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殺人鬼の弟子_《Who Kills Whom》  作者: K糸
夢の中で見る夢を 《Breaking Dead Night》
17/23

03-2 悪夢を往く_ホラー『は』きっと怖くない

すんません!!本当にすんません!!送れてすいません!!

短編で出した「ゲオルギウス=ラウザード」に時間をかけてこれを全く執筆していませんでした。いや、本当に申し訳ないです。

あと、ゲオルギウスも気が向いたら見てください。未来の灯吏君も出ます


それでは本編をどうぞ!

「ハアッ!」


 灯吏は自分を喰らおうとすると化け物を振り向き様に手刀で切り裂いた。その後ろからもう三体同じ化け物達が来る。


-ドンッ!


 灯吏は疾りながら通り過ぎ先頭の一体を掌底で壁に叩きつけるように押し飛ばす。

 二体目が腕を前に突きだし爪を弾丸の如く発射。十の爪が飛来する。


「クソ……」


 素手でアレを捌いたら腕の肉が無くなる。ならば、


-キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンッ!


 灯吏は腕時計で全て弾いた。まさか弾かれるとは思っていなかったのか棒立ちになっていた。


「ノロマがッ!」


 蹴撃しゅうげきで腹部を境目に真っ二つにする。

 勢いそのままに後ろを振り向く。そこには先程飛ばした一人目の化け物がいた。殴り付ける。顔を潰し、更に底へもう一度掌底を入れる。これでもう動かないだろう。

 三体目は一体目に止めさそうとしている中、爪を飛ばす。十程度では当たらない。更に爪が伸び、再び飛ばす。しかし、当たらない。爪の弾丸は灯吏を捉えることは出来ない。爪ではダメだと判断したのか直接襲って来る。だが、それは一番愚かな決断だ。


安らかに眠れ(レスト・イン・ピース)


 バツの字を刻むように腕を振るい、化け物の背後へと駆ける。血が噴水のように溢れ三体目も倒れた。

 パチパチと乾いた音が響く。


「動けないと思ったが拍手は出来るんだな」

「拍手ぐらい動けなくても出来るよ」


 緋室はふらつきながらも自分で立ち上がる。灯吏は支えようとしたが小春は首を小さく振り手助けを拒んだ。


「見た目ほどは酷くないから大丈夫。それよりここ何処だと思う?」

「さぁな。気付いたら知らない場所にいた、そういうのは二度目だからな。一度目の時はこれとは全く別な感じだったし、正直言って分からん」


 一度目は思い出したくない。いくら模造人格を使っていた上にやる気が無かったとはいえ、出し抜かれたのはあまり気分がいいとは言えない。


「とりあえず、私たち以外にもここに居る人を探そう。居るかどうか分からないけど……」

「居るな。結構かなりの数。少なくとも…………8人。……いや、これ9人か?」

「何で分かるの?」


 灯吏は自分の異能力を語る。


「……それ便利過ぎでしょ」

「前はここまで上手く使えなかったんだがな。なんか上手く扱えるようになってな」


 灯吏は壁を殴る。普段ならこの造りの壁は殴れば壊せる。だが、壊れない。


「色々と普通じゃないな」

「!?篠崎ッ!」

「焦るなよ」


 教室の窓から灯吏達のいる廊下へ襲って来る。その数は五。迷うことなく灯吏へ迫る。だが、


-ガチャ……


「緋室、目ぇ閉じてろ」


 灯吏は大鋏を抜き五体纏めて一気に斬り伏せた。血が舞うが灯吏には一滴もかからない。かからないように走り抜けた。


「もういいぞ」

「美夜さんに大鋏それの事聞いていてよかった。見たら気が狂う、だっけ?」

「あぁ。それより……どうして俺はこれを持ってる?」

「え?」


 灯吏はホルスターに入っている大鋏を見る。


「俺はこの1ヶ月、刃の手入れをする以外にこいつを持っていない。もちろん、今日もだ。しかも昨日今日は刃の手入れもしていない」

「……つまり、持っていない物を持っていた、そういうこと?」

「そゆこと」


 小春の言葉を肯定しながらベルトにホルスターをはめる。


「他の連中が死ななきゃいいんだが」

「とりあえず歩きながら話そ?移動しなきゃまたアイツらに……」

「悪いが来たぞ」


 今度は二体。灯吏の相手にはならなかった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 相手にならないと言えばこちらもそうだ。


「弱いな。何の冗談だ、これは?」


 美夜は自分の持ってきた覚えのない己の半身とも言える得物を使わずに相手を全て倒した。


「……」


 殺気。勘違いではないだろう。しかし、何処からだ?普段なら分かるが何故か今は分からない。


(ま、久々にこういうのも悪くはないかな?)


 美夜はこの非常事態を楽しむことにした。その足元には数十の化け物の死骸が広がっていた。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 一方、非常事態を楽しめない二人がいた。


「くそがァァァァァッ!」

「ちょっと!?叫ばないでよ!」


 殺され屋とその友人は全力で逃げていた。


「倭君、殺されて時間稼いでくれない!?」

「ふざけんな!ここで殺されて無事にすむ保証ねぇだろ!!」


 必死に逃げ惑う。銃で致命傷にならない。なら、逃げるしかないだろう。倭はともかくマスターはただの人間だ。あんな化け物に勝てる道理がない。


「灯吏君か美夜さんいないかなぁ?あの二人なら多分コイツらにも楽勝でしょ」

「だろうな。俺も二、三体ならどうにか出来るがそれ以上はさすがに無理」


 二人は逃走しながらどうするか悩んでいた。

 背後に迫る化け物の数は既に軽く三十は越えていた。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「……皆、大丈夫?」


 小町は五人の生徒に声をかける。


「ええ、大丈夫です。ちょっとキツイですけど」

「体力ないなシロ」

「あはは……」


 香澄、剛太郎、卓人、杏奈、環の五人の生徒と共に教室に立て籠っていた。

 あの化け物達に追われてここまで逃げてきたが、ここもいつ襲われるか分からない。


(でも、私がしっかりしないと)


 自分は教師なんだ。生徒を守らなければならない。

 そんな小町を見つめる一人の生徒がいた。


(先生は頑張ってるけど、あの化け物には相手にならない。灯吏君や美夜さんがこんな面白そうな事に巻き込まれない訳がないし……あの二人と合流することを考えて動いた方がいいわね)


 そんな思考を巡らせながら環は他の事を考える。


(ここは何なの?)


 それは全員が考えている事だった。

 そこで環は思い出した。灯吏が言っていた奇妙な発言。


『黒い柱って何だと思う?』


 あの時は何かの比喩だと思った。だが、もしかしたら違うのかもしれない。


(灯吏君は何かを追っている?)


_そして、それはこの現象に関係があるのではないか?


 そんな環の思考は、


「ギャギャギャギャギャギャギャッ!」


 不愉快な笑い声で遮られた。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「何だよ……あれは……」


 あの二人は人間離れし過ぎだ。そして、


「アイツは人間じゃないぞ……絶対に」


 あの黒い服と手袋の女。アイツは人ではない。何故なら__


()()()()()()()()()()()()()()()()()だと?」


 何だそれは?あり得ないだろ?ふざけるな!


「化け物めッ……!」


 ならば倒さなくてはならない。僕と彼女の為に。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「まったく、マスターはいつも気分屋なんですから」


 いつもの事ながら指令はいきなりだった。あの気まぐれと気分屋が服を着ているような人はここに行けとそう命じた。高々、解理持ち一人だ。よほど脅威になるような能力でない限り『我々』の制服に装飾をしている者は使わないはずだ。


(まぁ、あの方にはあの方なりの考えがあるのだろうけども、もう少し説明して欲しいものですね)


 以前、この街に来たことがあるのもきっと理由の一つなのだろうが。

 やれやれ、そう思いながらもう何体目になるか分からない化け物を切り伏した。

 そして、


「ん?」


 彼女は日暮美夜と出会った。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「ここまで人の死体はなし……か」

「それは良いことだよ。被害者が少ないってことだもん。……ここら辺の化け物の死体が気になるけど」

「それは多分先生だろ?あの人なら笑いながら無双しそうだ」

「……うん、すごく分かる」


 どこか遠い目になりながら灯吏へ肯定を返す。


「ところで話変わるけどさ」

「なに?」

「私に合わせなくていいよ。篠崎は戦いたいんでしょ?」


 見透かされているな、灯吏はそう思った。


「だけどお前は一人でいいのか?」

「ま、自分の身一つぐらいなら守れるよ。篠崎や美夜さんには積極的に動いてもらった方が速く解決しそうだし」

「……そうか。なら、行かせてもらうわ」


 小春は一つ頷くと「気を付けてね」と忠告した。


(こいつとの同棲、以外と悪くないかもしれないな)


 など、考えながら灯吏は感覚を研ぎ澄ませる。

 

(これは……先生か?他にも丘城達もいるのか)


 灯吏は感覚で得た情報を小春に伝え別行動を開始した。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「クソッ!!」


 剛太郎は近くにあったイスで化け物を殴る。が、動きが多少鈍るだけで倒れない。


「ギャァ?」


 首を180度回し小馬鹿にするように小さく笑う。効かないぞ、その程度そんな風に笑う。


「うわぁっ!」


 頬を爪が掠める。殺されると確信した。が、


-バンッバンッ!!


 二発の銃声が響く。


「危ねぇ……危機一髪だったな」

「アンタはたしか穂坂さん……ですよね」


 拳銃を構えながら剛太郎を庇うように目の前に立つ。


「全員走れ!!逃げるぞ!」


 倭に化け物が四、五体程襲い来る。


(やべぇ、殺られる!)


 両腕を交差するように防ごうとするが、一番近くにいた化け物が消火器に殴られた。


「お前……」

「穂坂さん逃げて、早く!」


 倭は小さく笑うと走り出した。


「マスター、頼むぞ」

「何で僕!?」

「男だろ?ガキがカッコつけてんだから、大人の俺達も少しは頑張んないと」


 マスターは「あぁ!もう!」と言うと白木から消火器を奪い、


「僕だって男なんだ僕だって男なんだ僕だって男なんだ僕だって男なんだぁ!」


 等、叫びながら一気に消火器を噴射した。


「早く!こっちに!」


 小町はその場の人間にそう叫ぶと皆、そこから離れた。しかし、


「ギャァッ!」


 それは化け物達に阻まれた。

 倭はかなり混乱しかけていた。この訳の分からない場所といい、目の前の化け物達といい、


「おい待て今まで気色が違いすぎるだろ!?」


 否、混乱していた。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 歩く音だけが響く。あれほどいた化け物も今はもう見えない。


(最初は『界』かと思いましたが、『夢』ですか。厄介な……しかも範囲もかなり広いですね)


 思考を巡らせながら歩き続け、


「ん?」

「へ?」


 日暮美夜(殺人鬼)と出会った。


「えっと……あの、貴女は?」

「お前こそ誰だ?こんな所でそんな服で何をしている?」


 美夜は訝しげに顔をしかめる。それは女の方も同様だ。女の方は美夜の手にある得物に警戒を強めている。


「私は、そうですね……『アイン』と呼んでください」

「アインね。そのアインちゃんがいったいこんな所で何をしている?化け物どもが彷徨うろついている中で散歩って訳でもないだろ?」

「それは貴女もでしょう?一体、こんな場所で何を?」


 美夜は目を細め、一つ楽しそうにため息を漏らす。


「中々だな。なるほど楽しくなってきた」

「あの、話聞いて……――ッ!?」


 美夜は己の得物を__身の丈以上ある長刀を一閃した。


「貴女ッ!どういうつもりですか!?」

「どうもこうも、雑魚ばかりで退屈していたからね。少し遊んでくれよ」


 美夜は左手で鞘を逆手に構え、右手で長刀を大きく構えた。


「これは……やるしか無さそうですね」


 アインもレイピアに近い細身の剣を抜く。互いに一閃を交わし意味のない戦いが開始された。

次回、特に意味のない殺意達(美夜&灯吏)がアインを襲う!!

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