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第2話 異世界は難しい?

「もう大丈夫ですよ」


女神の声で閉じていた目を開ける。



「ん、、わぁ、すごい...」


目の前には見たこともないどこまでも続く草原が広がっており、優しい風が頬を撫でるように吹いており草木を揺らしている。


「すぅー、はぁー」


深く深呼吸をする。

空気が美味しいと感じたのは初めてだ、

田舎の祖父母の家に訪れた時なんかよりももっと明確に感じる。



「私の声、聞こえてます?」


「え?あっはい。聞こえてます!」


女神様の声が聞こえるがどこから喋っているのか全くわからない、

強いて言うなら頭の中に直接語りかけてきているようだ。


「今、杖を通して話しています。

ですがいつ接続が切れるかはわかりません、

なのでとりあえず近くの街まで案内しますね」


「わかりました、お願いします」



「簡単な質問なら街へ案内する途中に答えますよ、

とりあえずまっすぐ歩いてください、そうしたら街とそこへ続く道が見えるはずです」


女神様の言うとおりに歩くと段々と奥の方に街が見えてきた。

遠くからでも分かるくらい大きな街のようだ。

そしてその街へと続く道なりに歩いていく。



「えっと...簡単な質問...

あっ、そういえばこの服」


この世界に来てから自分の服が変わっている。

まるで魔法使いのような大きな帽子に少しゴワゴワしたポケットの多い服、丈夫そうなマントにスカートとスパッツ、そしてまたまた丈夫な靴。


「元の世界の服装では目立ってしまいますし、それに旅には不向きですから」


「こんな服装してるって事は私魔法使いなんですか?」


「え?そうなんですか?」


「あれ?じゃあこの帽子とかって?」


「旅人の基本装備をあなたのサイズで作ったものなのですが。

あなたの世界ではその帽子を被っている人は魔法使いなんですか?」


「えっと、そう言うイメージはありますね」



なるほど、

どうやらこの帽子のイメージが私の世界とこの世界では違うようだ。

もしかしたらこう言った文化や常識の違いが多いのかもしれない。



「ていうか、魔法ってあるんですか?この世界」


「ええ、ありますよ。

みんながみんな使えるわけではないですが」


「どうやって使うんですか!?」


「ええっとぉ...今はちょっと、街についてから教えますから」


「わかりました...」



良かった、もし魔法がないなんて言われたら私、剣を片手に魔王に挑まなければならないところだった。そんなの出来るわけない。

いや、まだ魔法使えるようにならないといけないんだ。

先は長いな...



でも魔法を使えるようになったら「彼」みたいになれるのかな.....



と、そんなことを考えていると。

パカラッパカラッと蹄の音とガラガラと馬車のような音が聞こえてきた。


後ろを振り向くと荷物を積んだ馬車に乗った御者が二頭の馬を操って道なりに向かって来ている。


私は馬車が通れるように道を開けて歩く。


すると御者は少し速度を落とし私と並走し、話しかけて来た。


「やあ、お嬢ちゃん。

ファルクスに向かっているのかい?」


「ファルクス?」


「言うのが遅れましたね、今私たちが向かっている街の名前です」


「ああ、そうなんだ、

えっと、そうなんです。今ファルクスに向かっていて」


「よかったら乗っていくかい?

お嬢ちゃんくらいなら座れるくらいのスペースはあるよ」


「え?本当ですか?じゃあ...」


「駄目ですよ」


急に女神様が引き止める


「ええ?どうしてですか?」


「お金取られますから」


「え?」


「?普通のことじゃないですか」


どうやら、ここでも世界特有の違いがあるようだ。


「お金は一応ありますけど多くはないんですから、無駄遣いは駄目ですよ」


正直、慣れない服装で歩いてるせいで少し疲れた。


「....わかりました」


私は渋々了解した。


「お嬢ちゃん誰と話してるんだい?

それより乗るの?乗らないの?」


「あ、大丈夫です、歩いて行きます」


「そう、気をつけてね」


御者は最後に軽く会釈をして先に行ってしまった。



「女神様の声、他の人には聞こえないんですね」


「ええまあ、杖を通して話してるので杖を持っている人にしか私の声は聞こえません」


「それより、本当にお金取られるんですか?

あの人そんなこと一言も言ってなかったですよ?」


「何かしてもらったら感謝としてお金を渡すのは当たり前のことじゃないですか」


「え?あっ、そう言う事ですか...」



なるほど、つまりお金を取られるというのはチップの事だったのか。

日本にはチップの文化が無いから全然考え付かなかったがこの世界ではチップは一般的なものらしい。


「この世界に慣れるまで時間がかかりそうです」


「私も精一杯フォローしますから、少しずつ慣れて行きましょう」

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