報われなくても僕らは進む
たけしは、合格発表の掲示を見上げながら苦笑した。
──人間、本当に絶望すると、笑ってしまうんだな。
そんな言葉が、ふと頭をよぎった。
この数カ月、たけしは必死に勉強してきた。
休み時間も机に向かい、誰よりもノートを開いていた。
「人よりもやらなきゃ」
その一心だった。模試の成績も良くて、友達から「お前なら大丈夫だろ」と言われた時には、心の中でガッツポーズをした。
なのに、落ちていた。
「明日から、どう生きていけばいいんだろう」
たけしはつぶやいた。
進学先がないわけじゃない。滑り止めの高校には受かっている。
けれど、そこに通う自分の姿がどうしても思い浮かばなかった。
偏差値が低い高校。荒れているという噂も聞く。──そんなの、ただの偏見かもしれない。でも、怖かった。
「あー、もう、どうとでもなれ!」
たけしは叫んだ。考えるのが嫌になった。すべて投げ出して、どこかへ逃げてしまいたかった。
ベンチに横たわり、目を閉じる。
風の音と、遠くの自転車のベル。
少しして目を開けると、夕焼けが空を染めていた。
「……もうこんな時間か」
腕時計を見て、たけしは深いため息をついた。
時は流れる。決して逆戻りはできない。
「何を嘆いても……明日は来るんだな」
自分に言い聞かせるように言って、たけしはベンチから立ち上がり歩きだした。
涙は頬を伝っていた。
それでも、足は止まらなかった。