4話 魔物との応戦
※このステータスは各魔法効果を簡易的に閲覧したものです。
名前:ヨウタ ヤスナギ
性別:男
出身:不明
職業:無し
成長:レベル1
魔力:13500
魔法:名付魔法
《時間魔法》
《断罪魔法》
簡易魔法
浮遊・物体を浮かせる事に適した魔法
消費魔力:10
待機・予め用意してた物をその場に出す魔法
消費魔力:10
文字・必要に応じた文字を使い分ける事が出来る魔法
消費魔力:15
属性魔法
風属性・初級
突風 強い風を出す。消費魔力:5
かまいたち 風の刃を放つ。消費魔力:15
付加魔法
高速移動・一定時間高速で動く事が出来る
消費魔力:20
威力上昇・一定時間攻撃の威力を上げる事が出来る。
消費魔力:20
背の目・一定時間死界の情報を得る事が出来る。
消費魔力:20
効果対象無制限・一定時間魔法を行使する対象を増やす事が出来る。
消費魔力:25
あとから気付いた事だが、あのステータスに映し出される魔力量は、魔力の残り数値のようだ。俺が一番最初に閲覧した時に出ていた10000という数字はあの時、《時間魔法》を発動した後の表記だったらしい。だから正確には13500が正しい事になる。この世界の平均は1000未満らしいので、自分の魔力量の多さが如何に規格外なのか、考えさせられた。
今日は魔物と戦闘訓練を行っていた。今戦っている相手はグランドコヨーテ二匹とサンドクラブである。この二つの魔物はここいらでは頻繁に出没する事が多く、最も初心者向けの相手として有名だった。
まずグランドコヨーテの特徴だが、こいつは土属性の魔法攻撃を放って来る。だが比較的臆病なのか、その鋭い牙や爪を使う事なく、口から泥団子のような塊を飛ばして応戦してくるのだ。次にサンドクラブ。こいつは好戦的で、口元から泡のように吐き出した砂の目くらましや硬い爪の攻撃が特徴的だった。
もう名前がどちらも長ったらしいので、ここからは狼と蟹で行こうと思う。
「やっぱ、実戦訓練に勝る特訓はないと言うが」
攻撃力に特化した魔法が少ないのはけっこうきつかった。まあ、確かめたい事もあったし、ちょうどいい。
『グラァ!』
(……きたっ!)
「……っと!」
今のは背後から飛んで来た泥団子砲弾をよけた俺の息遣いである。付加魔法:背の目の効果によって、俺の視界はずば抜けて広くなっていた。だからだろう。死角に対する回避力も高くなっている。これらの付加魔法は戦闘が始まる瞬間には予めかけておくのだ。かけてから十五分は持つし、そうすれば案外敵にも対抗しやすかった。
少し低ランク魔物に過剰だと思われるが、問題ない。
泥団子だと思ってあの攻撃を甘く見る事なかれ。即死とまではいかないが当たればけっこう痛いのだ。どれくらい痛いのかといえば、呼吸が出来なくなるぐらい痛い。試しにわざとぶつかってみたので自信を持って保証が出来ると昨日の俺が言っていた。きっと。
『『グルルルッ!』』
二匹の狼が唸る。一匹の蟹は先程から俺の周りをぐるぐると回っていた。正直、鬱陶しい。ちょこまかと……。
『グラァ!』
「浮遊!」
離れた距離ではあるが正面から泥団子砲弾を飛ばしてきた。それを俺は避ける事なく、ちょうど真正面に来た蟹を浮かせて防御する。その瞬間、蟹は砂を俺の顔に目掛けて飛ばして来るが、付加魔法:高速移動を駆使して届かない距離まで下がってかわした。
すると今度はもう一方の狼が俺に向かって泥団子砲弾を飛ばしてきた。今度は吠える事なく、しかも二個連続だ。
「突風!」
それをこちらは属性魔法を使って応戦する。強い風を吹かせると言っても、そこまで高い効果を発揮する訳ではないので、弾道を逸らし、明後日の方向に飛ばすぐらいしかできなかった。
「かまいたち!」
続いて風の刃で攻撃。浮遊を解除した蟹に向かって、かまいたちを使って追撃を行った。このかまいたちは俺が覚えている魔法の中で唯一攻撃力がある魔法と言っても過言ではない。《断罪魔法》もあるが、どんな効果か分からないのでまだ発動した事がなかった。
『キャン!』
『…………!』
かまいたちによって後ろに弾かれた蟹は狼に衝突。その際、狼は蟹の硬い爪に頭が当たり、鳴き声を上げていた。しかし、まだ動けるらしい。蟹の方は余裕そのものだ。
「さってと……じゃあ、そろそろ良いかな?」
そう言って俺は高速移動を使って今まで飛ばされた泥団子砲弾を集め始めた。触った感触は泥団子というより、ざらつく水晶のような感じだった。大きさはちょうど野球ボールぐらいだろうか。それを先の攻撃三回分と、この戦闘が始まる前の不意打ち二回分の計五個分の泥団子を手元に集めた。
そして、その集めた泥団子を――
「くらえっ!」
――振りかぶって狼に向かって投げ付けた。シュンという音が遅れて聞こえてくる。
『キャイン!』
泥団子は一匹の狼にヒットし、ダメージを与える。今の俺には付加魔法:威力上昇があった。なのでそこら辺の石でも投げれば攻撃に使えるのだが、いかんせん手頃な石が無かった。だから狼が泥団子砲弾を飛ばして来るのを待っていたのだ。
不意打ちによる二個でも良かったのだが、どうしても魔物の数分は欲しかった。
既にダメージをけっこう与えていたのか、当たった一匹はそれ以降動かなくなる。まずは一匹。
それからこの戦いは実験でもあった。
もう一匹の狼は泥団子でダメージを与え、尽かさずかまいたちによる両断を味あわせた。続いて蟹の方は――。
「浮遊!」
俺が狼を相手にしている間に背後から爪で攻撃を仕掛けようとしていたので、簡易魔法:浮遊によって阻止する。その際、砂を飛ばして来るが、飛距離はないので問題なかった。
そのまま泥団子を投げつける。
『…………っ!』
迫る泥団子。じたばたと暴れる蟹。
(止まれっ!)
その泥団子が蟹にぶつかる瞬間、俺は《時間魔法》を使って泥団子の動きをピタリと停止させた。蟹はちょうど口元に泥団子が当てられて、砂を吐き出す事が出来なくなっていた。それから背後を取ると、また同じように投げつける。
(速まれっ!)
そしてそれがぶつかる前に、再び《時間魔法》を発動。さらに付加魔法:効果対象無制限の魔法効果で、予め止めていた方と今投げた方、両方のスピードを上げる事に成功。それから威力上昇の効果で、蟹を前後から押し潰してみせた。
バーンと泥団子が衝突して弾ける音が響く。これで敵方は全滅。戦闘終了のファンファーレが脳内に妄想として流れた。だがレベルは上がらない。
残り魔力を確かめてみると、少なくなっていた。あと一回、《時間魔法》が発動できるぐらいだろうか? 《断罪魔法》なら三回。ちょうど、付加魔法も切れかけていた。
今の戦闘で使った魔力は7140。いくら魔力量が高いとはいえ、これではやはり燃費が悪過ぎた。一回でこんなに消費していては、連続で戦闘を行えない可能性が高くなってしまう。
今日のは《時間魔法による早送り効果の実験だったので、まだ言い訳が付くが、名付魔法の魔力消費量は出来ればもう少し抑えたいところだった。
消費魔力を抑えるか、残量魔力を回復する術があれば探すとしよう。おそらく、それが今後の俺の課題となるかもしれないのだから。それから期を見て、《断罪魔法》も発動実験しておこう。
上手く戦えていたでしょうか?