ベルトコンベア
ここはどこ?
みずきはかごの中で仰向けで寝転がっていた。
上体を起こし、かごの外に目を向けるとそこは物流倉庫のような空間が広がっていた。箱がベルトコンベアで流されている。ただ一つ物流倉庫と違うのは
そのかごにはみずきと同じように人間が乗っていた。
「ようやく目を覚ましたのね、あなたも」
後ろから声が聞こえた。振り返ると同じくかごに乗る女性がいた
「え?あなたは?」
「私はかえで。あなたよりずっと前に目を覚ました者よ」
「目を覚ましたって、ここはどこ?」
「年齢を気にしだしたら目を覚ます場所よ。ねぇみてごらん」
かえでは手を外に向けた。
「私達は年齢のベルトコンベアに流されているのよ。ほらもうすぐ40歳の地点よ」
40歳という言葉にみずきはビクっとした。
「そんな…嫌だ。40歳になんてなりたくない!」
「じゃあ出たら」
「え?」
「そのかごから」
「じゃあ…出てやるわ!」
みずきは立とうとした。だが
「痛!」
何もないはずなのに頭をぶつけた。
「どういうこと?」
戸惑うみずきを見て、かえではクスッと笑い
「ごめんごめん、実はね、見えないバリアがあってこのかごからは出れないのよ。私達はただベルトコンベアで流されるだけなのよ」
「そんな…」
「ゆっくりと、だけど着実に運ばれるのよ、このかごは」
「……よし」
「どうしたの?」
「かごごとベルトコンベアから脱出してやる!」
みずきはかごの側面に向かって体ごと思いっきりぶつけた。
「バカなことはよしなさい、みずきさん」
「嫌だ。わたしは40になりたくない、絶対に!」
「なんで?」
「そんなの決まってるわ! 若さこそ正義だからよ!」
バーン
かごがベルトコンベアから外れた
そのかごは漆黒の底へと落ちていく。
みずきは目をつぶった。
ーーー
再び目を開けると見慣れた天井が見えた。
「夢?」
みずきは上体を起こし、カーテンを開けた。
空は曇り空だった。
そうか私、後1週間で40歳か……
こんな夢を見るということは、意識してたんだ、私。年齢のことを。
みずきはベットから出て、寝室を出た。
枕には一粒の涙がこぼれにじんでいた。