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最強もふもふ  作者: 木常
最凶軍団サクッと誕生編
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006 湖の主2

 「ぐわふぁっふぁっふぁふぁ、今度は冷静になれやしたぜ、魔力を調整して最小出力の七色光線を撃てやした。まあそんだけ余裕があったっつーか、じつりき差があったつーか。」


 いや、今鑑定してみたんだが、あいつ攻撃力も防御力も全ての数値がお前とどっこいどっこいだぞ。俺や始祖竜を除けば文句なしに世界トップクラスの強者だからな。


 しかし龍は沈んだまま浮いてこない。さて、どうしたもんか、とりあえず潜って様子でも見に行ってやるか…と思っていたところで、さっきと同じくらいの水しぶきを上げて、龍が再び飛び出してきた。 今度は渦は作らないんだな。


 「いやあ、目が覚めた。 暴れちまったみたいで悪ぃ、悪ぃ、スッキリ目が覚めたよ。さっきのお前の光線すごかったなあ! 体力の7割くらいごそっと持っていかれたぜ。永眠せずにすっきり目が覚めたのは助かった。」


 7割の体力奪われて、この元気は何だ、こいつ。 見たところ、ウロコもボロボロだし目も半分しか開けられないようだし、右側の角も折れてるじゃねーか。


 「いや・・・あっしこそすまねえ、あんたをそこまでボロボロにするつもりはなかった。 ただ強い奴と戦ってみたかっただけで・・・・あんた強かったぜ。」


 これは本当だ。 残念な生き物だが、スカは間違いなくかなり強いほうだ。対するこの龍も間違いなく強い。あっけなく光線を浴びたのはアレだったが、生き残っただけでも大したもんだ。 あの光線は結構痛いんだ。


 「さぁて、せっかく目が覚めたからどこか出かけようかとも思ったけど、結構身体がひどい事になってるから、また湖の底で眠ってくるよ。 たぶん100年くらい寝たら治ってるんじゃないかな。」


 また可笑しな奴がいたもんだ。


 「シロ様!!! こいつがこんなにボロボロになったのはあっしの責任です! あっしは回復魔法が出来ないので、シロ様、なんとかこいつを直してやれないもんでしょうか?」


 「それは俺にやれって言う事か?」


 「いやいやいやいや、やれって言うのではなくて、お願いです。お願いしてるんです!」


 「別にこいつは望んでないようだが?」


 「え? 我っすか? だって戦いで敗れたんだしねえ、自己責任だから自分で治すしかないのかなあって。 それに我はこれでも竜の身体、世界一頑丈な種族っすから、壊れにくい反面、生半可な魔力じゃ治せねーし。」


 「いや、たぶん簡単に治せるぞ。」


 「ほら見ろ! このお方をどなたと存じ上げる! シロ様に出来ないはずがないではないか!!」


 スカよ、お前が何で偉そうなんだ、あと口調がスケさんだかカクさんだかみたいになってるぞ。


 「え? すっげー、治せるんですか? それじゃ、頼んじゃおうっかなあ。」


 「よし、分かった。 ほれ」


 俺は神聖全快魔法を最大魔力で放った。 一瞬で龍の怪我は全快した。


 「うわあ、すっごい! なんか、力が漲って来るみたい。 眠る前よりも強くなったような気がする!!」


 確かに湖の龍の鱗は一枚一枚がツヤツヤして虹色に輝いている。 牙も爪も仕上げ砥石で丁寧に磨いたみたいにピカピカに光を反射して眩しいくらい。


 それに反して、俺は何だか力が抜けてきた。 そういえば、北の大地を出てから何も食べてないし、回復も全くしていない事に今更気が付いた。


 「こんなに治して貰ってどうしよう、200年前に付いた古傷も治ってる! 近視も治ったみたいだから眼鏡も要らないかも!! うわあ、これはお礼しなきゃ!!!」


 「ああ、それなら、丁度お願いしたい事があった。 腹が減ったのと寝床が欲しい。少し眠くなったようだ。」


 「シロ様! 大丈夫ですか!!!!!!」


 「ちょっと腹が減ったと言っただけでスカは大げさだなあ。」


 「すいやせん、早とちりなのがあっしの悪いクセで」


 他にも悪いクセの見本市みたいな存在だろ、お前は。


 「ああ、龍を泊める広い場所なんて、この辺にはウチくらいしかないっすねえ。 でも自分しか見ないと思ってるから今散らかってるんだよなあ・・・えっと、湖の上に、さっきの竜巻に巻き込まれた魚が一面に浮いているから、それ食っててもらって、その間にちょっと部屋片づけてきていいっすか?」


 「ああ、それで全然構わない。 腹いっぱい食えて眠れればそれでいい。」


 「じゃ、すみません、行ってきます! すぐ戻ってきます!」


 「シロ様に心を込めてちゃんと料理したものを出さないとは、全く礼儀のなっていない・・・」


 「スカよ、俺はお前に生魚すらもらった事が無いがな」


 「!!!!!!!!!!!!!!!!」


 「いや、虐めるつもりはない。 新鮮な生魚は大好物だからな、さて、黙って食いに行こう。」


 「はい、シロ様・・・・」


 殊勝なスカなんてらしくないが、それはそれで静かで良いもんだ。


 俺たちは湖一面に浮いている魚を思う存分喰いまくった。


 いやあ、食った食った。


 俺の本体は体重もせいぜい5kg以下のきつねだから魚なんて3匹も食えればいい方なはずなんだが、竜の身体になっているせいか、食えた食えた。 何トンもありそうな魚をスカと俺で食い尽くすところだった。


 最後の最後で、さっきの龍って目覚めてから何も食ってないんじゃないかと気付いた俺が、少し手土産に持っていこうと気付いた為、最後の1トンくらいは俺のストレージに仕舞った。 当然、受け継いだスキルには亜空間収納(時間停止機能付き)別名4次元ポケットもあるのだ。 4次元だから収納は無限大な。


 満腹で気持ちよくなって湖の上に浮かんで日向ぼっこしていたら、龍が湖の底から上ってきてプカリと顔を出した。 そうだよな、出てくる度に渦巻きなんか作らないよな。


 「準備出来たんで、いつ来てもいいですよ。 あ、それとも日向ぼっこで寝るのも良さそうっすねぇ、我も仲間に入っていいっすか?」


 「ああ、別にここでも良さそうだな。」


 「いや、シロ様、何やら周辺が騒がしくなって来てますぜ。」


 なるほど、気にもしなかったが、確かに岸には人間が集結し始めて何やら騒いでいる。あの鉄の塊はコンソールの図鑑にあった『大砲 攻撃力10,000』かな? 当たっても痛くもかゆくも無いが、寝るのを邪魔されるのも癪に障るな。


 「なるほど、スカの言う通り、ちょっと五月蠅くなりそうだから、お前のところに邪魔するかな。」


 「良かった、せっかく片づけたのが無駄になるのも勿体なかったんで、来てくれるなら嬉しいっす。」


 いや、来客に関わらず部屋は掃除しとけよ。




 それから俺達は湖に深く深く潜っていった。 しかし、バイカル湖並みに深い湖だな。いつまで経っても底に付かん。 体力バカのスカですら疲れてきたのか動きが鈍くなってきている。


 こりゃあ水竜に変身したほうが楽そうだな。俺は水の竜に姿を変えた。湖の主みたいな細長い身体ではなくて、恐竜の首長竜に似ている。竜っていろんな種類がいるんだな。


 スカは変身にビックリして盛大に泡を吐いて溺れかけていたけど、放っておいたら大人しく付いてきた。 学習しない奴め。


 逆に変身のスキルを知らなかったはずの湖の主は当然といった風に気にもせず先頭に立って湖に潜り続けていく。 こいつ結構大物なのかもしれんな。




 スカが飽きてきて辟易した表情で一生固定されそうになった頃、やっと湖の底の洞窟の入り口に着いた。 深さ1kmを超えているのは間違いないな。俺は途中から変身して泳ぐのも凄く楽になったが、スカは大して泳いだ経験も無さそうなのによくやり切ったな。



 しかし地上の1kmなら上方向でも横方向でも楽々なのに1km深く潜るのがこんなに大変だとは思わなかった。 何でも経験だな。 まあ、こんなに深く潜る経験をしたきつねも史上初だと思うが。

 

 「ようこそようこそ、まだ少し散らかってますけど、まあ、気にせず好きな所で横になってください。」


 「ようこそようこそじゃねーよ!このクソ竜! 来るのがこんなに大変とは思わなかった! もっと楽な所に住みやがれってんだ!!」


 「あれ? スカさんの家は行きやすい場所にあるんですか? 竜にしては珍しいですね。」


 湖の主は嫌みではなくそう言ったのだが、スカは真っ赤になって怒り出した。


 「べらんめい! こちとら誰も来れない深い深い山奥の山頂付近に居を構える幻の竜って噂だけが広がって誰も正体を掴めないスカイスクレーパー様と知っての戯言か!!!!!」


 正体がこんな残念な竜だと知ったら噂している人達もさぞガッカリするだろうな。


 「知っての、とか言われても、今初めて聞きましたよ。そんな場所じゃ、逆に我がスカさんの家に行くのは大変だろうから、お互い様ですよ。 我は大量の水がないと落ち着かない体質っすから。」


 もう、こいつらは放っておいて、寝る場所を探すか。 洞窟の中は、予想に反して綺麗なタイル張りになっていてきちんとしている。 床は地面の部分と木の板の部分と干した水草のようなものが積んである部分がある。 干し水草はクッション用に置いてあるんだろうな。


 隅っこのほうをよく見ると、人間用くらいのベッドが置いてあって、その横には風呂も用意してあり、女性用の下着が干してある。


 俺がそっちをじーっと見ていると、視線に気が付いた湖の主が慌てて、「ああああ、しまった!! 下着干していたの忘れてた!!!!」 と慌てだした。 何の事か分からないスカは置いてけぼり。


 湖の主は一瞬で人間に化けると下着に駆け寄って、何やら畳んでタンスに仕舞っている様子だった。 何十メートルもある竜が人間に変身すると、消えたように見えるのな、初めて知った。こりゃスカも俺が消えたって騒いだ訳だわ。


 「もう、我の一生の汚点、殿方に下着を見られるなんて。」


 それは恥ずかしいのか? その割にはお前は龍の時も今も裸だが、それは恥ずかしくないのか?


 ちょうど俺がそんな事を考えた瞬間に、湖の主も同じ事に気が付いたらしい。


 「きゃああああああああああああああああああああああああ!!!」


 さっきの下着とは比べ物にならないくらいの勢いでバスタブの後ろに飛び込んで隠れて、それからちょっとしたら出てきてまた龍の姿に戻った。 どうやらこいつも残念な奴で確定っぽいな。


 「な? 何すか? 何が起こったんすか?」


 「いや、聞かないでくれ、我の黒歴史じゃ。武士の情けで無かったことにしてくれ。」


 「スカ、お前は今、主が人間に変身していたのに気づかなかったのか?」


 「ああ、そうだったんすか! いやあ、突然消えたと思ったら、当然、悲鳴を上げて現れたから、何が何やら混乱してたんすよ。」


 「まあ、そういう事だ。 気にするな、スカ。」


 「ちぇーっ、ずっと清らかな眠り姫でいたのにいっきに暗黒龍になっちゃったぜ。」


 「湖の主よ、何か気にしているようだが、俺は生後4か月のきつねだ、社会経験も無く、何も理解出来ん。 だから安心して忘れるがよい。」


 「えー! シロさん、きつねだったんすか?!しかも赤ちゃん?! それでそのオーラ?!はっきり言って、我とスカさんが束になっても瞬殺っすよね? すごいなあ、世の中広いなあ・・・赤ちゃんにだったら、別に見られても大丈夫だよなあ、そっかあ! やっぱり何も無かったという事で!!!」


 長い独り言だが、頭の回転は良さそうだ、弱さの自覚も、その点はスカより間違いなく上だな。


 「って言うか、貴様も変身が出来るのか?!」


 「え? スカさん出来ないの?」

 

 「普通出来ねえだろ!!!!!!!!」


 スカはそう言うが、


 「出来るよなあ?」


 「出来ますよねえ」


 「うがががが、出来ないのはあっしだけっすか。」


 いや、出来ない生き物の方が多いだろうが、別に変身スキルを持っている奴を殺せばいいだけの簡単な話じゃねーか。


 「変身スキル持っている生き物を殺せばいいじゃないっすか。」


 「どうやって探すんだよ!!!!」


 「いや、普通にスキルサーチしたっていいし、種族スキルで変身持ってる生き物なら何でもいいんじゃないすか? 変身クラゲとか。」


 「そうか、その手があったか!」


 その手があったかって、バカかスカ、普通はその手しかないだろ。


 「スカさんって、あまりスキル狙いで殺したりしてこなかったんですか?」


  「弱いもん殺してもつまらないだろうが、俺は戦って楽しい奴としか戦わん。だからスキルはたまたまソイツが持っていた物しか手に入れない。」


 やっぱりスカはバカだ。効率とか考えないで行き当たりばったりで生きてきたんだな。それでこの強さになったのは単に種族のおかげだろう。

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