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【観察】

今頃は、外はもう夜になっているのだろう

どうせなら映画一本とかみておけばよかったな…

俺はそんなことを考えながらこの地下駐車場を歩いていた

先ほど飲んだアーモンドウォーターの効能なのか、来た時よりかは俺の目、耳は冴えていた

ピチャピチャと音を立てながら、この静けさのある場所

上からは時折滴る水で頭が濡れるのを気にも留めず、ここにいるかもしれない存在(エンティティ)を確認するために。この目で捉え、絶対に死なないようにそう覚悟を決め歩くも…

「本当に終わりが見えない…」

さっきの地獄同様、永遠と思えるこのコンクリート

さっきのは入り口(ロビー)に過ぎず、まるでここからが本番というように思えてくる

懐中電灯で目の前を照らし、時折起こる短い停電に心臓の鼓動が早くなるのを確認しながら、その時はジッとしてやり過ごす

もう何回目だろうか…本当に心臓が持たなくなる…

毎回、目を瞑ってしまう。怖いよう

ジジッ…

音がなり、そして復旧し、蛍光灯に電気が走る

この状況に少しイライラしていた

目を開けてみると左側の端に上に登れるような坂道を見つける

「…行ってみるか」

俺は坂道まで少し早歩きで行く。また視界が悪くなると困るからな

坂道を上がるときは、すこし屈みながら上にいるかもしれないやつらに見つからないように…今は俺が黄色い服を着てて、周りは灰色のコンクリート

あの時みたいに、カモフラージュはできない

ズリズリと這いずるように、坂道を一歩一歩登る

今、聞こえるのは俺の早くなる息の音、そして水の滴る音

上にはいない…のか?

坂道と2階の境目から覗く

…あれは、幻…じゃないな

いる…いるな…

上にいたのは、白い丸と横に傾いた三日月を空中に浮かべたやつ…

白い部分を目として、傾いた三日月を口とすると見えてくる。笑ってるように

笑ってる?ハウラーに続き気色悪いやつしかここには存在しないのか?!

マジで貴様らは馬糞にでも顔を突っ込んでろよ!

そう脳内でやつらに罵声を浴びせる

走り抜けてみるか?ホバーボードがあればいけるが、今はない

いやここは、一旦観察しよう…

もしかしたらあいつらみたいに武器を生成するかもだからな…

必死にあいつらに気づかれないよう、注意深く周りを見てから後ろに一歩、また一歩と這ったまま下がる

壁に背を預けて、立ち上がり奴らを見つめる

笑ってる…スマイル…スマイラーでいいか

目を細めて観察してみるも、その場からは動かない。

スマイラーは、蛍光灯の光のところで立ち止まっていた

もしかして動かないのか?それなら好都合だ…今のうちに走りぬけてやる!

しかしここで運がないのが俺だ。毎回そう思う

停電だ。本当にうんざりす…

スマイラーが今、目の前を動いている

というか!何体いるんだ?!

目の前には、無数のスマイラー。数えきれないほどの笑みを浮かべて

俺は息を潜め一旦立ち止まった。懐中電灯を強く握りしめて。奴らが引くのを待った

ギロッ!

もしかして、こっちを見られてる?!

スマイラーと俺の目は完全に合っている

一触即発の状況下

しかしこういう時は、パニックになって大声をと余計に事態を深刻にさせる

いつものように目を瞑れず、俺はジッと目を合わせるしかなかった

ジリジリとスマイラーがゆっくり近づいてくる

俺もそれに合わせて、後ろに下がるもすでに壁に追い込まれた

クソっ!早く終わってくれ!頼む!

ジジッ…

電気が復旧することを伝える音が鳴った瞬間、スマイラーは何事もなかったかのように定位置の蛍光灯の瞬時に下に戻った

「は…はぁ?」

思わず声が出てしまうとっさに声を塞ぎ、あの呪文を自分に掛ける。俺は壁だ!と

幸い、スマイラーは気づいていないようだ

でも、良い手がかりをゲットした

光があるときはそこに集合し、ないときは動き始める―――

つまり、光に集まる性質が奴らにはあるが、そしておそらく耳がないのだろう

先ほど俺が漏らした声も奴らには届いていないからな

よし…とにかく今のうちまでに動こうそして、懐中電灯は消しておこう

もし何かあっても、2本ほど予備がある…あまり使いたくはないが

すこし駆け足で壁際のいき、壁に沿いながら早く早く進む

時折起こる停電もピタッと足と懐中電灯を止めて、やつらがこないよう願う

そして復旧したら、また走り出す

大丈夫だ…今回は、前みたいにはならない グシャッ

…はず

嫌な音が聞こえた。またか?また俺はやってしまったのか…?

足元を上げ、そこには卵が踏みつけてあった 

グチョっと黒い液体がねばりついていた

でも大丈夫、やつらは耳が聞こえて…

後ろを振り返ると、スマイラーはジッとこっちを見続けていた

…あぁ…完全にこっち見てるね

足に力を入れて、踏ん張る用意をすると。同時に駆け出す

タイミングが重なりジジッと音が鳴る

          イェエヘヒャヒャハヤ!!

後ろから、声が聞こえ始める。見つかったことを仲間に知らせんのか…?!

まぁそんなことはどうでもいい!

とにかく、とにかく

俺は、懐中電灯に電源を入れて、それを

投げる!

カタンッタンタン…

後ろをちらと見れば、その光につられてスマイラーが全員引き寄せられる

「はははッ!ほれ見ろ馬鹿垂れがッ!!!」

「光につられちゃうことはわかってんだよ!!ははは!!!」

そんな罵声を浴びせながら勝利を確信し、逃げ回ってやる!

今のうちに遠くにとお


ドンッ!

俺は暗闇で目の前の壁に気づけず、ぶつかってしまった…?

いや、

「なんだよこれぇ!!!」

俺は壁にめり込んでいる?!!

は?どういうことだ?!

目のまえには、虹色で頭がおかしくなりそうな、まるでヤクを使ったときみたいな

そんな光景が目に広がり、頭が痛くなり

倒れるように頭からそこに落ちてしまった

半ば外?にあった下半身もつられて、落っこちてしまう

不可思議な空間に、戸惑いながら必死に抵抗する

移動しているのはなぜか感じるが、どこに行くのかもわからない

しかし体が動かそうにも、動けず代わりに来るのは体が引き延ばされ引きちぎられそうになる感覚、どれだけ動いても何もできず、ただ待ち受けのは拷問だった

速度を上げていく、徐々に早くなっていく

そして体がだんだんと同化していってく、壁と一体化しているの…か…?

だんだん何も考えられなくなっていく

いたい、くるしい、たすけて、いたい、うぅ、うぁあ

「うわああぁぁぁぁああ゛ああ゛ぁぁぁ゛ああああ!!!」


ドサッ!

そして、どこかへと壁に放り出された

視界がくらくらと、周り目の前が朦朧する

「…い…どこだ…?ここ…は…」

「パイプ…?あぁ…いたい…」


俺はそこで力尽きてしまった

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