答えは紙飛行機
現代の科学は金と権力に媚びた都合で虚構の世界を創り論じ、洗脳された民衆は本来あるべき世界が見えなくなっている。
水の表面張力も、君達はコップの飲み口より少し盛り上がる程度だと思ってるんだろ?
けど、そのコップ程の小さな妖精が持つ更に小さなコップなら、表面張力でコップよりも大きな水の玉を乗せる事だって出来るんだ。
普段から雨上がりの葉に乗る水滴を見てるじゃないか!
そおさ、本当は君にもボク達の住む世界は見えているんだ!
「おはようポポロ」
ボクの名を呼ぶ彼女は女の子しかいない学園の生徒で、この森の住人だ。
「やあやあ、今日も大きな瞳だね」
彼女はボク達妖精が見える稀な子だけど、人間てのは恋だ愛だも色々大変みたいだ。
少し前にはデートすると喜んでいたのに、最近は辛く苦しそうな顔をしていて、今は何を食べたか彼女の友人が倒れてる。
「ねえ、森の外ってどんな森が広がってるんだい?」
「森の外に森は無いわ。あ、そっかポポロは羽が無いから学校の外を知らないのね」
そう言って彼女が手にした静電気まみれの機械に映し出されるプールよりも広い、海とか言う水の世界。
「あ、授業が始まっちゃう。また今度!」
「ちょ、私何かそこに妖精みたいのが見えるんだけど……」
「なら大丈夫。肩を貸すから立って」
彼女が友人と去った後、ボクは興奮したまま物知りな犬のマローン爺さんを訪ねた。
「海を観に行くって、遠い東の海まで羽も無いのに歩いて行く気かい?」
「東か。大丈夫、空を飛ぶイメージさえ掴めば何とかなるさ!」
それから数日、彼女にクッションを借りて高い所から色々な方法を試して飛んでみたけど、羽も生えないし飛べるイメージも掴めなかった。
「美味しい! これよ! 絶対これ!」
彼女の友人が倒れる事なく叫んだその日、不意に上から舞い降りて来た答案用紙に答えを見付けた。
マローン爺さんは危ないからって引き止めたけど、ボクには確信があった。
勇気があれば飛び出せる!
夜中に何度も何度も練習して朝になり、友人に見送られる彼女がお弁当を持ってデートへと向かう中、ボクは森の広場から遂に飛び出した。
空は思っていたより少し寒くて、外の世界は寒々しい灰色だった。
飛び方を体が覚えて、太陽の方へと”期待“を胸に紙の折り目を傾け向きを変える。
丘の上に回る丸い家を見付けて近付くと、中には彼女が居て目を丸く驚いた顔で笑っていたよ。
ボクは海を観てから森に帰ってマローン爺さんに自慢した。
■あとがき
なろラジ6参加の拙作『極上の観覧車』との連作として読んだなら、印象が変わるかなと考え綴ってみました。
宜しければ☆☆★☆☆の評価下のリンクから三部作の他二作もどうぞ♪
彼女のお話『極上の観覧車』
&
彼女の友人のお話『被験者Hお弁当生活の告白』
(((((゜∀。)))))アレレレ…と、繋がる話に世界観が広がる感覚をお楽しみいただけたなら幸いです。