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電車
冬の電車の中で、2人の男性が席に座って話をしていた。
「そうか、次の駅で降りるんだな」
「そうだな……乗り換えるよ。だって次で降りないと終点まで行ってしまうからな」
「終点がどこか分からないもんな、この路線は」
「……うん、まぁ乗り換え先の路線の終点も決まってはいないけどある程度予想はできるからね。少し安心できるかな」
「そうだよな、安心できるよな……」
そのあと、しばらく沈黙が続いた。
その沈黙は車内アナウンスで破られた。
〜夢見る線、ご利用いただきありがとうございます。次はあきらめ駅、あきらめ駅。堅実線に乗り換える方はこの駅で降りてください〜
アナウンスが終わった後、電車のスピードはだんだんと落ちていきやがて、ホームに止まった。
ドアが開く
「じゃあ頑張れよ、テレビでお前が芸人として活躍してるのを楽しみにしてるからな」
「ありがとう」
あきらめを選んだ男は電車から降りた。
降りて数秒後、電車のドアはしまった。
電車はまた動き出す。
1人電車に残った男は窓の景色を見た。
空はいつのまにか雪が降っていた。
男はだんだん眠くなり目をつぶった。