表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺人鬼の弟子_《Who Kills Whom》  作者: K糸
夢の中で見る夢を 《Breaking Dead Night》
16/23

03-1 奇妙な同居人_夢に落ちる、落とされる

引っ越しって大変ですよね~疲れましたよ。←この体力無さ男が


時系列的には模造少女終了→1ヶ月半ぐらい平和→美夜来訪→数日後に小春が来る


という形です。灯吏は期末テストなうな時期でした



「ハァ、ハァ……キャッ!」


 女は走っていた。自分達に否、自分に迫る怪物から逃げていた。仲間はいない。自分を除き全員殺されてしまった。自身に迫り来るあの怪物共に。

 人の形をしていたが人ではない。口が縦に開き、両腕には瞳が大きく開かれ羅列するように幾つも並ぶ。両手の五指の爪を銃弾さながらの威力で飛ばしてくる。飛んでくる爪には血が滴り落ち不気味さを更に強め、同時に自分の無力さを痛いくらい自覚する。


「化け物めッ……!」


 言葉を漏らした所で意味はない。銃の弾丸は既に切れ、ナイフではあの怪物共の相手にならない。

 死。濃厚なそれを感じる。自分は此処で死ぬのか?嫌だ。


「いやッ。死にたくない。死にたくないよぉ」


 涙を流しながら走る。仲間達は生きろと言った。ならば己だけでも最後まで生きなければならない。死んでいった仲間達のため、そして何より自分のために。

 だが、運命というやつは彼女を嘲笑い簡単に見放した。


「ルルルルァ」

「ぁ」


 叫ぶ間も無く右腕に爪が飛ばされる。


「アァッ!!」


 短く叫ぶと怪物は喜ぶように唾を撒き散らした。


「来るな……来るな化け物ォッ!!」

「「「ルルル」」」

「え」


 背後を確認する。三十は越えるくだんの化け物がいた。


「ぁあ……ああぁ」


 逃げられない。化け物に完全に囲まれた。酸のような臭いがキツく吐きそうになる。


「ギャ……」

「何?」


 化け物が音を漏らす。そして……


「ギャギャギャギャギャギャッッ!!」

「ギャギャギャギャギャギャギャッ!」

「ギギギギャギギギギャァァッ!」


 化け物達が一斉に笑い出した。気持ち悪い。何だこれは?何なのだ一体。


「嫌、なんなのよ。なんなのよアンタ達は」


 恐怖のあまり女は失禁する。涙と絶望で顔がぐちゃぐちゃになり見ていられない。


「……助けて」


 呟いた瞬間総ての怪物が笑いを止め、こちらを見つめる。女はこの後自分がどうなるか理解できた。

 怪物が数体こちらへやって来た。目の前の一体が口を大きく開ける。


「来ないで。来るな……誰か、誰か助けて……イッ、イィヤアアァァァァァァァッッッッ!!!」


 それを合図に怪物達は女の腹へ、腕へ、肩へ、足へ喰らいついた。そこに慈悲はなく容赦もなく、我先にと怪物達は恐怖に染まった女を貪る。


「いやァァッ!!イタァイ!やめてッ!いやァイタイイタイイタ……ァァァァァァッッ…………」


 悲痛な悲鳴が女の最後の言葉になった。その先の血が口から吹き出る音など言葉ではない。


「ルルルァァッ!!」


 女は肉片一つ残さずに化け物に喰われた。残ったのは血肉に飢えた化け物達の叫び声と新たな被害者を誘う謎だけだった。

 次の被害者達もまた彼女達と同様に喰らわれるだろう。怪物達は飢えしか知らないのだから。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇










































『E N D』





 そのテロップが出るとマスターは部屋の電気をつけた。


「いや~、流石はB級ホラーの名作だね。もう最初にあの化け物が出たとき鳥肌が立っちゃったよ」

「鳥肌ぐらいならいいんじゃないのか?そこに泡吹いてぶっ倒れてる奴だっているんだし。おい、起きろニート。映画もう終わったぞ」

「……」

「こりゃただの屍のようだ。ってか二度と起きなけゃいいのに。ここらで死ねよ、ニートめ。安らかに眠れ(レスト・イン・ピース)ぐらいは言ってやる」

「相変わらず辛辣だね灯吏君」


 簡単に説明すると、灯吏・倭・マスター・ニートの四名はホラー映画を観賞していた。何故こうなったのかは映画が放送されていたから、としか言いようがない。ちなみにニートは開始30分で気絶した。


「でもさ、B級の名作って言ってもあんまりだったな。少しは期待して見たんだけど」

「なんだ灯吏、お前もホラー映画嫌いなのか?」

「も?」


 倭はホラー映画が嫌いなのか。意外な、二人がそう思っているのを察したのか倭は嫌いな理由を説明しだした。


「俺の体質自体ホラーみたいなもんだろ?それでコイツらみたいなゲテ物と俺が同類にされるのが気に入らないんだよ。特にゾンビ系のやつ」

「ああ、そっか。死なないもんね」


 マスターの相づちを聞くと嫌そうな顔をしてアイリッシュコーヒーに口をつける。それを見たマスターは話をそらす。


「ね、ねぇ、灯吏君はあの映画の何が気に入らなかったの?」

「いやだってさ、あの映画の化け物弱すぎるでしょ。そこが気に入らん。戦いにならない」

「…………へ?」

「……いやまて、ホラー映画にバトル要素をを求めてどうする。というか弱いって思うのはお前だけだ」

「底辺を俺に合わせてくれないと」

「お前に合わせたら開始5分で終わるからな!?」

「灯吏君の場合は怪物の方がホラーな目に合いそうなんだけど」


 殺人鬼の弟子の要望は映画を台無しにするものだった。灯吏にはホラー映画の楽しみ方と登場人物の心理が分からないらしい。第一、殺人鬼は被害者ではなく常に加害者だ。


「弱い。弱すぎるぞ。あの程度二秒でほふれよ」

「無茶苦茶過ぎない、それ?」

「ってかそんな登場人物いたら映画が成り立たねぇよ。もう一回映画見直せ」


 全くもって正論である。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 季節は7月。灯吏達は夏休み直前だった。


「暑い」


 当たり前だ。剛太郎は至極当然の事を口にする。


「確か去年よりも暑いんだっけ?」

「去年の温度とか知らねぇ。覚えてる奴いるのかよ?それに分かったところで興味もない」

「そうだよねぇ」


 白木は団扇で扇ぎながら灯吏と語る。そこにやって来たのは香澄だった。


「ねぇ、灯吏。あの店は夏だから何かするとかないの?」

「どうだろう?マスターはやりたいみたいなこと言ってたけど、それだけだしな」


 そんな他愛のない会話をしていると担任じじぃが入ってきた。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「あっ、篠崎君。これ」

「ん?ああ。これ役に立ったの?こまっちゃん」

「篠崎、教師に向かってちゃんはないだろ」


 ニート特性のウイルスバスター……らしい。どうやら香澄が灯吏の事をパソコンに詳しいと言ったみたいだ。当然、灯吏は普通にパソコンを扱える程度の知識しかないためナイフで脅しながらニートに対ウイルスソフトを作らせた。


『まるで大砲を眉間に押し付けられている気分だった』


 ナイフで脅された感想がこれだった。戦闘時以外で過去最高クラスに殺気立っている灯吏が後ろにいたのだ、この感想は妥当だ。


「ありがとう、篠崎君。これ助かったわ」

「そうすか。そりゃよかったよ」


 女教師_宮古小町(みやここまち)は灯吏にメモリを渡す。


「今度、何か奢ってくれよ」

「ええ今度あの喫茶店に行って何か買ってあげるわ」


 そう言って小町と別れ学校を後にした。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


同時刻 如月家


「おかしい」

「何が?美夜さん」


 黒髪の女性に応じる紺色の髪の少女。この二人は髪の色だけを除けば見た目は姉妹にしか見えない。性格は真逆もいいところだが。


「おかしいぞ。何故、私の弟子は女教師を攻略しにかかっている。いや確かにアイツは巨乳の年上好きだが、学校の教師にまで手ェ出すか普通。ってか今のやり取り聞きようによってはただのデートのお誘いだぞ、おい。爆ぜろリア充が。アイツめ、女教師とイチャネチョするのはエロゲとかだけにしろよ。あと仮に、ヤるなら私も混ぜろ。教師のよがり具合を楽しみてぇ。私好みに開発してやる」

「美夜さん、少し黙った方がいいよ。むしろ出てけ。二度と帰ってくるな」

「此処で騒いだ所で篠の字に聞こえるわきゃねぇだろうがよ。それに美夜嬢。おめぇさん調べ物したいからこの家に居候してんだろう?篠の字ストーカーするだけなら叩き出すぞ」


 日暮美夜は現在、灯吏に仕掛けた盗聴器で灯吏の日常生活を聞いて楽しんでいた。時々、危ない独り言が漏れる盗聴はかれこれ三日目だ。この殺人鬼、己の弟子の私生活の一部を盗聴して何が楽しいのだろうか。


「調べ物何だがな、如月さん。どうやら拠点を此処にして捜索するのはそろそろ無理みたいだ。だから、場所を変えてみる」

「ほう。じゃあ、近い内に発つのか」

「そうなるな」


 谷臓と美夜が話しているのを聞き、少女は少し嫌そうな顔をする。


「じゃあ美夜さん。私は……」

「当初の予定通りだな。灯吏の都合を聞かなきゃならんだろうから、それが終わればすまんが……分かってくれ。灯吏ならともかくお前を連れていくわけにはいかないんだ」

「……そんな急な話、篠の字がいい顔するとは思えねぇがな。そこら辺はどうするんだ美夜嬢」

「ホントにどうしようかねぇ」

「美夜さん、何も考えてないの?」


 この少女_緋室小春(ひむろこはる)は日暮美夜の旅の付き添いだった。が、これから先の調べ物に小春を連れていくのは危険だと判断したため灯吏に預かってもらおう、というのが美夜の考えだ。


「ヘックシュン!」

「風邪か篠崎?」

「いや、違うと思うけど」

「風邪なら気を付けた方がいいよ灯吏君。この時期なら夏風邪だろうし」


 当然のように灯吏はその事を知らないが、美夜からしてみればそんなの知ったことではないし、むしろ弟子の反応を酒の肴に出来る。


「そういや美夜嬢、お前さん何を調べているんだ?」

「あれ?言ったことなかったけ?」


 惚けているわけではないみたいだ。美夜は少し間を明け告げる。自分が何を調べているのかを。


双頭の戦狗(オルトロス)だよ。私が調べている物は」


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「…………………」


 無言でテレビを椅子で殴る。簡単に壊れた。


「……クソ」


 どうして自分では駄目なんだ。


「…………もう……いいや。()()を使おう」


 二日前に見つけた少女。あの紺色の髪の少女を道連れにしよう。ああ、でもきっと僕との二人きりだけじゃ彼女は寂しいだろうな。


「さて……と。誰かを巻き込もうかな」


 パソコンを立ち上げ彼女を調べる。この手の調べ物には得意な知り合いがいる。そいつに頼もう。


「楽しみだなぁ」


 せっかくだ。自分の好きだったあの映画のように仕立てよう。最後ぐらいは楽しくなくては。


「うふふ」


 明日、もしくは明後日。彼女を犯して、素敵な夜になりそうだ。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「…………」

「…………」

「二人とも黙るなよ」

「先生……殺すぞ」


 灯吏の第一声がこれだが、それは仕方がない。一分前に知り合った女を居候させろと言われて快諾する奴がいるわけない。簡単に言えば今の灯吏はそういう状況である。


「いきなりだな」

「アンタが言うか」

「そもそもだ、日暮。灯吏以外のアテはないのか?アンタならそれなりに顔が利くだろ」


 そうだ、言ってやれ倭さん!灯吏が表情でそう倭に訴えかける。


「一番安心して任せられるのが灯吏だ。それにこの町なら如月さんやお前も居るしな、穂坂ほざか

「……そう、か」

「そこ!心なしか嬉しそうな顔をするな!」


 倭はアテにならないみたいだ。


「えっと、緋室だっけ?君からもこの人に何か言えよ。知らない奴と一緒に暮らすなんて君も嫌だろ」

「確かに嫌だけど、私は篠崎と気が合うと思うよ。主に苦労話で」

「……ああ、うん。そりゃ気が合うな」


 同居の話を別にしたら緋室とは確実に仲良くなれる。お互いに日暮美夜のせいで起きた苦労話という絶対に親しくなれる共通の話題がそこにはあった。


「穂坂さんや、穂坂さんや。そこな若い二人は上手くやれそうでんな」

「悪いな日暮。今、アンタの悪ふざけに乗っかたら確実に灯吏から三桁単位で殺される。アイツの目がマジだ。怖ぇよ灯吏、俺まで睨むな」


 倭はそんなことを言いつつ平然とした表情でコーヒーを飲む。ただし、カップを持つ手が尋常ではないほど震えていた。


「でも灯吏君なら安心だ、って言うのは納得かな。灯吏君の性癖を考えるに小春ちゃんを襲うなんてあり得ないだろうし」

「あ?こんな美人が同じ家に居るなら普通襲うだろ」

「待て!お前の性癖は年上の巨乳だろ!?小春は胸結構あるけど同い年だぞ!」

「何で年上限定なんだよ」


 灯吏はトンデモない爆弾発言をする。マスターは拭いていたカップを落とし、美夜は開いた口が塞がらず、小春は顔を真っ赤にした。この中で唯一平常心を保っていたのは倭だった。


「ヒント、模造人格」

「あ、なるほど」

「それがあったか!」

「使ってねぇよ」

「「「嘘だ!!」」」

「……誰か助けて」


 三人のテンションがおかしな方向に向いており、それに辟易しながら灯吏はコーヒーを一口含んだ。そこで気付く。


「……………………」

「……えぇと」


 隠すように自分の胸部に手をあて顔を真っ赤にしながら睨み付ける少女の存在を。


「………………最低」

「あぁ、ある程度自覚してるよ」


 灯吏はこの少女に変態認定された。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「結局どうなるんだろうな」


 灯吏は小春に町を案内していた。小春も二、三日はこの町に滞在するつもりなので町を散策することは別に無駄ではない。無駄ではないのだが、


「そろそろ機嫌直せよ。この距離感けっこう辛いんだぞ」

「嫌だ。近くに来ないで変態」


 店を出てからこの調子だ。取りつく島もない。随分と嫌われたものだ。


「……」


 灯吏はやや歩調を遅くし、小春に近づく。小春がいぶかしむように灯吏を見上げる。


「篠崎?」

「……俺達尾行(つけ)られている」

「え」

「振り向くな」


 灯吏は小さな声で鋭く小春を制す。


「どうやら()()()の人間みたいだな。普通に今まで気づかなかった」

「狙いはどっちだと思う?」

「確信はないがお前だろう。俺だったら昨日以前からつけられるだらうし」

「そっか。どうする?私は護身術程度しか戦えないけど」

「……泳がせておく。狙いが何かが分からない」


 灯吏は背後の気配を警戒しながら小春と共に自宅へ戻った。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

二日後


「いやはや、本当に何もない部屋だな。娯楽ゲームが少しだけって。お前本当にここに住んでるのかよ、灯吏?」

「ごめん篠崎。この人止めれない」

「先生、そろそろ帰れ」


 美夜と小春は灯吏の部屋で夕飯を食べると今日はその部屋に泊まることになったが灯吏はいい顔をしなかった。当たり前だが。


「そうだ、篠崎。今度丘城さん達と遊びに行くけど何処がいいと思う?」

「そうだな、アイツは本屋とか好きだな」


 灯吏と小春はこんな会話をするくらいには仲が良くなった。同居の話を別にしたらこの二人は結構いい関係のようだ。


「そういえば灯吏、ストーカーさんはどうなった?」

「捕まえても何も言わなかったな。ボコって吐かせるのもよかったけど流石に面倒だしな」

「吐かせろよ。死ぬ寸前で止めれば良かったろうが。その上で殺せば終わりだ」

「二人とも会話が物騒なんだけど」


 小春が食器を洗いながら呆れたように灯吏と美夜に苦言を呈した。


「ま、明日そいつに会わせろよ。私が直接出向いてやんよ」

「殺すなよ。後処理が面倒だから」

「あいよ。小春も着いてくるか?灯吏の話を聞く限りストーカーさんはお前目当てみたいだせ」

「嫌ですよ」


 本当に嫌そうに言うと小春は自分の布団に入った。


「先生」

「ん」


 灯吏は口調を真剣なものにすると自分の師へ気になっていた事を尋ねた。


「緋室とどういう関係だ?アイツ、若い頃の先生に似すぎだろ」

「私は今でも若いつもりだが?」

「茶化すな」


 灯吏は目を細め質問の答えを待つ。


「分からない。私も調べものをするために旅をしていたら小春が捨てられていた。

 他人とは思えなくてな。今度は殺すつもりで近くに置いた。同じような過ちは犯したくないしな」

「本当に他人なのか?」

「DNA的にはな。ただの他人の空似だ。髪の色も違うしな」


 その答えを聞き、一応安心した灯吏は軽く息を吐いた。美夜は疑い過ぎだ、と笑っている。


「十時か……私達も寝るか?」

「早いな。でもまぁ、もうやることもないしな」

「じゃあさ灯吏。二人きりなんだから久しぶりにえっちぃ事でもしようぜ」

「さっさとくたばれ、ナチュラルビッチ。あとDカップとかいう中途半端サイズさん」


 そう言って自室へ戻った。


「Dカップって日本人の平均だと思うけどな。アイシャ、お前のおかげで私の弟子の性癖が巨乳になってしまったよ」


 どうでもいい独り言だった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「準備万端」


 語尾にハートマークだの音符マークだのが付き添うなハイテンションだ。彼はこの日の為に自分の全財産を使い果たした。


「これだけ人がいれば寂しくないよね?」


 彼は自分の世界を創った。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 灯吏が目を覚ますと異常な状況になっていた。


「ここどこだ?」


 見た目は校舎だ。だが、雰囲気がまるで違う。そもそも、部屋で寝ていたのに目が覚めた場所が校舎というのもおかしい。

 舌打ちを一つすると異能力を使い自分以外の人の居場所を探る。


(結構近くに居るな)


 そこまで行くと居たのは血まみれになった小春だった。


「おい、大丈夫か!?」

「ハァ、ハァ……大丈夫だよ」

「分かりやすい嘘だな」

「……うるさい、篠崎には関係ない」


 何があった、そう聞こうとした刹那、


-ドンッ!


 上から前日見た映画の化け物が降ってきた。


「こりゃどうなってんだ、おい」


 笑みを浮かべながら手刀で化け物を裂いた。やはり、一体だけでは話にならない。


 この事件が今後の灯吏の人生を変えることになるとは灯吏自身、予想だにしていなかった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「閣下」

「どうした、リューク」


 恭しく頭を下げるとリュークと呼ばれた理知的そうな男は青年に訊ねた。


「何故、このような小さな事件にアインを使うのですか?別に彼女でなくてもよいのでは?」

「確かにな」

「では、何故?」

「そう……だな」


 あぁ、とため息のように漏らすと、


「会えると思ったんだよ」

「会える?それは一体誰にでしょうか?」

「■■■■■■」

「………………左様……ですか」

「だから、生半可な奴を使うわけにもいかないだろ?」


 そう_ライルは笑った。

リューク「私の上司が気分屋過ぎて辛い」


誰か彼にタウンワ◯クを……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ