ロマンを求めて
あるダンジョンにて、二人組の冒険者が警戒しながらロマンを求めて進んでいた。
一人はビキニアーマーを着た豊満な肢体を持つ戦士の女性、もう一人は神官服を着た儚げな聖職者の男性だ。
「何でないのよ!」
「まあまあ…」
イライラして声を荒らげる女性を、男性がなだめる。
この二人はどっちも求めるものがあり、こうやって各地のダンジョンを探索していた。
「何でないのよ!エロトラップ!触手は!?媚薬部屋は!?」
「エロトラップなんて創作だけだよ」
女性は天井から落ちてきた鉄球のトラップを怒りの拳で粉砕しながら叫んだ。男性は呆れたように肩をすくめる。
ちなみに女性がビキニアーマーを着ている理由はそのほうがエッチだからである。
「仲間も紳士だし!?襲われないわ!」
「純潔の誓いを立てているので…」
男性は相変わらず残念な女性だなと思ったが、口には出さなかった。慣れている。
「あなたも同士でしょ!?」
「巻き込まないで」
男性は女性に回復魔法をかけながら、きっぱりと答えた。
「裏切ったの!?じゃあ拠点のあなたのベットの下のサキュバスエロ同人は何なのよ!?」
「ぶふぅっ」
男性は秘密がばれたことに驚いて噴いた。
女性の方はオープンだが、男性はクローズだったのだ。
ちなみにダンジョンにはサキュバスを求めて探索している。
サキュバスに襲われて純潔を奪われるのが目標である。聖職者になった理由もそのほうが興奮するからだ。
同士だろこいつら。
そんな二人に襲い掛かる魔の手。粘液がてらてらと輝く触手が迫る。
少し跳ねた粘液が女性の皮膚にかかるとジュッと音がした。
「ああもうこの触手は体まで溶かすし…服だけ溶かしなさいよ!この裏切り者!!」
「…障壁かけますね」
男性はまだ衝撃から立ち直っていなかったが、冷静に女性に障壁を付与してその身を守る。ちょびっと傷ついた皮膚も治癒する。
女性は怒りのままに拳を振るう。触手はその猛攻に何もできない。
グロ同人に出てきそうな触手は、何の痛手も与えられずに倒された。
その後も、二人は難なく隅々まで念入りに探索し、ダンジョンの奥までたどり着いた。
「このダンジョンも外れね!」
「まあ、確かに」
ダンジョンだってこんな欲望で踏破されたくはなかっただろう。トラップはかなり致死性が高く、モンスターも手強かったはずなのに。今まで誰も踏破できなかったのに。
二人は報告のために外へ戻って行く。
後には虚しそうに黄昏た雰囲気のダンジョンだけが残された。