忘れられない
去年の冬のから何も変わらない僕の話
内容はないです
ふと、1年経ってしまったことが恐ろしくなった。
友人の紹介してくれたゲームのキャラクターの誕生日が彼女と同じだった。ただそれだけだった。
でもその数字を見た途端、心臓が10分の1位になったんじゃないかと言うくらい不安になって、目に膜が張られた。
最近は彼女のことを思い出すこともそれなりに少なかったと思う。
それよりも、目下の問題が脳の大部分を占めていたからだ。
忘れていってしまうことは悲しいし、忘れたい訳では無いけれど、きっとそれは全くもって健やかなことであった。
ある日見た夢が忘れられない。
彼女が生きているという夢だった。
僕は端くれ中の端くれではあるが、創作者だ。
自分の葛藤を消化するためか、彼女のことを忘れないように、覚えていられるようにするためか、僕は彼女を元にして一人の少女を構築することにした。
文にすると非常に重く、気持ちが悪い行為であるが、僕にとってはそれが妙に妙案に見えたのだ。
少女を深く作り込むほどに彼女の影を追うことになる。
だからだろうか、夢に彼女が出てきたのだ。
夢で僕は大学にいた。
講義の部屋に入ったとき、彼女と目が合った。
大きな教室の真ん中くらいのところに、たくさんの生徒たちに埋もれながら、彼女は座ってこちらを見ていた。
僕は夢を夢だと分かったことがない。
だからこの時も、何も違和感なんて感じなかった。
僕は見た瞬間嬉しくて嬉しくてたまらなくなった。
彼女の隣には、彼女訃報を知らせてくれた、彼女の友人が座っていたから、僕は彼女の真ん前に座った。
なぜこの学校にいるのか、なぜ生きているのか、訃報が間違っていたのか、会えて嬉しい。そんなことを思うだけ言って、彼女の手を取って。
あぁ、生きていたのだから、あの少女は許可なしで生んではいけないなと思って、生まなくていいんだと思って。
すごく楽しかった。彼女の体はあたたかかった。
ふと目を覚ました。
それだけはっきりした夢だったから、最初は酷く混乱した。
目覚めて、枕を見つめて1分して、それが夢であったことを自覚した。
彼女のいなくなったメッセージを開いた。
画面に水滴がぼたぼたと落ちて、次に嗚咽が聞こえてきた。
夢の中で、あの時、僕は世界で1番くらいに嬉しかった。
一目散に走っていくくらい嬉しかった。
自然と笑顔になるくらい嬉しかった。
涙が出るくらい嬉しかった。
だから、その分悲しくて悲しくてたまらなかった。
彼女の訃を聞いた時くらいに涙が止まらなかった。
この夢が、僕は忘れられない。
あの時の彼女の顔も、僕が感じたよろこびも。
思い出す度に涙が出るくらいに忘れられない。
彼女が死んでから1年が経った。
彼女との間が開いていく。
永遠に、大人にはなれない彼女と、ずっとずっと大人になっていく僕。
でも、ずっと僕の方が子供で、情けない。
僕は、端くれ中の端くれだけれども、表現者だから、全て全てここに記すことにした。
これでもっともっとこのことは忘れられないものになった。
夢の中でいいから、彼女に会いたいと願うことは、いけないことだろうか。
情けない文章を読んでいただきありがとうございました。
ついでに友達が死んだ話を読むと前後がわかるんじゃないかなと思います。