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殺人鬼の弟子_《Who Kills Whom》  作者: K糸
模造少女は笑えない 《Mad To Tears》
11/23

02-3 決着のない戦い_失敗作の狂笑

なんと言うか遅れることが当たり前になってきた本作品。やっぱり二作同時に書いていると遅くなってしまう。

ま、そんなことはおいといて←だいぶ重要だろうが

今回は灯吏君のキャラがどうしてこんなにブレブレなのかの説明です。そんな二章の3話


 教室を見渡して疑問に思い、クラスメイトに話し掛ける。


「灯吏はまだ来てないの?」

「あれ?確かに篠崎君遅いね。どうしたんだろ?」


 香澄は自分の親友を少し心配したが、どうせ風邪か何かだろうと思い無視した。自分の中の胸のざわめきを、半年前のように灯吏が危険なことに首をまた突っ込んでいるのでは、という不安を。

 そして、その不安のまま放課後になる。灯吏からの連絡がないため明日聞くしかないと思いつつ、帰り道を一人で歩いていた。


-ppppppppp


 自分の携帯の着信音が鳴る。


 普通のことだ。


 携帯をとり相手を確認し、電話に出る。


 普通のことだ。


 そう、ここまでは『普通』だった。


『……か……じ……先……た……て……ッ』

「えっ?」


 電話越しに聞こえる杏奈の声。よく聞こえないが尋常じゃないことになっているのは分かる。


「杏奈ちゃん聞こえる?」

『助けて』

「杏奈ちゃん?」

『先輩、助けて』


 電話が切れる。ツーツー、と感情のない音が耳に入る。数秒後、ようやく思考を取り戻した香澄は警察に今のことを連絡したが、全く相手にされなかった。ならば、


(灯吏……!)


 彼なら力になってくれるはずだ。しかし、電話は繋がらない。焦りだけが募る。電話はいつまでたっても繋がらない。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 黒服の男たちを切り裂き、目の前の少女に斬りかかる。だが、寸前で見えない壁に阻まれて刃は少女に届かない。そして、灯吏が止まった一瞬を少女は見逃さずに殺しに来る。灯吏はそれをなし、距離を取る。攻撃の方法こそ違うがこんな攻防を百回は繰り返している。

 篠崎灯吏の足元や、その周辺には血の海と人だった肉片が散らばっている。


(俺は何をやっている?何でこんな女一人殺せない)


 アイシャを殺した女が目の前にいるのに奇妙な壁に邪魔されて止めをさせないどころか、傷一つつけれない。その事実が灯吏を苛立たせ、少女の邪な笑みを深くさせる。


「どうしたんですか?いつぞやの通り魔さんの時のように私を切り刻めばいいじゃないですか。ま、できないでしょうけど」

「黙れよ、お前」


 灯吏は息一つ切らさずに、飛びかかってきた男をめんどくさげに切り殺した。ここにいる連中はほぼ全員がきょうしている。灯吏の手にしている得物のせいで。


「あ~あ、また罪のない人を殺した。酷いですねあなたは」

「黙れよ、俺はそう言ったよな?」


 少女の目前にまで距離を詰め斬りかかる。だが、先程やそれ以前と同じように壁に防がれる。が、その刹那


パンッ!


 銃声。初めて少女が動いてよけた。隙ができる。それを見逃す灯吏ではない。


「ハァッ!」

「ッ!?邪魔だぁ!」


 少女が蹴りを放つが、灯吏はそれを鬱陶しげに片手で防ぐ。防いだ逆の手で少女の首を片手で絞め上げ乱入してきた青年に声をかける。


「どうして、アンタがここにいるんだ?倭さん」

「如月環から連絡がきてお前のことを頼まれたんだ。随分とまぁ派手にやらかしたな。後処理どうすんだよ、こんだけ荒しゃぁ大変だぞ色々」

「さぁ?後で考えますよ、そんなどうでもいいこと」

「だと思ったよ」


 掴み上げられている少女に銃口を向け、灯吏に軽口を叩く殺され屋・穂坂倭。そんな倭に目もくれずに掴み上げている少女を今にも殺さんとしているが残った理性を総動員させて問いかける。


「お前は誰だ?」

「あぁん?」


 反応したのは隣の倭だった。が、それを無視し二度ふたたび少女に問いを放つ。


「お前は誰だ?あまりにも似すぎだろ。俺や殺人鬼(先生)に。才能や異能力はお前本来のものだろうが、それ以外がまるで俺達と同じだ。一体なんなんだお前は?」

「……知らないんですか?私を?あなたが?」

「どういうことだ」

「……ふふっ、そうですか。なら、答えましょう。私は」


-殺人鬼の弟子ですよ-


 二人がその言葉を聞いた瞬間だった。灯吏がその言葉に疑問を持った刹那だった。






-戦場だったビルは跡形もなく爆発した。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


数時間前


「半年前の犯人が分かったのよ」

「は?」


 この反応は当然と言えば当然だろう。そもそも半年前にこのガキ_如月環と自分_穂坂倭は知り合ってすらいない。それなのに半年前の犯人が分かったなんて言われても疑問符しか湧かない。一応、マスターの方に視線を向けるも軽く首を振るだけだ。

 客観的に見てこの状況は、いきなり現れたと思ったら息を切らせて胸ぐらを掴み環は倭に(倭からしてみれば訳の分からないことを)まくし立てている、という実に噛み合っていないアホらしい状況である。


「半年前に私は殺されかけて灯吏君が助けてくれたの」

「ああ、それで?」

「その時の犯人が灯吏君と殺しあってるの!」

「はぁ、」


 倭の反応は微妙だ。いきなりこんな状況なのである意味当然の反応といば当然だが。


「とにかく灯吏君が危ないの助けて下さい!分かったら早く行って!!」

「人にもの頼む態度か、それは?というか灯吏なら大丈夫だろ」


 こと戦闘において篠崎灯吏という少年は人間の枠組みを越えていると認識している倭は灯吏を助けるなどという選択肢は発想にない。そもそもあれと一緒に戦っても自分は足手まといになるのがオチだろう。


「……相手は灯吏君の恋人を殺した女の子なの」

「…………なぁおい、まさかとは思うがあいつ復讐でトチ狂ってるとかないよな?」

「そのまさかよ」

「復讐か。あの灯吏が、ね」


 腰を上げ自室へもどり銃などの準備をすると、マスターが以外そうな声音で話しかけてきた。


「へぇ、戦いに行くのかい?」

「まさか。出来の悪いバイトを迎えに行くだけだ。戦闘なんざ本来は専門外なんだよ」


 得意ではあるがね、そう付け加えコーヒーをイッキ飲し口許をぬぐう。素の顔立ちが良いとこういう仕草でさえ様になるのがうらやましい。と、マスターが考えていると環は倭に場所を伝えていた。


「けっこう近いんだな。じゃ、行ってくるよマスター」

「ハイハイ、いってらっしゃい」

「灯吏君のことお願いします」


 これが穂坂倭が事件に首を突っ込む原因だった。要は面白半分で首を突っ込でいるのだ。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「ごめんね香澄ちゃん、灯吏君。手伝ってもらって」

「構いませんよ。御飯もご馳走されちゃったし」


 二人の会話を聞きながら奇妙な視線を感じていた。が、特には何もしなかった。相手から動く気配もなかったのであまり過剰に反応するのもどうかと思ったからだ。

 しかし、


「如月環だな」


 無機質な声が響く。そこから先の声の主と灯吏の行動は迅速だった。


「丘城、すまん」

「へっ?キャッ!」


 灯吏はとっさに香澄を押し座り込ませ、会長に迫っていた手を絡めるようにして防ぐ。

 男はもう一本の手で小型の懐中銃を撃とうとするが、灯吏が咄嗟とっさに銃を握り壊したため距離を取りナイフを出した。接近戦をやるつもりなのだろう。狙われた環はというとやや驚いた表情になり、灯吏の隣にいるだけだ。

 男は数瞬の間灯吏とにらみ会うとナイフを投げた。灯吏はそれをしゃがむようにしてナイフを避ける。環も灯吏と同様の行動で避けた。


-面倒な


 灯吏はため息をつき、座り込んでいる中学の頃からの友人の少女に目を向ける。


「丘城」

「な、なに?」

「先輩を頼んでいいか?」

「それはいいけど、灯吏はどうするの?」

「少し、な。俺がやらなきゃならないことがあるんだ」


 そう言って灯吏は立ち上がりに視線を移す。男は不快な笑みを見せていた。さらに、先程の香澄とのやり取りの際に出したのだろう。大口径の拳銃も持っている。

 だが、それだけだった。それだけでは灯吏の敵にはなり得ない。故にこれは当然の結果だろう。


「レストインピース」


 決着がつく。勝負_いや、勝負ですらない。喧嘩でも、ましてや戦いでもない。灯吏が近付いて殴る。ただ、それだけだった。その行動が一秒もかかっていない、という一点を除けば至極普通だった。男は意識を失い警察へ連行された。

 これが半年前の事件。これは解決した。事件の犯人が分からなかった、そんな未解決で解決した。してしまった。

 未解決。その理由は犯人が連行中、死亡してしまったためだ。爆死。男を連行していたパトカーごと爆発されたのだ。

 灯吏はその後犯人を探したものの見つからずに終わった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「おい、無事か」

「死んでないって意味なら無事、だっけ?そういう意味なら無事だよ」


 ベットから立ち上がる。なんだか懐かしい夢をみていた気がするが、多分気のせいだろう。


「倭さん、ここは?」

「俺の部屋だよ。くたばったお前を連れてきたんだ。マスター、灯吏が目ぇ覚ました」

「ああ、おはよう。灯吏君」


 灯吏はマスターに軽く会釈をすると、彼はコーヒーを灯吏に渡し、倭の隣に座った。


「無茶したものだね、灯吏君。あまり君らしくもない」

「ハッ」


 灯吏はマスターの言葉を鼻で笑うと、自嘲するような表情を見せる。


「らしくない、か。ああ、分かっていますよマスター。実際こんなのは俺らしくない。だから倭さんに助けられる形になったんだろうよ。

 でもさ、マスター。そんなもんは、はっきり言ってどうだっていいんだ。俺は知りたい。いや、知らなきゃいけない。アイシャがあいつに殺された理由を、絶対に」


 アイシャというのが誰かは倭やマスター分からなかったが、倭にだけは一つ分かったことがある。


「お前、そろそろやめたらどうなんだ?」

「……」

「倭君?」

「それを続けると自分の素が分からなくなるぞ」

「分かってはいますよ。ただこれを続けなきゃ忘れそうで怖いんです」

「倭君。彼は何を?」

「簡単に言えばこいつは自分の精神年齢を14で()()()止めている。マスターがこいつに初めて会ったときの感想の理由だよ。

『掴み所を掴ませない』。なるほど確かに、そうなるな。だってこいつには掴まれるだけの自分にならないようにしている。恐らくのレベルをでないがな」

「ええ、あなたの言う通りですよ倭さん」


 体は17だが精神は14であえて灯吏は止めている。理由なんて考えるまでもない。アイシャの復讐のためだ。その感情を忘れたくないからあの頃でわざと止めている。

 14。どこか奇妙な敬語も、どんな相手に対してもある程度余裕ぶるのも、つまらないことで沸点が達するのも、全て奇妙な幼さ故だ。


「この件が終わればちゃんと俺は俺になりますよ。前から自分でそう決めてありましたし」

「そうか」


 それっきり三人とも一言も喋らなくなる。常人なら気まずさに耐え切れなくなるが、生憎三人とも常人ではないためこの空気に普通に耐えている。


「倭さん、あいつはどうなりました?」

「あのガキのことか?あいつなら俺が気付いたときにはもういなかったよ」


 数分後、灯吏は気になっていたことを尋ねる。その答えは純粋に"分からない"だった。


-プルルルルル


「ん?俺の電話?倭さんそれとって下さい」

「ほれよ」


 軽く礼をすると電話に出た。


『灯吏!やっと繋がった。何回も電話したんだよ!』

「丘城?どうしたんだ?」

『杏奈ちゃんがわれた!警察に言っても信じてくれないし、会長は携帯を携帯しない人だし』

「……丘城」

『なに』

「今からそっちに行く、少し待っててくれ」

『えっ、とう-』


 丘城が何か言っていたが無視して電話を切る。


「倭さん、マスター、手を貸してください」

「ああ、やっぱりこうなるのか」

「ま、しょうがないって」


 灯吏は殺気をにじませた声音で二人に協力を依頼した。


 まだ殺人鬼たちの戦いに決着は着きそうにない。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「アハハ」


 あいつは来る。私に殺されにやってくる。


「フフ、アハハハハハ!」


 早く来て。早くお前を殺したいの。早く私があの人の一番だって証明したいの。


「フフフフフ、フフ、フフ、アッハハハハハハハッ!!」


 篠崎灯吏。お前は私に殺されるべきだ。



 失敗作の狂笑はいつまでも響いていた。決着はまだつかない。

爆発に巻き込まれたのにほぼ無傷の灯吏君&倭さん。君らもう少し人間しようぜ……

次回はもっと早く更新したいんじゃ~

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