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3 愛は身体の仕事です

 自然と使うべき魔法が頭の中に浮かぶ。


「フリーズ」


 私の一言で男2人の動きがピタッと止まった。


「な、なんだ」

「動けねえ」


 ゲームでおなじみ動けなくする魔法だ。

 さて問題はここから。

 この2人をどう料理しよう。

 ただボコボコにするのでは駄目だ。

 正義の味方にふさわしくない。


 ならどうするべきか。

 結末としてはこの2人が更生するのがベストだ。

 しかしお説教は効果が無さそうに思える。

 2人とも頭が悪そうだから。

 私がどんなに素晴らしい説教を行ったとしても、この2人には理解できまい。


 ならどうしようか。

 そう思ってた私に天恵のように名案が思い浮かんだ。

 

 そうだ、愛だ。

 愛は全てを救う。

 ここは性欲で異性を襲うなんて動物的な愛では無く真実の愛を教えるべきだ。

 それこそが天使の力で変身した正義の味方らしいだろう。

 幸い私は真実の愛については研究を重ねている。

 今日池袋まで遠征して薄い研究書を購入してきたぐらいだ。


 こいつらは頭が悪そうだから言葉で教えるのは不可能だろう。

 だから身体で教えるべきだ。

 必要な魔法は例によって頭の中に勝手に思い浮かぶ。

 よし詠唱だ!


衣装脱装(クロス・アウト)!」 


 動きを止めたままの男達の服がひとりでに脱げる。

 脱いだ衣装が自動で折りたたまれるのはサービスだ。


「な、何なんだよ」

 

 腐った食パンマンの方の震え声。

 心配しなくていい。

 私は君たちに真実の愛を教えてやるだけだ。

 言葉でわからないなら行動で。

 頭脳でわからないなら身体で。


「オ●モトアーマー装着!」

 

 大腸菌が入ったらまずいしね。

 衛生には気をつけましょう。

 そういう事で魔法でゴムの鎧を召喚し装着させる。

 薄いことで有名な某一流メーカーのゴム鎧だ。

 覆う部分は一部だけれど感謝するがいい。


 それでは仕上げだ。


「真実の愛を知るがいい。愛は身体の仕事です!」


 腐った食パン男が歩き出す。


「お、お、おまえ何で動けるんだよ!」

「止まらねえ、身体が勝手に動くんだよ!」


 それは私が魔法で導いているからだ。

 食パン男はぐるりと回り込みカレーパン男の背後、尻に密着するくらいの場所で停止する。


「な、何でそこへ行くんだよ」

「わからねえよ。身体が自由にならねえんだよ」


 心配する事は無い迷える子羊よ。

 私が魔法で導いてやるから。

 それでは仕上げだ。


「勃てよ国民! 撃て!」


 食パン男は自分の尻を大きく後ろに振って、そして一気に前へと突き出した。


「ウホッ!」

「アッー!」


 ここまで来ればあとはただやるだけ。

 片方は腰を振り続け、もう片方はただ未知の痛みに耐えている。

 痛みを超えて真実の愛を知るがいい。

 そうすれば女性を襲うなんて事は二度としなくなるだろう。


 ◇◇◇


 2ラウンド、攻守交代もさせてきっちり真実の愛を教え込んだ。

 私? 私はただ魔法で彼らに教授するだけだ。

 私は真実の愛を既に知っている。

 だから今更参加する必要はない。


 ただ一応後学のため資料映像は撮らせていただく。

 いまいち綺麗な裸ではない。

 しかしだからこそ感じる趣がある。


 しっかり真実の愛を実戦し合った結果、抱き合って倒れた2人を見て私はうんうんと頷く。


「うむ、いい仕事をしてしまった」


 そんな私をジト目で見上げる視線が1匹。

 白とピンクのマスコット風、自称天使だ。

 なお被害者になりかけていた女性はとっくに逃げている。

 本当はじっくり今の愛を見て欲しかった。

 でもこの辺は治安も悪いし仕方ない。


「何か僕、人選を間違えたような気がするよ」


 聞き捨てならない事をぼそっと漏らす自称天使。

 いや君、それは違う。


「これであの男達は同じ間違いはしないよね。つまりこれこそが正義の味方のとるべき解決手段だったのよ」

「うーん……」


 自称天使はまだ悩んでいる。

 悩むとハゲるぞ。

 そう教示してやろうかとも思ったがやめておいた。

 それもまた生き方の一つだと思うから。


「それでは帰ろうよ。事案も無事解決したしね」

「本当にこれでいいのかな」


 自称天使は悩みつつも魔法杖を振る。

 あっという間に我が家のリビングに到着。

 これはなかなか便利でいい。


 そうだ、自称天使の名前をまだ聞いていなかった。

 やはりここは聞いておくべきだろう。

 今後パートナーとして共に正義のために戦うのだから。


「まだ名乗っていなかったよね。私の名前は美得桃子というの。君の名前は何というの?」

 

 先に名乗るのがやはりエチケットだろう。

 そう思ったからこう尋ねる。


「僕はジュゥべえだよ」

 

 十兵衛か。

 柳生かよと思ったが言わないでおく。

 名前にコンプレックスがあるかもしれないと思ったから。


「それじゃジュゥべえ、これからも正義の為によろしくね」


 親しき仲にも礼儀あり。

 ここはきちんと頭を下げて挨拶しておくべきだろう。

 しかしせっかく私が頭を下げたのにジュゥべえは礼を返してくれない。

 我が母校のマナー講師仕込みである角度60度の正しい挨拶をしたのにだ。


 まあいい。

 私は心が広いのだ。

 正義の味方活動の仲間なのだし許してやろう。

 それでは今後も正義も味方を頑張るぞい!


「本当にこれでよかったのかなあ」


 そんな声が聞こえたような気がしたが気のせいだ。

 そう多分、おそらく、きっと。


(終わり)

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