過去の栄光ガム
公園のベンチでサラリーマンが1人座ってガムをかんでいた。そこに遊んでた少年が近づいてきた。
「おじさん、過去の栄光ガムかんでるの?」
「そうだよ」
「何味?」
「『会社で新人賞』味だよ」
「えっちょっと待って、おじさんそのガムいつからかんでるの?」
「かれこれ数十年前からかな。このガム噛んでると落ち着くんだよな」
「そんな噛んでるならもう味ないんじゃないの?」
「そ、それはないけど…」
「他のガム作れば良いのに」
「もうこの年じゃ作ることなんてできないのさ……」
「へぇ、そうなんだぁ。じゃあ僕も!」
と言って少年はポケットからガムを取り出して口に入れた。
「うん!いい味!」
「少年よ、それは何味だ?」
「『こないだの運動会でかけっこ1位』味だよ」
「そうか……」
「だけどもう良いよ、捨てる!」
少年はガムを口から出し、近くにあったごみ箱に捨てた。
それを見て、おじさんは驚き、少年に尋ねた。
「もう良いのか? せっかくの栄光ガムだぞ?」
「良いんだ。また明日栄光ガム作れば良いんだから。それにいろんな味、味わいたいしね。」




