01-2 殺害受任職_殺され屋
一人焼き肉なう←どうでいい
2話です、どうぞ
《追記》
一人朝マックなう←だから、どうでもいい
「眠い」
ある意味仕方ないとはいえ眠い、眠すぎる。かれこれ4日ほど寝ていない。いや不眠生活1日目はゲームに費やしていたため自業自得と言われればそれまでなのだが、後の3日が色々とあったのだ。
「………あの人どうなったんだ?」
3日前に出会った死体男。俺は彼を殺した。生理的に気持ち悪く、あんな奴がいてはならない、そう判断してほぼ衝動的に殺ってしまった。しかし、
「やっぱり死んでねぇよな。いや死んでたら色々と説明がつかないことがあるが」
殺しはしたが恐らくは死んでいない。多分生きている。第一、死んで生きているなら殺して死ぬことはないだろう。あの人はそういう人だ。
「おはよう、灯吏、杏奈ちゃん」
「篠崎先輩、丘城先輩、おはようございます」
「……」
それに、一昨日現場を見に行ったらいかにもその手のプロと言わんばかりの黒服共に襲われた(ちなみに殺さずにすぐ逃げた)。
「あの、篠崎先輩聞いてますか?」
「……」
一昨日の連中も十中八九あの男の差し金だろう。あの手の連中に狙われる理由など両の指で数える程度しか覚えがない。しかもそれら全部を潰したから完全に狙われる理由が本来ならないはずなのだ。
「灯吏、挨拶ぐらいしてよ」
「……」
昨日のことは会長が関係してるから、死体男とは関わりがないはず。関わりがあったらあったで別にそれでも構わない。やることは変わらないのだから。
そんな事を考えていると、180は越えている体格をもつ、まるで格闘技のプロみたいな奴、というかクラスメイトが話しかけてきた。
「篠崎、女子から挨拶されてるんだぞ。無視はひどいだろう」
「ん、ああ。よぉ太郎ちゃん」
「だから太郎ちゃんはやめろ!」
「てか、杏ちゃんに丘城はいつからいたんだ?」
「気付いてなかったんですか……」
「マジないわ、あんた」
「俺は無視か!?」
クラスメイト達と後輩がいた。まずいな、いくら真剣に考えていたとはいえ、こいつらに気づけないとは
「って、白木は?」
「シロは委員会だ」
「はん、あいつも大変だな」
まあ、今は考えるのを止めよう。どうせ眠い頭じゃ何も考えがまとまらない。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「そういえば、3日前の夜に通り魔があったらしいね」
「……へぇ、そうなのか」
昼飯を食べながら学年一のイケメンと言われてる友人の白木(本名:白木卓人)は俺と太郎ちゃん(本名:石田剛太郎)に話題を振ってきた。それにしてもその通り魔に俺が関係しているかもしれないと言えば二人はどんな反応を示すんだろうか、そんなことを考えながら通り魔について知らないふりをする俺。事件になってなかったはずなのに何故こいつは知っているんだ、そう思いながら。
「通り魔ねぇ。物騒だなおい」
「確かその通り魔ってあの噂の通り魔だよね」
「あの噂?すまないシロその噂ってなんだ?」
「知らないの?結構有名だよ」
俺と太郎ちゃんは首を縦に振る。俺の場合は知らないふりだが、太郎ちゃんは本当に知らないみたいだった。多分その噂は
「その通り魔、死体が無いらしいよ」
「……」
予想通りだった。
「死体が無い?」
「だから言っただろう、通り魔があったらしいって」
「……つまり都市伝説とかその手の話だろ。死体の無い通り魔。なるほどオカルトマニアとかが食いつきそうな噂だ。しかし、白木。お前はこういう話題はあまり好きじゃなかったんじゃないのか?新しい趣味か?」
「そういうわけでもないよ。ただ、姉さんの友達がね……」
「その友達さんがどうしたんだ?」
「シロじゃなくて裕子さんの友達が興味あるのか?」
そう俺たちが尋ねると白木は少し言いにくそうに顔を歪め、溜息をつきながら言った。
「姉さんの友達が見たらしい。通り魔の被害者を」
「被害者がいなかったのにどうやって見るんだよ?」
「死んでいない、それだけだろ。被害にはあったが殺されてはない、そういうことじゃないのか」
「さぁ、ホントにどういうことなんだろうね?」
こっちが聞きたいよ、そう言って白木は黙った。俺としてはこの話題を早く終わらせたかったので良かったといえば良かったのだが。
(やっぱ首突っ込んだ方がいいよな。関わらなかったら向こうからちょっかいかけてきそうだし)
そんな事を考えながら昼飯を食べていた。自分で作って言うのもなんだが旨いな俺。とても4日も寝ていない奴が作った料理とは思えないぞ俺。
……軽く現実から逃げていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
放課後(一時限目から六時限目まで昼食を除いてフルで寝ていた)俺は、また知らない女子から告白されてうんざりしている白木と柔道部の部活に行った剛太郎を置いて俺は帰ろうとしていた。その時
「灯吏、今から暇?」
「暇だけど、どしたの丘城?」
丘城(本名:丘城香澄)は話しかけてきた。
「暇だったら少し付き合って欲しいんだけど」
ふむ、多分買い物の荷物持ちだろ。こいつは両親が共働きだったから親の代わりに弟と妹を世話を見ている。そして俺に頼むのはこいつの弟妹に俺が気に入られているからだろう。
「ああ、分かった。先に校門で待っててくれ」
「ありがとう。助かるわ」
そう言って丘城は出ていった。
体力的には問題ない。あれだけ寝てたからか体も朝よりかは軽い。だが丘城の買い物に付き合う前に
「会長に話聞くか」
あの人はこっち側にもある程度繋がりがある人だ。何か知っているかもしれない。
死なない男と死体の無い通り魔。死なない男の正体はだいたい察しがついたというか思い出したが、通り魔は俺なのか?何故白木の姉の友達は口封じされていないのか?そもそもそんな目撃者はいるのかどうか?そんな事に考えを巡らせながら生徒会室に入った
「よぉ会長、篠崎だ。入るぞ」
「あら、灯吏君ごきげんよう」
語尾にハートマークでも付きそうなテンションで会長(本名:如月環)は俺に挨拶してきた。とりあえず笑って無視だ。
「少し聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「私の挨拶を無視した癖に聞きたいことだけ聞くのね。灯吏君がそんな子だなんて私知らなかったわ」
「……」
平常運転で面倒だな、この人。とりあえず無視だ。とにかく無視だ。
「死体の無い通り魔について教えてくれ、どうせ調べているんだろ?」
「はいはい、教えますよーっと」
やや拗ねているようにも見える会長は、一拍間を置き
「犯人は死体を消滅させているわ」
そんな物騒なことを口にした。しかも凄い良い笑顔で。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「灯吏?」
「あっ、悪い少し考え事してた」
丘城の買い物に付き合いながら俺は会長に言われたことを整理していた。死体、いや恐らくは物体を消滅させる奴がいる。これは確かな情報だ。つまり俺も首を突っ込むのなら本気で犯人を殺りに行かなければならない。
確かに俺好みの状況になっている。だが丘城のような一般人と一緒にいるときにそんな事を考えてはそいつに対して失礼だろう。丘城は気が利く奴だから尚更だ。
「ここでいいよ。灯吏なんかキツそうだし」
「そうか?家まで持ってくけど」
「いいよ。なんかいつも頼んでるみたいで悪いし」
気を使わせてしまったのか、丘城はそう言って俺から荷物を受けとると「バイバイ」と言って家に向かった。
丘城を見送ると俺はある場所に(さっき会長に教えてもらった)連絡をいれ、そこへ向かった。本格的な殺し会いは久々だな、と他人事のように考えながらその場まで歩き、目的地つまりカフェに入りカウンターに座っている男性に声を掛ける。
「二度目まして、穂坂倭さん」
「正確には三度目だろ、篠崎灯吏」
彼に声をかけた。
殺害受任職 殺され屋、穂坂倭。四日前俺が殺した人だ。いや、正確には殺し損ねた人だ。そして、先生も殺し損ねた男だ。だから彼は三度目という言葉を選んだ。
「まあ、座れよ。奢ってやるから。マスター、コーヒー二つ」
「ええ、ならお言葉に甘えますよ。マスター、あとチョコレートケーキを」
「かしこまりました」
この店のマスターは品の良い笑顔を見せ、コーヒーを淹れ始めた。コーヒーとケーキが来るまでお互いに口を開かなかった。
「どうぞ、僕の自慢のケーキとコーヒーです」
「ありがとう、マスター」
「じゃ、本題に移ろうか?篠崎灯吏」
「そうですね」
このカフェは彼の根城だと聞いた、ならここに来れば会えると思っていた。現に俺は今、彼と話せている。
「お前の噂は、ああ否、お前の噂であろうことは聞いてるよ。殺人鬼の弟子」
「さすがに知っていますか。なら」
「俺じゃないしお前でもない」
「……」
「通り魔の被害者と犯人のことだ。お前が俺を殺したのは多分、通り魔事件とやらにカウントされていない。だから死体を消滅させる狂った趣味の変態野郎はいる。ちなみに分かっているだけで被害者は六人だ」
どうして俺の周りには人の話を途中で遮る奴が多いんだ?人の話を聞けないのか?
「そんな顔をするなよ。甘いものでも食べて機嫌なおせ。それで通り魔の犯人はどうするんだ」
「……その前に何故六人も行方不明になっているのに警察が動いてないんですか?」
「その六人が直接的な関わりがないから全員ただの失踪扱いになっている。六人とも年齢、職業バラバラだ。で、お前は通り魔をどうするんだ?というか通り魔をどうしたいんだ?」
「通り魔は止めますよ、確実にね」
そう宣言するように倭さんに言い切りケーキを口に運んだ。ケーキは、後味のいい程よい甘さだった。コーヒーともよく合う。
そんな感想をマスターに伝え、俺は倭さんにここに来た本来の用件を、彼に仕事の依頼を申し込んだ。
「だから通り魔の件はあなたに依頼します」
「というと」
「次の被害者はあなたになってもらいたい。そう言ったんですよ。殺され屋さん」
「お前、犯人殺す気だろ」
「ええ、もちろん」
「……いいね、流石は彼女に直々に育てられただけのことはあるな。実に洒落になら無い殺気だ。だがいいだろう。ああ、了解した。その依頼引き受けてやる。趣味の悪い通り魔のエサになってやろうじゃないか」
「よろしく頼みますよ。倭さん」
「明日、もう一度ここに来い。詳しい依頼と依頼料の話をしなきゃならない」
分かりました、そう言って俺はその場を去った。ようやく状況が動き出したな、そう思いながら
「そういえば、あの黒服共」
あいつらは倭さんの差し金だろうが何故、俺を襲わせたのか。そこら辺もちゃんと聞かなければならないな。
だが、まぁとりあえず今日はもう寝よう。そろそろベッドで寝なきゃ明日まで持ちそうにない。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「彼はどうだい、倭君」
「17であれは異常以外の他の何者でもないな。一体どんな鍛えられ方をしたんだ。という訳で、マスターあいつについて少し調べてくれ。知っていても損はないはずだ」
「はい、もう調べているよ」
「流石はマスター。仕事が速いな。助かるよ」
「調べたのは僕じゃないけどね」
「だったらあの野郎か」
倭はコーヒーを飲みながら渡された資料に目を通していた。
「生まれは普通だな。身辺関係も……へぇ、従姉がモデルやってるのか」
「で、どう」
「どうもこうもない。両親は存命、兄弟も姉妹もいない。ごくごく普通だ。事件に巻き込まれたこと以外は一般人らしい一般人みたいな生まれと育ちだ」
「じゃあ、君が今言った事件ってやつに巻き込まれて彼は今のようになった、というわけなのか」
「そう。この事件、って事件って言う言い方も不適切なんだがとりあえずこの事で、殺人鬼とあいつは知り合った。そして鍛えられた。しかもこの件、事後処理が完璧過ぎて事件になっていない始末だ」
「ああ、だから僕がその資料を見てもピンとこなかったのか」
「そうだ。公には公表されてないからな。事件になっていないから普通は知らない。両親だってせいぜいちょっとした家出程度にしか思わなかったみたいだしな」
空になったコーヒーカップをテーブルに置き、一息つく。今度は紅茶をもらいその香りを楽しむと
「マスター。マスターから見てあいつはどうだ?」
「……そうだね、なんというか掴みどころがない、というか掴ませてくれない、そんな印象だね。いや、そういう印象を持たれるようにしているのかな。それが僕の見解だよ」
「……そうか、マスターはそんな風に思うのか」
「?倭君は違うのかい?」
「ノーコメントだ。それは教えたら面白くないだろ」
「ふふ、そうかい」
-さて、お前はどう出る殺人鬼の弟子-
紅茶を楽しみながら帰っていた少年に思いを馳せていた。
「楽しくなってきたな」
「そうだね、でもこれからが本番でしょ?」
当たり前だ、そうマスターに返して再び資料に目を落とした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
同時刻
女は逃げていた。迫り来る狂気に追いつかれないようにただ走り続けていた。
だが、その逃走には意味がなかった。目の前の木や、ゴミ箱が一瞬もしない内に消滅したのだ。
「!!?ッーーー」
女の顔が驚愕と恐怖に染まる。
この時彼女は少しでも背後に注意を向けるべきだった。
「フフフ、アハハハハハハ!アハハハハハハハハハ!!」
その瞬間、彼女の人生は終わりを迎えた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
目の前の女を消滅させ、私は笑った。楽しい、たのしい、タノシイ。今回の殺しも楽しかった。
嗚呼、次は誰を狙おうか。どんな奴を殺そうか。誰だっていい、この異能力には誰も敵わないのだから。
「フフフ」
闇夜の中、死体を消滅させる通り魔は笑っていた。
灯吏君は本来こんなローテンションじゃありません。睡魔でテンションが上がってないだけです。
本来なら脳内の回線が五、六本ぶっ壊れている人です。あっ、人じゃなくて殺人鬼か
《追記》
文頭にスペース入れました
文章を加筆しました