いせかいにいったらすごくつよいのうりょくをてにいれて、てきなしです~でも、ほんとうは……~
ある男が異世界に召喚されました。
そして、彼はいわゆるチート能力を手に入れました。
彼の能力は「さがしものを見つける能力」でした。
このなんだか強そうに見えないスキルに国王だけでなく、国民も失望しました。
本音を言えば、期待外れでした。
それでも、彼を勇者として召喚したのだから、とりあえず魔王討伐の命を彼に出しました。
ここから、彼の冒険が始まりました。
彼は勇者として、知名度はありました。
召喚の儀式が先日行われたこと、そしてどんな人が来たのかは新聞で国中に知れ渡っていました。
しかし、彼に声をかける人はめったにいません。
なぜなら、多くの人が彼を役に立たずだと思っていたから。
そんな彼に同情して、声をかけてくれる優しい人もときにはいました。
けれど、もう彼は心を閉ざしてしまい、その声は届きませんでした。
彼は孤独な自分を紛らわせるために、そして魔王討伐のためにひたすら強くなろうとしました。
そして、人に会わない山奥で修業を始めました。
そんなとき、彼は自分の能力の使い方に気づきました。
この能力を使えば、なんでも見つけることができるのです。
強い敵の弱点が知りたければ、能力を使えばいい。
強くなる方法を知りたければ、能力を使えばいい。
魔王の居場所だって、能力を使えばわかります。
彼はますます強くなりました。
ある日、彼は負けてしまいました。
いくら彼が強くても、仲間がいなければどうにもならないときもあります。
彼は能力を使い、問いかけました。
「なあ、勝つために俺に足りないものってなんだ?」
「それは町に出ることです」
彼が今までこの能力を使ってきて、初めて意味がわからない返答が来ました。
普段は単純明快に答えてくれていたのに。
彼は困惑しながらも、山を降りて、町に出向きました。
町の中で、彼はいろいろなことを考えました。
町に出て、武器や防具をそろえろってことなのか?
それとも、気分転換してこいってことなのか?
考えても答えは出ません。
「あの、勇者さんですか?」
一人の女の子が彼に声をかけました。
「あ、ああ」
彼は久しぶりに人と話して、緊張していました。
それに、彼は未だに他人を信じることができませんでした。
「私とパーティーを組みませんか?」
彼は返事を考えました。
今まで同情で声をかけられることはありました。
けれど、パーティー勧誘は初めてだったからです。
「だめですか?」
女の子は悲しそうな顔をした。
それを見て、彼は決めた。
「ああ。パーティーを組もう」
「やったー!」
彼は自分の決断が正しかったのかわかりませんでした。
その答えをいつものように能力に訊いてみようとしました。
「さ、行きましょう!」
しかし、彼女が彼の手をつかんで、ぐいぐい引っ張るので、彼はそれをできませんでした。
彼が何かの決断のとき、能力を使わないのは久しぶりです。
「危ない!」
彼女にはこのモンスターは強すぎました。
しかし、彼には造作もありませんでした。
なぜなら、彼は勇者なのだから。
強さだけを追い求めていたのだから。
「ありがとうございます!」
「あの、これからも私を助けてくれませんか?」
「ああ、いいとも」
なぜだか彼は能力を使わなくとも、答えが見える気がしました。
彼女といると、心のもやもやが晴れるからです。
今まではいつも彼の心を包み、不安にさせ、能力を使おうと思わせるほど彼を不安にしていたもやもや。
しかし、彼女と出会ってからは、勇者の心にそれが現れることはなくなりました。
なぜでしょうか?
彼は能力を使わずとも、その答えを導き出すことができます。
彼は本当の「さがしもの」を見つけることができたからです。
初めて童話を書きました!
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