廃れた遊園地跡
いつからだろう。もう思い出せない。微かに思い浮かぶ映像は厳しくもいつだって導いてくれていたお父さん、慈愛に満ち溢れて見守ってくれていたお母さん、私なんかと比べ物にならないくらいの天才で甘え上手な自慢の妹と皆で遊園地に向かっている様子。それがいつの話でその後どうなったのか覚えてはいない。きっとこの空間に長く居続けたせいなのだろう。そもそも時の流れなどわからないが……
多くの子供連れ家族やカップル、友人達を迎え入れた夢のような遊園地は過去の記憶であり、既に廃れてしまったこの遊園地には肝試しを目的とする人たち以外は誰も訪れなくなってしまった。ここのお偉いさん達は欲にまみれて次々にお金をつぎ込んでしまい、膨れ上がる借金と責任転嫁により頓挫してしまった。誰に、何処に責任があるのかがわからなくなってしまい、取り壊すこともできずに今まであり続けた。
「さーてさてさて、やって参りましたよ!リスナーの皆様待望の呪われた遊園地跡でございますよ」
ドローンのような機械がカメラの役割をしているのだろう、真夜中の不気味な静寂の中を陽気な声で話し出す男の前を飛んでいる。男は最近話題の配信者、リスナーの希望を聞き、各名所およびスポットに足を運ぶタイプの配信者であった。
「えー、ではね。遊園地について長々とご説明したいところではありますが時間の問題上割愛させていただきますね。それとね、ここは持ち主と言いますか責任者がいないとはいえね、勝手に入らせていただきますので、まずは……」
話すのをやめ、入り口に向かって一礼をする。
「挨拶は大事ですからね、幽霊さんが何処で見ていらっしゃるかわかりませんのでね、では改めてしゅっぱーつ」
男は臆することなく遊園地のゲートをくぐるのであった。