた息子はというと、素直に従う素振りを見せず不服そうに口を尖らせる。

「そんなあ。パパだって、怖い顔して爪を噛んでることがあるよ? そんなに言うなら、パパのことも怒ってよ」

(子供って、よく親のことを見てるよなあ……)

 男は妻からの鋭い視線から目をそむけ、おずおずと背中を丸めた。


「こら! どうしてお友達のことを突き飛ばしたりなんてしたの。お友達が怪我でもしたらどうするつもりなの!」

 居間に流れる重々しい空気を裂いたのは女の一喝。それはこれまでの説教とは一線を画し、並々ならぬ怒りが随所ににじみ出たものであった。

 しかし、それを浴びせられた息子はというと、反省する素振りを見せず不服そうに口を尖らせる。

「そんなあ。パパだって、会社の人の背中を押して階段から落っことしてたよ? そんなに言うなら、パパのことも怒ってよ」

 妻からの驚愕の眼差しに、男は不気味な笑みを顔に貼りつけながら無言で問いに答える。

(本当、子供って親のことをよく見てるよなあ…………)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毒が効いててニヤリとしましたが、最後はもう少し直球が欲しかったですね。 奥さんの命乞い・・・違うな・・・子供を連れて・・・一目散に逃げる。私もピンと来るものが無いですね。失礼。 [気にな…
[良い点] 最後のゾッと感がいいですね。 最後だけ、お父さんが笑顔なのがまた。 [一言] お父さん、ダメダメ、そんなことしちゃ。>_< もう一度読み返すと、二番目の爪を噛むという行為は、お父さんがか…
[良い点] 「ぴしゃり」だとか「息子とはいうと(繰り返しあり)」など、いいリズムを作っているものだから安心してよめました。よかったですよ。 [気になる点] 最後の、なぜに息子がパパが会社の人の背中を押…
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