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「……」
フッたものとフラれたもの。
互いに気まずくしばらく沈黙が続いたが、彼女の方が口を開いた。
「綺麗な雪だね……」
「私、ゆきのって名前だから、雪好きなんだよね……」
「俺も、雪は嫌いじゃない。犬か猫かで言われたら、猫派だけど」
「佐野君は県外就職だったよね? たしか……」
「ここらよりも雪が積もりやすい場所らしい」
「大変、そうだね……」
「不安はあるけど、自分で決めた道だし、自分で決めたことだから、頑張ろうと思う」
「それが最善の選択だったのかは分からないけど、良い選択だったと思えるように頑張る」
人生とは、選択の日々だ。
県外就職という選択、彼女に思いを伝えるという選択、目玉焼きにソースをかけるという選択、告白を断るという選択。
どの選択肢を選ぶことが最善なのかは分からない。選択肢が違えば俺は彼女と付き合えていたかも知れない。
いや、彼女と殴り合いの喧嘩をしていた可能性もある。どうなっていたかは分からないけど……。
ただ1つ言えることは、今があるのは全て、今に至る選択肢をしてきたからである。最善だったかは分からないけど、今 仮に生きていられるのなら良い選択ではないのだろうか。
「春野さんも頑張ってね。家業を手伝いながら、勉強するんだよね? 俺にはとても考えられない、家のことを手伝うなんて」
「私は、家族が好きだからさ……
少しでもみんなの力になりたくって」
「将来は、そんな暖かい家庭を作りたいの。『ただいま』って帰ってくる旦那さんを、笑顔で迎えられるような。それが私の夢であり、目標かな」
気付けば2分以上彼女を拘束していた。彼女だって他の人ともっともっと話したいだろうに。
「じゃあまた、佐野君 いつかどこかで!」
「じゃあ、また」
手を振る彼女に真似て、俺も彼女に手を振った。訪れるかも分からない約束をして。