それ、悩みか?
公園のベンチに座り、ため息ばかりをつく青年がいた。そこに1人の長老がやってきた。
「どうした青年よ」
「ああ、老人、実は悩みがあって」
「ああ、老人?……まぁ良い、その悩みとは何じゃ?」
「俺、今年で20なんだ……それで今年生まれた子供は20年後、20歳だ。その時俺は40歳だよ? おっさん扱いされるよ。今年生まれた子に!」
青年は頭を抱えた。
「それで悩んでるのか」
「大きな悩みだよ!」
「はぁ……」
老人はため息をついた。
「おぬしの悩みは贅沢じゃ」
「贅沢?」
老人の一言に青年は顔をあげた。
「20年後、わしは生きてるかどうか分からない。だから青年よ、生きてることに感謝せよ」
「生きてることに?」
「そうじゃ」
「……分かったよ、老人」
「うむ……」
老人は腕を組みしばらく黙った。
「どうしたの、 老人?」
「うん、やっぱ気になるわ、その言い方」
「言い方?」
「老人だよ、老人。おぬしのせいで地の文まで老人に変わってるよ」
「地の文?」
「ああ、それは良い。とにかく、長老と呼んでもらって良い? 老人はやだなぁ」
「分かったよ、老人ー」
「じゃなくて?」
「はいはい、長老」
青年のその言葉を聞き、長老はゆっくりとうなづいた。




