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覚醒 THE ワールド  作者: 明智
第1章
12/17

11話 仲間と連携

 ハンターになってから二週間という月日が過ぎた。その間に俺はソロでDランクのクエストを五回繰り返す事で、ランクも一つ上のDに上がっていた。正直、Eは簡単だがハンターというより、ただのお手伝いさんのような感覚でつまらなかった。


 Dランクになった事で、採取系クエストが多くなった。しかし、取ってくるアイテムは難しくないくせに、そのアイテムを手に入れる場所に現れる魔物がこれまた厄介な奴らばっかりだったのだ。


 ゴーストとかもう、どう戦えば良いんだって叫びたくなったほどだ。俺はアイテムを採取するとすぐ様その場を後にしたのを覚えている。だってあいつら何やっても攻撃が通じないんだもの。


 後から聞いた話だが、あのゴーストを倒すには属性魔法(エレメンタルマジック)の陽が必要らしい。俺は属性魔法(エレメンタルマジック)の風の適正しかなかったらしく、陽はもちろん。陰、火、水、土の属性は使えない。自分がチートだと思っていただけに、あれは少し残念だった。


 それから簡易魔法(シンプルマジック)を新しく三つとアイ達のパーティーに加えてもらえる事になった。最初は自分の力でCランクまで上がるつもりだったのだが、そうもいってられなくなったのだ。


 Dランクのクエストでも三十回クリアすればランクアップは出来る。しかし、そこら辺のステージはまだ魔物が弱く、ラミリ―の店で風のナイフを手に入れた俺の敵ではなかったのだ。


 まあ、それで自惚れた俺は一人でCランクに挑み、初めての魔物討伐のクエストをソロで挑戦した訳だが……結果は惨敗。チートな魔法を持っていても使いこなせなければ意味がないと分からせられた。ちなみに相手は初日で見たあの怪鳥である。


名前は『アースプテラ』。空高く飛び回りながら、鳴き声で地面を操るという厄介な魔法を使う魔物だ。時を止めても他の場所から攻撃が繰り出され、どこから来るのか全く予測が付かない。しかもアースプテラには俺の攻撃が届かないというおまけ付きである。久々に泣きそうになったねあれは。


あれでCランクならBからはどんな化け物なのか気になってしまう。


それからというもの。俺はアイ達のパーティーに加えてもらっていた。




 そんな俺達だが、現在はCランク魔物――ゴーレムに苦戦を強いられているところである。ガキン、という音とともに俺のナイフがゴーレムに弾かれる。


「ちっ、硬いな」


 毒づくように吐き出し、相手との距離を計った。その間にアイは弓を引き絞り、狙いを定めていた。このパーティーの攻撃担当は俺とアイなのだが、どちらの武器も刃物系なので、ゴーレムのように硬い相手とは非常に相性が悪い。刃こぼれは後でアイの付加魔法(エンチャントマジック)で直してもらうとして、折れたら時間を戻して直そうと思う。


「サンドストーム!」


 ラミリ―が土の属性魔法(エレメンタルマジック)を唱えた瞬間、砂嵐がゴーレムに向かって吹き荒れる。普段は陽属性の魔法で回復やサポート等に徹してくれているラミリ―だが、今日ばかりは攻撃にも加わってもらっていた。


 ちなみにラミリ―が使える属性魔法(エレメンタルマジック)は陽と土で、まだ風しか使えない俺と比べて、断然技のバリエーションが豊富だった。土属性を使えるようにした理由はソロでクエストに出て行く場合、先日俺が遭遇したゴーストぐらいにしか倒せないので、不便だったかららしい。


『グゥオォォォォォ!』


 ゴーレムは鬱陶しそうにその砂嵐を払い除けながら、突進して行く。その突進はラミリ―に一直線だった。


「――っ! グランドウォール!」


 咄嗟に叫んだ魔法により、土の壁が現われた。その土の壁はあっさり壊されたが、時間稼ぎにはなったようでラミリ―はその場から距離を取る事に成功していた。


「バーニングアロー!」


 続いてアイが鏃だけでなく、全体的に燃えている矢をゴーレムに放つ。しかし、それを奴の硬いボディがいとも簡単に弾き返してしまう。


「もう! ホント、硬いわね!?」

「ゴーレムは胸の部分にある赤いブロックが弱点なんです! そこを狙えば!」

「そういうのはもっと早く言いなさいよ!?」

「す、すみませぇん! 今、思い出したんです……!」

「おい! 漫才やってないで、来るぞ!」


 俺達はゴーレムの拳を各自、散開するように跳んで避けた。その瞬間、空中でアイがファイヤーアローを放つ。胸の赤い部分を狙ったようだが、大きな腕によって阻まれてしまう。


 だがゴーレムのその行動で確信を持てた俺は体勢を立て直し、一気に距離を詰め寄って行く。


「かまいたち!」

「駄目! あの腕が邪魔で弾かれちゃう!」

「くそ! なら――束縛!」


 俺は新しく覚えた三つの簡易魔法のうち一つを早速使用した。これの本来の使い方は多くの物を縛り、崩れないようにロープで固定するための魔法なのだが、俺の場合は少し使い方が異なっている。 


 束縛でゴーレムの両腕を縛り上げると、すかさず《時間魔法(クロノス)》を発動させる。ゴーレムが生物なのかは甚だ疑問だが、狙いは最初から奴の腕を縛り上げるロープなので関係ない。


『――っ!』


 ロープの時間を止める事で、最低でも十分はゴーレムの行動を制限する事に成功した。

 力の強い相手の腕を縛っただけではすぐに解かれてしまう魔法だが、俺の名付魔法(ユニークマジック)時間魔法(クロノス)》を発動した事で、決して解ける事がなく、その場から動かす事も出来ない完全束縛術が完成していた。


 『そこにそうある状態』で固定してしまったロープは力だけで解く事は不可能。それどころか、動かす事すら出来ないだろう。制限時間はあるが、弱点の分かる相手に十分は長過ぎる。


「今だ、アイ! 行くぞ!」

「えぇ、分かってるわ! ファイヤーアロー!」

「かまいたち!」


 アイの放つ火矢がゴーレムの弱点となる部分に直撃する。『グルォォォォッ!』という呻き声を上げながら、なんとか腕を螺子って束縛から抜け出そうとするが、全くビクともしない。無駄だ無駄。俺が解除しない限り、そこからは決して逃れないよ。


 俺も後から放つ風の刃でゴーレムの赤いブロックを攻めていく。おそらく、あの位置関係的に、あれは心臓と同じような意味が込められているのだろう。そう考えると、ゴーレムという魔物は生物というより、人工物に思えた。


「じゃあ、そろそろこの一発で決めてあげる!」


 アイはそう言って、矢全体に炎を纏わせる。ゴオォッと火力を上げ――


「バーニングアロー!」


 ――渾身の一撃を解き放つ。

 弱点を守る事の出来ないゴーレムは、自分の心臓に目がけて飛んでくる矢を打ち払う事すら適わない。

 ビュン、という風を切るような音を立て、矢はゴーレムの後ろへ現れた。

 その瞬間、ゴーレムはゆっくりとだが前かがみで倒れて行き、最終的にはうつ伏せの形で地面に横たわる。ボディの方をよく見ると、背中に焦げ付いた穴が残っている事が分かった。 

その事から、あの矢は見事貫通していたようだ。さすがは精霊武具(エレメンタルウェポン)の一種。普通より破壊力が高い。


あとから教えてもらえた事だが、アイの使っている武器も精霊武具(エレメンタルウェポン)だったらしい。弓に火の精霊が宿っており、矢がなくとも炎事態を放つ事も出来る機能付きだ。


「じゃあ、このクエストはクリアね」

「おう」

「はい」


 アイの言葉にそれぞれが頷き、反応を返す。物言わぬ魔物の身体を見て、その実感が湧いてくる。俺は自分のカードを取り出してみると、確かに依頼成功数が一つ増えていた。


ヨウタ・ヤスナギ

ランク:D

使用武器:ナイフ

依頼受付数:13

依頼成功数:12

依頼失敗数:1

称号:名付弐式(ダブルユニーク)


 Eランククエスト3回にDランククエストが8回。Cランククエストが2回の計13回のクエストを受けている。そのうちの大半はDランクであり、唯一の失敗はCランククエストであった。


 今回のクエストもCランクだったが、ソロとパーティーでは成功率が段違いである事を思い知らされた。俺のランクアップに付き合ってもらっている二人には本当に感謝したい。


 だがランクアップまでこなさなくてはならないクエストが多過ぎた。Dランクで言えば、Eだった時にクリアした回数を抜いてあと27回。Cランクをクリアしていけば、あと14回といったところだ。数的に考えれば、Cランクを選んだ方がいいかもしれないが、時間をかけるならDランクでも事足りる。


 しかし、それで強くなれるかどうかは別問題だ。


 Dランクを繰り返して地道に上げる方がデメリットも少ないが、経験を積むのにはあまりよろしくない。それに対してCランククエストなら数は少ないが、上手くこなせれば良い経験になるだろう。


「カードの確認もしましたし、ギルドに戻りましょうか」

「ああ、一応、報告は絶対なんだよな」

「報酬を貰いたくないなら、行かなくても大丈夫よ?」

「それは困る」


 俺達はそんな会話をしながら、王都にあるギルドに向かって歩き出した。




「はい、お疲れさまでした。今回のCランクエスト『ゴーレム打倒』をクリアなされたので、六万ハーツ。山分けの場合お一人さま二万ハーツになりますが、如何なさいますか?」

「山分けで良いわよね?」

「ああ」

「大丈夫ですよ」

「かしこまりました。では、こちらの方にカードを渡して頂き、少々お待ち下さい…………はい、完了です。カードの方に情報を送り込んでおいたので、後ほどご自分でご確認ください」


 そう言って、依頼達成を知らせる窓口のお姉さんは俺達に頭を下げた。このギルドは一体、幾つの窓口があるのか。中には無駄な物もありそうな気がしてならない。


「あ、そうそう。皆さまはCランクのパーティーでしたよね?」


 すると、その窓口嬢は何かを思い出したかのように、そんな事を訪ねて来た。俺達は黙って頷くと、一枚の紙を渡される。


 そこにはこの世界の文字で緊急と書かれていた。俺は今日までに三つ覚えた簡易魔法(シンプルマジック)の一つ、解読を使って読み始めていた。


「えーと、なになに? C級以上のパーティーのみ参加可能。王都から遠く離れた南の山にてAランク魔物ポイズンスネークが出現した模様です。これを直ちに打てる方は至急ご連絡を下さい。報酬は五十万ハーツとなります……だってよ」


「どうです? 参加なさいますか?」


 窓口嬢のそんな言葉に俺達はそろって苦い顔を浮かべた。


「報酬が魅力的だからそうしたいのは山々なんだけど……」

「はい。まだ、Aランクを相手に出来るほど強くありませんものね」

「それに俺はDランクだからこのクエストの参加資格はないしな」


 みんな口々に参加できない口実を言って、その緊急クエストを遠慮する。Cランクですら充分と言える戦闘態勢を取れていないのに、いきなりAランク魔物など相手に出来る訳がないだろうに。


 だが後にこのポイズンスネークが俺達に牙をむく事など、今は知るよしもなかったのだ。


「分かりました。では、次の成功のご報告をお待ちしております」


 そう言って、彼女は再びこちらに頭を下げた。俺達はお礼を言って、その場から離れると、次のクエストを探しに別の窓口へ向かうのだった。

 キャラクターを連携させて戦わせるのは初めてです。下手くそですみません……

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