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処刑から始まる神殺しの起源  作者: イズシロ
第3章 「断面の再構築」
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拠点となるアジト

「それにしてもひでぇことしやがる」

「てっとり早いだろ、そっちのほうが」

「エンピリアツリーの群れに放ったらあの程度の奴らじゃ誰も抜けられやしねぇ」

「だからいいんだろ。処理が楽だ」



 こんな事後報告を交わすのはシオンとオウレンだけであり、現在以前使っていたと言うシオンの書斎にいる。

 ひどいと言っているオウレンも結局は楽しんで訊いている。 



 ここにはかなりの本があった。それこそ様々な種類の本……世界地図や歴史、はたまた魔法や魔法具に関する物。能力アビリティについての入門書的なものまで至れり尽くせりだ。

 少々散らかっているがそれについて眼を瞑ってしまうほどには得られるものが多い。



 こうして話していてもシオンは積み上げた本を読み漁っている。

 ユイネは、というと隣の部屋でぐっすり眠っていた。さすがに限界だったのだろう。ベッドに寝かし、布団を被せる頃には可愛らしい寝息を立てていた。



 もちろん賊が隠れている可能性もあったが、そこはシオンとオウレンで隈なく捜索済みだ。

 オウレンは祝杯のつもりなのか、片手に持ってきた酒瓶を握っていた。

 もちろんシオンは美酒に浸るつもりはない。



「まだ、やることが多い」

「わったよ。俺一人で楽しむさ」



 そう言って直接口を付けてぐびぐびと喉を潤す。ワザとらしく「かはぁ~」という息にシオンは横目で睨んだ。

 


「飲みたきゃいいな」

「やることがあると言っただろ」



 まずは、このアジトの逃走経路を確保しなければならない。オウレンが知っている以前の隠し通路は崩落させられて使い物にならなかった。

 できれば二つは抜け道が欲しいところだ。



 それと同時にシオンはこの世界についての知識を蓄える時間も必要だろう。

 住む分にはいろいろと蓄えられているようだった。食糧も然り明りも十分だ。賊が使っていたベッドで寝たくなければ街に出て買ってくればいい。

 リスクは覚悟の上だろうが。



 その分の金は賊だけあり残ったままだ。



「これからどうするよ」



 オウレンは酒に頬を赤らめながらシオンの背後に回り窓の端に寄りかかりながら神妙な顔で問う。



 この問いに対してシオンは一端本を閉じて考えた。まず、何を優先させるべきかを。

 信用できる人手も欲しいところだし、できれば戦力を整えたい。



 有象無象が増えても使えないのであれば意味がない。だから、オウレン並みの強さを持った同志は必要だ。

 最高の形で復讐と達成させるためにはシオン一人では難しい。法国の最高神官長という者もできれば殺しておきたい。



 きっと神とやらは腸が煮えくり返るだろうか、そう考えただけでシオンの身体は疼きだす。



(焦ってはダメだ。最高神官長の周りには使徒がいるんだったか)



 どれほど強いのかもわからない間は下手を打つことはできない。

 神の僕とも取れる神官どもに殺されるのでは腹に据えかねる。できるだけ多く殺しやりたい。

 ならば、今は情報をかき集めることが最重要課題だろう。



「せっかくだし【ヘルズファイン】を見つけたらどうだ?」

「そんなあるかもわからん物に時間を割きたくはないな」

「ありゃ、俺のと同じで星器だぞ」

「…………!!」



 今し方聞かされたオウレンの魔法具が星器ということにも驚いたが、以前のシオンが隠したとされる魔法具がまさか星器だとは。



「あいつらが見つけられなかった物が3人で見つかると思うか?」

「どうだろうな」

「時間の無駄だ。そういうのは忘れたころに見つかると相場が決まっている」

「言われてみれば、そういうもんか」



 オウレンとしてはここに来る目的の一つを進言するのは自然の流れだった。



「じゃ、能力アビリティでも調べて見るか?」

「そう言えばそうだったな」

「忘れてたのか」

「まさかだ」



 猜疑心に満ちた瞳で少し赤くなった眼を向ける。

 オウレンは見越したようにほらよっと懐から掌に納まるぐらいの水晶を取り出した。



 どこに隠してやがった、という言葉は呑み込んで話を先に進める。



「どうすればいいんだ酔っ払い」

「ふん、この程度じゃ酔えねぇよ。そこに手を翳せばいい、右でも左でもどっちでもいいぞ」

「お、おう」



 少し緊張するのはオウレンのように能力アビリティは戦闘に役立つかということだ。これでしょうもないような能力アビリティならば落胆するだろう。

 経験や職業――所謂【タスク】と呼ばれるようなものに影響を受けると言われている。

 例えばオウレンのように前線で戦ってきたような人物には相手を殺す為の殺傷性に富んだ能力アビリティが得られやすい。

 逆に後方支援をしていればそれを補完するような能力アビリティが得られる。戦闘経験がなければ戦闘に役立たない能力アビリティと言った具合に多くは経験によって得られる。

 無論、その場合は後天的取得ということになるが、能力アビリティの中には先天的、生まれつき保有しているものもある。



 その者の性質と言えば正確だろうか。本質に近いと言われている。



 丁度読んでいた【能力アビリティ】に関する本の内容を脳内で反芻した。たった数行しか読んでいなかったはずだが……という疑問はこれから調べるだろう能力アビリティに占有されている。



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