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剣士と勝者
ある国に、一度も負けたことのない剣士がいました。
その剣士は誰とも話しませんでした。
稽古中も一人、戦争に参加しているときも一人。
しかし、剣士は出陣した戦場で必ず勝利を挙げました。
腕に自信があった剣士は、謀反を企んでいました。
領主よりも自分の力のほうが強い。
統治者にふさわしいのは私だ。
稽古場で剣を振りながら、そう考えていました。
剣士はある時、謀反を起こそうと考えている少年に会いました。
剣士は、今の領主が死んだ混乱のうちに謀反を起こそうと、少年と結託しました。
そして7年の歳月が経ち、領主が死にました。
剣士は段取り通り、領主の子息を殺しました。
少年は近衛兵を連れて、領主の子息の部屋の入口に立っていました。
剣士は老衰で力が弱っていたので、すぐに近衛兵に捕らえられてしまいました。
剣士は処刑されました。
剣士は必死に助けてくれるよう叫びましたが、だれも信用してくれませんでした。