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モンスターに占領されていた街を解放してから勇者の様子がなんかヘン!どうやら多数のスポンサーが付いて金の亡者になってしまったようです。パーティの仲間たちはそんな彼に付いていけるのでしょうか?

作者: グナ



商業都市ガッポリ、この街はモンスター四天王の一柱『ツヨーイ』に占領されていたが、勇者たち一行に解放されて街はかつての賑わいを取り戻していた。

勇者たちは街の人々の好意で街で一番高い宿に泊まっている。




「それにしてもこの街は随分と羽振りが良いみてぇだな」


宿の食堂で提供された高級なワインを嗜みながら、勇者パーティの一人の盗賊が呟いた


「国の交通の要所だから人が集まるらしいね」

「こんなにもてなしてくれるなんてちょっと気が引けるけど…」


厚いステーキを頬張りながら魔法使いが答える


「まぁ俺たちは街をモンスターから解放したんだ、これくらいのもてなしでバチは当たらねぇって」

「旨い酒は呑めるし()()()は頂いたし最高だぜ!」


そう言って盗賊はキラリと光るナイフを取り出した


「倒した四天王の『ツヨーイ』から奪ったナイフね、魔力が籠められているからかなり強力な代物よ」


「奪うとは人聞きが悪いぜ、落としたから拾ったんだ」


盗賊の妙な拘りにどうでもいいと言わんばかりに魔法使いは小首をかしげるポーズを取る

そんな彼女の態度に盗賊は少し笑みを浮かべ、疑問を投げかけた


「お前は良かったのかよ?」


「何が?」


「戦利品だよ。ツヨーイはナイフだけじゃなく魔女の帽子も落としただろ?拾わなくて良かったのかよ?」


「ああ…私はいいの…」


そう言いながら魔法使いは自分が被っている大きな古ぼけた帽子を触る


「これは恩人のオババ様の形見だから…」


その一言を聞いて察した盗賊は話題を変えるように呟いた


「それにしても勇者のヤツ遅いな、どこほっつき歩いてるんだか…」




ガタッ!


盗賊が呟いたと同時に大きな音を立ててマントを翻した姿の勇者が部屋に入ってきた、手には大きな荷物を持っている


「やー!遅くなってすまない」


勇者はテーブルに並べてあった酒と料理を端にどかして荷物を置き、空いている手前の席に座った


「もう食べ終わるわよ」


「なんだよその荷物?」


よくぞ聞いてくれましたとばかりに勇者は胸を張って答える


「飲み物と武器と防具を持ってきたんだ!」


「飲み物と武器と防具?」


勇者は袋からナイフを取り出す


「これを盗賊にあげよう!」


渡されたナイフを眺めながら盗賊は冷たく返す


「いらねぇ…」


「なんでだよ!」


「ツヨーイから奪ったナイフがあるからだよ。お前が持ってきたナイフは何の魔力もないし攻撃力も低い」


「今『奪った』って言った!」


「うるせぇ!」


魔法使いのツッコミをぶっきらぼうに返しながら盗賊は勇者から貰ったナイフを袋の中に戻す

勇者は戻されたナイフを再び取り出し、盗賊に突きつける


「良い品だから!良い品だから!」


「なんでそんな必死なんだよ!てかあぶねぇ!!」


「ほら、ナイフの刃に穴が開いてるだろ?これ野菜切った時にくっつかないから良いんだよ!」


「テレビショッピングかよ!」


「今ならもう一本つけるから!」


「テレビショッピングかよ!」


「オペレーター増員するから!」


「テレビショッピングかよ!」




「三回同じツッコミはどうかと思うわ…」


「うるせぇ!ダメだしすんな!」


勇者は魔法使いの方を向き直る。次のターゲットを定めたらしい


「魔法使いにはこれをあげるよ」


「これは?」


「野球帽だよ。知らないのか?」


「知ってるわよ!どこの世界に野球帽被った魔女がいるかって言ってんの!」


「8番セカンド打ってそうな顔してるし似合うと思うよ」


「褒めてんのかそれ!?」


「それにさぁ…」


勇者は少し言いにくそうに口ごもる


「なによ?ハッキリ言いなさいよ」




「魔法使いの帽子、結構臭いよ…」


「はぁ!?」


魔法使いは激高して立ち上がる


「アンタ匂い嗅いだの!?」


「この前、野宿した時、魔法使いが寝静まった後に嗅いだ」


「変態じゃないのよ!」


「盗賊もなんとか言ってよこの変態勇者に」


魔法使いは加勢を求めるように盗賊を見るが、彼は魔法使いに加勢しない


「………」


「盗賊?」


「………」


「おい」


「………」




「お前も嗅いだんか?」


魔法使いは凄い剣幕で盗賊に詰め寄る


「勇者が『これめっちゃ臭いから嗅いでみ』って爆笑しながら持ってくるから…」


盗賊は絞り出すような声でやっと答えた


「爆笑する匂いってなんだよ!男二人して変態じゃねーかこのパーティ」


魔法使いは天を仰ぎながら叫ぶ


「い、言っとくけどこの帽子はオババ様のお古だから!私の匂いじゃないから!」


(恩人のせいにするのか…)


そう盗賊は思ったが彼女がもっと怒りそうだったので口にするのは止めた




「はぁ…叫んだら喉乾いちゃった…おい変態B」

「そこの酒つげよ」


「………」


変態Bこと盗賊は言われた通りに手元にあった酒を彼女のグラスにつごうとするが、勇者に制止される


「あー!ダメダメ、飲むならこれにして」


勇者は袋から違う酒を取り出して魔法使いのグラスに注ぐ

魔法使いは一口飲んで顔をしかめる


「これちょっと甘すぎるわ、私今はもっと強いお酒を飲みたい気分なの」


(なにちょっと良い女みたいな台詞(セリフ)吐いてんだこの貧乳魔女は)


「なにちょっと良い女みたいな台詞(セリフ)吐いてんだこの貧乳魔女は」




「勇者サンよ、心の声が漏れてるぜ」


「いやーしまったなぁ~!失敗失敗」


「「ガハハハハハハッ」」


意気投合した勇者と盗賊は声を合わせて笑った




「古の古龍よ…今再び蘇りたまえ…焼き尽くし…燃やし尽くし…全てを灰に帰せ、『エンシェント・インフェル…』」




「「詠唱すなーーー!!」」


勇者と盗賊は慌てて古代禁呪魔法を詠唱しだした魔法使いを止める


「物理魔法『正拳突き』!!」


「「痛てッ!」」


古代禁呪魔法はなんとか詠唱キャンセルさせた二人だったが、物理魔法?は防ぐことは出来ずに仲良く殴られた




「…てかさっきから勇者はなんなのよ?」


暫くして落ち着いた魔法使いが勇者に疑問を投げかける


「ん?何がだい?」


「盗賊にナイフ、私に野球帽、飲み物まで指定するし、なんか今日のアナタ変よ」


「変なんかじゃないよ!」


「僕はただ、良い商品を使って貰いたいだけなんだ!」


「怪しいマルチ商法みたいな台詞(セリフ)だな!」


「マルチ商法なんてやってないって!」


勇者は立ち上がり、両手を広げて抗議をする


「ん?」


その姿に魔法使いは違和感を覚えた


「勇者…ちょっと後ろ向いてみ」


「ハハッ勇者が背中を向けるハズないだろ」




「なんだその台詞(セリフ)!初めて聞いたわ!!」

「お前いっつも先頭歩いてるじゃねーか!」


魔法使いは盗賊に目配せする

盗賊は直ぐに察して勇者を抑える


「ウグッ!さすが窃盗で鍛えた身のこなし」


「人聞き悪いこと言うんじゃねぇ」


魔法使いは勇者の背後に廻って背中のマントを見た


『ガッポリ武器』『ガッポリ防具』『ガッポリ酒造』『ガッポリっくん』『ガッポリ48』




「スポンサーの名前ガッツリ入ってるーーー!!!」


魔法使いの叫びに反応して盗賊も勇者のマントを見る


「おいおい、こりゃひでーな」


「私、コイツの背後を歩きたくないんだけど…」

「てか今までの勇者の紋章が描かれていたマントはどこ行ったのよ?」


「雨に濡れている捨て犬に被せてきた…」




「嘘つけよ!」

「売ったんだろ!?いくらになった?スポンサーからいくら貰った?」


魔法使いは勇者の襟を掴んで詰め寄る


「…のか?」


「は?」




「勇者が儲けて悪いのかぁぁぁッ!!」


勇者の勢いに魔法使いは思わず離れる

故郷の村がモンスターに焼かれた時もこんなにキレていなかったハズだ


「この街はたまたまモンスターに占領されていたからこんな良い待遇受けられたけど、次の街はどうだ?また汚い安宿で泥水みたいなスープを吸う生活だぞ!」

「でもな!金、金があればなんでも揃う!暖かい布団も、上等な食事も、胸がでかい女だって手に入る!」

()()だけじゃ食えないんだよ!利用しないと!()()という称号を」




「怖っ」


追い詰められたラスボスみたいなことを喋る勇者に、二人は圧倒される

勇者は興奮収まらない様子で、更に続けた


「盗賊!」


「な、なんだよ」


「君は今日から語尾に『ポリ』を付けろ」


「ポリ?」


「この街のご当地キャラクターの『ガッポリくん』の語尾だ、知らないのか?」


「知るワケないだろ」


「『知るワケないポリ』だろぉぉぉッ!」


勇者は再びブチギレる

普段温厚な人ほどキレた時は怖い


「は、はいポリぃぃぃ!」


盗賊は圧倒され純直に答えた


「…よし、これで毎週500ゴールド、スポンサーから提供される」


「少なッ」


「それからァ!」


勇者は手をパンパンと叩く

すると一人の女が部屋に入ってきた


「初めましてぇ~」


「誰?」


「萌え萌え星からやってきた『ガッポリ48』のご当地アイドルの『モエちゃん』だ」


勇者が説明する


「地元産まれじゃん」


「モエね~ピンクの妖精さんとお話しできるんだぁ~」


「誰かこの女に薬物検査しなさいよ。きっと妖精じゃなくて()()だから」


ブリっ子しながらアイドルのモエは席に座る


「お酒もらっちゃいま~す」


「酒飲んでいいのかよ未成年じゃないのこの娘」


「27歳だから大丈夫だ」




「年上じゃねーか!」


「今日から我が勇者パーティに入ってもらうことにした」


「はぁ?」


魔法使いは呆れた様子で盗賊に助けを求める




「ゴクリッ」


盗賊はモエに見惚れて生唾を飲んだ


「『ゴクリッ』じゃねんだよ!」

「お前、度々裏切るよな!ツッコミ追いつかないんだけど」


「もうこの際言うが、これもスポンサーの意向だ」


勇者はもう隠す気はないらしい


「逆にスポンサーの意向じゃなかったら困るわよ」

「てか戦えんのこの人?」


「ピンクの妖精さんとお話しができる」


「つまり戦えないってことね…」


「スポンサーからのお達しだが、モンスターを倒す時は必ずモエちゃんにトドメを刺させるようにと」


「無茶言うな!」


「あと技名を叫ぶ時は必ず『ガッポリ酒造』の商品名を叫んでくれ」


「無茶言うなってぇぇぇッ!!!」


「それと戦闘終了した時は商品の宣伝もしてくれ」


「実家帰るぞぉぉぉッ!!!」






数日後


勇者たちは敵のアジトに乗り込んでいた


「待ってたぞ勇者パーティ、『ツヨーイ』を倒したくらいで良い気になるなよ、ヤツは四天王の中で最弱、この『スゴーイ』様の足元にも及ばんわ!」


盗賊は素早い動きでスゴーイの腹にナイフを突き刺す


「『ガッポリ酒造』ナイフ刺しポリ!」


「グフッ!」


刺されたスゴーイはよろける


「『HP1になるようにめっちゃ威力調整したファイヤー酒造』!」


魔法使いの威力を調整した魔法がスゴーイに追い打ちをかける


「グワァァァ!!」


スゴーイは堪らず虫の息になった




「『アイドルかかと落とし』です~」


ちょこん


-HP1


「グワァァァァッ!!」


最後にモエの技でスゴーイを倒した




「やった!盗賊のナイフで敵を倒したぞ」


「やったわね!そのナイフは凄い切れ味だけどどこで買ったの?」


「『ガッポリ武器』から買ったポリ」


「このナイフは敵だけじゃなくて野菜もよく切れるんだ」


「あら!私もお嫁さんになったら買おうかしら」


「ハハッまずは相手を見つけないとな!」


「あ、言ったわねー!このー!!」




「「「盗賊のナイフ!『ガッポリ武器』で大好評発売中!!」」」

「絶対買ってねって妖精さんも言ってるよ~♪」




(実家帰ろう…)


魔法使いは心の中で強く思った。

読んで頂いてありがとうございます

勇者が子供を助ける為にトラックに飛び込んだシーンは特に力が入りました。

気に入って頂けたら評価、コメント、ブクマなどして頂けたら幸いです。


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[良い点] コントを観てるみたいで面白かったです! 変態Bのキャラが好きww お気に入りユーザー登録させていただきました! ちなみに僕は七番ライトです。
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