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殺人鬼の弟子_《Who Kills Whom》  作者: K糸
彼らの生きる非日常 《Start Of Days 》
6/23

01-Fin 聞けなかった感想_物語は続く、結果はない

会話文しかないような気がする。


ともあれ殺人鬼の弟子、第一章、完です。

朝 7時


「で、その人は来るの」

「来る。来なかったらこっちから出向く」


 篠崎灯吏、穂坂倭、マスター。その三人は今日の深夜、通り魔・藤間明彦とうまあきひこを殺し、その後すぐに事後処理を済ませ、そのままカフェへ戻ってきた。戻る途中にある人物に連絡を入れるようにヒキニート野郎ことハッカーに頼み、その人物が来るのを待っている。それが三人の今の状況だった。ちなみに、灯吏は学校をサボる、もしくは遅刻する気でいる。それでいいのか高校生。


カランカラン


 ドアベルが軽やかな音を響かせる。入ってきた人物をを三人は見つめた。マスターがその人物を迎え入れた。


「こちらです。どうぞ」

「ああ、ありがとう」


 その人は灯吏たちを見渡した。どう話を切り出そうか迷っている風にも見える。灯吏たちは何も言わずに目の前の人物の言葉を待っていた。


「……正直なところ、なにから話すべきなのかを迷いますね。全て話すと決めていたんですが」

「全部だ。全部話してくれ。俺たちの知っていること、知らないこと全て話せ。でないと、俺たちはアンタをどうするべきなのか判断できない」

「そうですね。では話します。簡単に言うと復讐です」

「復讐、ね。普通と言えば普通な理由だね。でも誰の復讐なんだい?」

「二人目の通り魔の被害者ですよ。彼女は私の恋人だった」


 その言葉に倭は眉をひそめる。それに気づいていないのだろう。倭に構わず話を続けた。


「彼女から電話がありました。『男に追われている。殺される。助けて』そんな電話でした。私は間に合いませんでした。彼女をあの男に殺させてしまった。それだけじゃない、私はあの男がまだその場で笑っているというのに何も出来なかった」


 苦しそうに、悔しそうにそう言葉を続ける。


「アンタ、この手の荒事に不馴れだろう?藤間明彦とうまあきひこに気づかれなかったのか?」

「ええ、気づくわけないですよ、倭さん。彼のはそういう異能力チカラですから」

「……ちょっと待て、だと?」

「倭さんにマスター、彼はどういう人に見えます?」

「話したはずだ、俺を襲った眼鏡の女だろ」

「えっ、4()0()()()()()()()()()()()()じゃないのかい?」

「俺には3()0()()()()()()()に見えます」

「……そうです。相手に対して自身の姿を他の物や人物に認識させる、それが私の異能力チカラと呼ばれるものです。私はこれがあったから、奴から気づかれなかった。

 今この異能力を使っていたのはあなた方に私の異能力がどういったものなのか頂くためです。もし、お気に障ったのなら謝ります。ですが、今は私の話を聞いてください」

「……分かった。悪かったな話の腰をおって」


 少し逸れた話を戻し、続きを彼に促す。彼は一つ頷き、異能力チカラを解き本来の姿をさらした。

 彼の本来の姿は、くたびれた印象の60代ほどの初老の男だった。彼は瞑想するように目を閉じ、数秒後を目を開け続きを語る。


「顔はあの時、彼女が奴に殺されたときに見ていましたから奴を探し当てることにはさほど苦労はしませんでした。私は奴を、藤間を殺そうと思いました。

 でも、出来なかった。奴を殺そうとするたびに手が震えて止まらなくなるんです。何度してもダメだった。ナイフを持っている手が奴の背中の一歩手前で止まるんです。そして、奴にばれました。私が自分を殺そうとしていることに。でも、奴は笑うだけでした。『お前なんかに私が殺せるわけがない』そんな笑いでした」


 よほど悔しかったのだろう。途中から泣きながら話していた。


「その後、私は考えました。奴に復讐をする方法を」

「それが俺たちってことですか」

「はい、あなた方には本当に申し訳ないことをした」

「どこからが、アンタの思惑通りだったんだ?」

「穂坂さん、貴方あなたと篠坂君が知り合ったところからです。正確に言うと貴方あなたにあの男を使って依頼させるところからですよ」

「やっぱりそこからか。タイミング良すぎだもんな」

「はは、やはりバレていましたか。私は私の臆病のせいで奴を殺せなかった。だから、人を使って殺そうと思ったのです。しかし、普通の殺し屋や暗殺者に任せる訳にはいけない。殺されて奴を喜ばせるのがオチだ。だから、死なないと言われている殺され屋・穂坂倭さん、藤間明彦を殺しきれるだけの実力がある殺人鬼の篠崎灯吏君、あなた方を使おうと思ったのです」

「……どうして、俺が殺人鬼だって知っているんだ?」


 灯吏は疑問そうにたずねた。自身が殺人鬼であると知っているのはごく一部の知り合いしかいない。なのに何故彼がそんなことを知っているのか?


「……篠崎君、彼女は元気だったよ」

「へぇ、アンタ会ったのか?あの人に」

「ああ。あと伝言だ。『藤間明彦は個人的に許せない。それと、今のお前の実力を知りたいから彼に手を貸すP.S.私に会いたくなったら自力で探して会いに来い』だそうだ」

「あの人がこの件に一枚噛んでるのかよ……」

「なぁ、まさか俺に依頼してきた奴を殺そうとしていたのって……」

「はい、殺人鬼(彼女)です。それから私は篠崎君を巻き込むための準備をしました。一つ目で引っ掛かるとは思ってませんでしたが」

「……白木の姉貴の友人はアンタの能力の作り物か」

「彼女は実在する人物ですよ。少し彼女の姿を借りただけです」

「……えっ、ちょっと待って。つまり僕らみんな殺人鬼(彼女)の手のひらで踊らされていたってこと?」

「笑うしかないな。俺の仕事も、灯吏の戦いも、マスターやニートの協力も、アンタの復讐も、殺人鬼(彼女)の思い描いた予定調和よていちょうわだってんだからな。てか、アンタは最初からそれに気付いてて協力をあおいだんだろ。アンタがある意味で一番タチが悪い」

「ええ、貴方の言うとおりだ。私は彼女に利用されることを承知で協力してもらった。藤間明彦を殺せるならどうでもいい、昨日までの私はそう考えていました」

「昨日まで、ね。まるで今は違うと言いたげだな」

「いえ、今でもですよ。今でも奴を殺せた以上はもはや全てがどうでもいい。ですが、このままでは、このまま罪を償わなければ彼女に合わせる顔がない。

 だから、私はあなた方に全てを任せます。私をどう殺しても構いません。好きにしてください」


 そう言って彼は再び目を閉じた。いつでも殺しに来いと言わんばかりに。

 なんというか、ありきたりな人だ。復讐で人を殺した。しかし、その罪の重さに耐えられなかった。だから、殺されることを望んだ。簡単に言ってしまえばそんなところ。


「アンタ、人を殺したことはあるか?」

「灯吏?」

「いや、ないが……でも、いきなり何故そんことを?」

「藤間明彦を殺したのは俺の意思だし、倭さんやマスターは自分達の仕事をやり抜いたけだ。たとえそれが、先生の思い通りに事が運んだとしてもな。だから、アンタを殺す理由が俺たちには無いんだよ」

「なら、私はどうすればいいんだ」

「俺が知るかよ。自分で生きて見つければいいだろ、そんなもん。とりあえず現状に不満があるなら死ぬな。生きて、自分にとっての答えを出せ」

「……まさか、17年しか生きてない少年に説教されるとは思わなかった。

 ああ、そうだね。もう少し生きてみようと思う。死ぬことはその後にじっくり考えるとするよ」


 灯吏はそうか、とだけ言ってバックを手に取った。もう学校に行く気なのだろう。


「はい、これはお土産です。新しく作ったブレンドなんですよ。感想を聞かせて下さい」

「ええ、分かりました。では、みなさん」

「そういえば、アンタの名前は」

「次に会ったときに名乗りますよ。この店に客として来たときに」


 そう言って、彼は帰った。


 そして、灯吏たちは彼に二度と会うことはなかった。


 工藤昭治くどうしょうじ。それが彼の名前だった。彼の名前は新聞の記事に書かれて知った。殺人事件の被害者として。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「で、お前はどうすんだ?」


 穂坂倭はそう篠崎灯吏に尋ねた。


「依頼料ですか?それなら一つ提案があります」

「なんだよ提案って」

「倭さん。俺があなたを殺します。あなたを不死の呪いから解放してみせます。今はきっとあなたを殺せない。でもいつか必ずあなたを殺す。それまではあなたの仕事の手伝いをします」

「なるほどな。そう来たか。確かに俺は死ぬんだったら、彼女に殺されたい。でも、お前でも構わない。昨日そう思ってな、ああ、了解した。その約束が今回の依頼料でいい。ただし、次からは依頼料をちゃんと払えよ」

「ええ、分かっています。マスター、俺をここでバイトとして雇ってください」

「……そうだね、うんいいよ。灯吏君、結構女性受けしそうだし」


 ありがとうございます、と軽く微笑みながら礼を言う。なるほど女性受けしそうだ、そんな感想をマスターは持った。


「しかし、どうしてこんな依頼料の払い方が金じゃないんだよ?金には困ってないんだろ。5000万ぐらい、お前なら、まぁ、一括は無理でも小分けで出せそうな気がするが」

「確かにそれぐらいなら出せます。でも、殺人鬼(先生)に会うには倭さん達と一緒に巻き込まれること、そう考えたんですよ」


 それじゃいってきます、そう言って灯吏はカフェをあとにした。倭とマスターはその背を見送った。


 この時、灯吏は確信していた。先日の黒服どもは倭が雇ったわけではない。彼はそんな事を一言も言わなかった。そして、あの黒服どもは恐らく死んでいる。あの少女によって殺されている。ようやく気付いた。あの少女と戦いづらかった理由が。


「あの人、どうなるんだろ」


-多分死ぬな。でも、できるなら生きて欲しい-


 そんな熱のない思考を巡らせながら、学校へ急いだ。遅刻は多分しないだろう。

 ちなみに、10分ほど遅刻して丘城や白木に笑われた。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


その日の夜


「ふーん、やっぱり使えないな、あなた」

「……彼を、篠崎君を殺す気なんだろう?そんな事させやしないよ。お嬢さん」


 こんな戦い意味がない。彼ならこの少女を倒すぐらいなんともないはずだ。しかし、この少女を彼に会わせてはならない、彼の回りの人間が死んでしまう。


「う~ん、もういいや。死んでください」

「ッ!!?なっ!」


グサッ


「あっけないもんですね。復讐者さんも」


-次は貴方ですよ。篠崎灯吏さん-


 復讐者・工藤昭治は生きる決意を固めたその日に殺された。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 翌日の新聞を軽く目を通し、安らかに眠れ(レストインピース)とだけ呟いた二人がいた。殺人鬼の弟子と殺人鬼は同じような感情を彼に向けていた。殺人鬼の弟子はどうでもよさげに、殺人鬼は悲しそうに笑いながら。


「感想を聞きたかったんだけどな」

うまいよマスター。きっと奴もそんな感想持つはずだ」

「そうとも限らない。だってあの人コーヒー飲んでないみたいだし」


 ある場所に目を向け灯吏は言った。そこにはマスターが昨日渡したブレンドしたコーヒー豆があった。工藤昭治が生きていても感想は聞けなかったようだ。

 灯吏の頭には昨日のような熱のない思考が広がっていた。


殺人鬼の弟子 彼らの生きる非日常《Start Of Days》 Fin

駄作者「没設定と初期設定etc.を四人で語ります」


・主役は倭


駄作者「これは結構、変えるのに苦労した設定」

灯吏「というか、何でそのまま倭さんを主役にしなかったんだ」

駄作者「倭さんが主役だとミステリーになるんです。そして、ミステリーだったらかなり初期で詰むから灯吏にした」

マスター「なるほどね」

倭「そんな理由で主役を下ろされたのか……」


・灯吏は倭の助手で高校生ではない


駄作者「ついでに言うと、性別も違ってた」

灯吏「マジで!?」

駄作者「篠宮灯理しのみやとうりこれが灯吏君の初期です」

マスター「どうして変えたの?パッと見必要なさそうだけど」

駄作者「そこら辺は次回の設定のところで詳しく書きますが、一言で言うなら、男の方が色々と都合が良かったんです」

倭「意味深だな。で、高校生にした理由は?」

駄作者「気分」

倭「殺すぞ」


・灯吏の武器は刀


倭「これも気分か?」

駄作者「これは、灯吏になって変更しました」

灯吏「何で」

駄作者「殺人鬼と言えば鋏でしょ!」

倭・灯吏・マスター「「「やっぱり気分か!!!」」」




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