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夕暮れブランコとサラリーマン
夕方、サラリーマンの男が公園のブランコに乗って遊んでいた。そこに少年が近づいてきた。
「おじさんなのに、ブランコに乗ってるなんてダサッ!」
「サラリーマンになると乗りたくなるんだよ、少年」
「なんで?」
「童心に戻りたいからだよ」
「子供に戻りたいってこと?」
「ああそうだよ。人間関係がシンプルだったあの頃に戻りたいもんだ」
「おじさん、それは違うよ」
「えっ?」
男は足を地面につけ、ブランコを止めた。
「子供も、子供なりに人間関係に悩んでるんだよ。おじさんは過去を美化してるだけ」
「過去を美化してる……?」
「じゃあおじさんバイバイ、家に帰るよ」
少年は立ち去った。
「そうか俺は今までずっと過去を美化してきたんだな……」
夕焼けに照らされた男は動かなくなったブランコの鎖を静かに見つめていた。




