表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺人鬼の弟子_《Who Kills Whom》  作者: K糸
彼らの生きる非日常 《Start Of Days 》
1/23

01-1  二人の語らい_そして嬉しくない出会い

初投稿です。かなり遅いです!←おい

まるでミステリーのようなタイトルですがミステリーは(多分)ありません。むしろホラーとかの要素の方が強いです。

では、一つお付き合いをお願いします。


「少し悲劇について語ろう」


 セミショートの黒髪と黒い光沢を放つサングラスがとてつもなく似合う女性、つまり俺の目の前にいる彼女はそう切り出した。


「ある少年にも満たない子供が男数人に拐われた。理由は簡単だ、その男達の欲求不満の解放、それだけだ。実に分かりやすい動機だろ」


 彼女はそう言ってクスリ、と少し笑った。

 俺は目を細め彼女に続きを促した。今の俺は彼女と似たような表情だろうなと、どこか他人事のように感じていた。

 彼女は愉快げにそして饒舌にかたりだす。


「その子供は自分が殺されることが理解できた。当然だ、相手は大人。しかも5、6人の男連中なんだからな。男達だってその子供を好きなように犯したら、好きなように殺すつもりだったんだろう。そこら辺は今はもう分からないが、な」

「……」

相槌あいづちぐらいは打てよ。そんなニヤつきながら黙り込むようなキャラじゃないだろ、お前」


 彼女は舌打ちをする。しかしその雰囲気や読み取れる表情は楽しげだった。彼女はまた語り出した。


「男達がその子供を犯して殺す。なるほど、確かにこれは悲劇だ。なんの罪もない子供が下らんゲスな欲望のせいで命を奪われるんだからな。だがな、話はこれで終わりじゃない。これで終わったらただの悲劇だ。だから、この話はまだ終わりじゃない」

「……ええ、知ってますよ」


 俺は微笑を浮かべながら目の前の彼女の言葉に応じた。

しかし、彼女は俺を無視するように続きを語る。


「その男達は全員死んだ。正確に言えば殺されたんだ。誰に?答えは明白だ。()()()()()()()()()()()()()。ハッ、一人()り逃がしたとはいえ大したもんだよホントに」

「そして、俺はあんたと出会った。殺人鬼(先生)

「私としては殺し損ねた奴を追ってたらお前と出会ったってだけなんだがな。ま、それがこんな関係になるとは運命ってやつは実に味わい深いとは思わないか?なぁ、弟子」


 彼女の笑みに俺もつられたように笑う。


「つまり、だ。子供そいつにとっての悲劇はまるで神懸(かみが)かったような殺しの才能があったこと。そして、そいつが殺人鬼()の弟子になったこと」

「そうかもしれませんね」

「違うだろ、そんな答えじゃない」

「……」


 俺は彼女の真意が分からなかった。いつの間にか殺人鬼せんせいの笑みは消えて、真剣な眼差しで俺を見つめていた。


「お前の答え方はこうだ『あんたが俺の人生を悲劇だなんて決めるな』だろうが、違うか」


 彼女の真意に俺は気付いた。


―なるほど。そういうことか-


「だからさ、答えろよ。お前は自分の『人生』をどう断じるんだ?他ならぬお前の意思でお前のために……」


―答えろ-


 他ならぬ俺の意思で、他でもない俺のために殺人鬼の弟子()は答えた。


「悲劇なんてないさ。俺の生きる世界はなかなか楽しい。あんたの世界はどうなんだ殺人鬼?」

「決まってる、私の世界は最高だ」


 そう言って彼女は俺の足元に()()を放り投げる。それは俺がずっと欲しいと、手にしたいと願っていた凶器ものだった。


「?……俺に何故これを?」

「卒業祝いだ。バカ弟子」


 欲しかったんだろう、そう彼女はうそぶいた。


「じゃあな。ま、お互い生きてりゃまた会えるさ」

「ええ、そうですね」


 こうして俺の卒業試験のような奇妙な語らいは終わった。卒業証書の代わりの凶器を渡され(正確には捨てるように投げられた)、俺はとりあえず殺人鬼(先生)から卒業することになった。

 これが今から一年と数ヶ月前、簡単に言えば約二年前、俺が高校に入る前の話だ。

 そして俺は今、


「……」

「……」


 先ほどまでは確かに()()()()()()()と向かい合っていた。


「嘘だろ、おい」


 これは俺、つまり『殺人鬼の弟子』篠崎灯吏しのざきとうりの物語にもたないつまらなく、そして下らない話だ。


「よぉ、お前誰だ?」

「……ただの高校生だよ」


 これは、とてもつまらなくそして下らないそんな俺の非日常にちじょうの一つにすぎない。

 少なくともこの時の俺はそう考えようと努力していた。

 そしてその思考を次の日には捨てていた。意味がないと判断して、本来の自分には必要ないと思い直して。

 溜め息と共に自分を偽るのをやめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ