領主と孤児
前にほんの少しだけ小説を投稿していましたが、だいぶ期間があいて操作をほとんど忘れてしまったので、テストで投稿してみます。
とある海沿いの街の領主をしている男がいました。
その男は疑り深く、どんな人のことも一度は疑ってかかりました。
腹心が進言するときでも、妻が何か助言するときにも
必ず複数人の意見を求めてから行動に移すのでした。
街には、先にあった戦争で戦渦に巻き込まれ、孤児があふれていました。
それを気に病んだ領主は、城の近くに孤児院を建てることにしました。
その孤児院に連れてきた中で、一際聡明そうな子供がいました。
領主は、その子供を城に引き取り、まるで自分の息子かのように育てました。
やがて孤児は領主の下で成長し、立派に成人しました。
そのころ領主は自分の実の息子を跡継ぎに決めました。
孤児だった青年を跡継ぎにと考える者もいましたが、青年はそれを断りました。
領主はその言葉を疑いませんでした。
領主が死んだ後、その息子は何者かに殺害されました。
孤児だった青年は領主の仕事を引き継ぎました。
孤児だった領主は、晩年こう語っています。
「なぜ、彼は私の言葉を疑わなかったのか。私はこの国の人間ですらないのに。」




