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最強もふもふ  作者: 木常
最凶軍団サクッと誕生編
4/16

004 その名はシロちゃん

 「アニキ!!!!! アニキと呼ばせてくれ!!!!!!!!」


 なんか変な言葉が聞こえてくるぞ。


 「いやあ、お見それしました! あっしはアニキに従いやす! 鍛えてくれとか魔法を教えてくれとかヤボな事は言いやせん。ただアニキの思うままにあっしを扱き使ってやってくれたら本望でやす!! どうか、あっしを連れてっておくんなせい!!!」


 何だコイツは? いきなり喋り方が変わったぞ。 しかも何だこの口調?


 「相変わらずアニキは無口っすねぇ、まあ、それがアニキの良い所なのかもしれねーっす、よっしゃ、これからあっしはアニキの代わりに交渉とか契約とか面倒くさい会話を一手に引き受けやすぜ! あっしはこう見えても弁も立つし学の方もちったぁ出来るんでさぁ。」


 面倒くさいな、置いていくか。


 俺はその場を後にして、次の目標、二つ目の攻撃力20万超えのポイントに向って飛び立った。


 「あ、待ってくだせぇ、アニキ!! もう、ホント水臭いなあ、アニキって照れ屋だったんすね? それか、おいらの本気度を試しているとか。 いや、心配ねーって、あっしは決してアニキを裏切ったりしねーっす!!」


 しまった、こいつ攻撃力もかなり高い分、空を飛ぶなどの身体能力も相当に高いんだ。 攻撃量が10倍ほど違うが、それは魔法やスキルやいろいろ込みなので、身体能力だけだと3倍くらいしか差がない。 こいつから逃げ切るのは連れていくのと同じくらい面倒くさそうだ。


 「アニキ~、どこへ向かってるんすか? アニキの家っすか? やっぱり邪魔な人間やエルフなんかが来れねー奥のほうにあるんスかね? あいつら弱いくせにしつこいっすからねえ。」


 その言葉をそのままオマエに返したいが、そもそも『アニキ』って何だ?


 「そろそろ、そのアニキってのをやめてくれ。 だいたい俺が女だったらどうするつもりなんだ?」


 「!!!!!!!!!!!!!  姉御だったっすか?!!!!!! こりゃあっしはとんでもない失礼を!!!!!! この詫びは、あっしの命で!!!! 申し訳ねー、いくら謝っても足りねーくらいに!!!!!!!」


 冗談の通じない奴だ。 放っておいても面白いかとも思ったし、そのまま死んで詫びてもらえば手間も省けて良かったのだが、まあ退屈しのぎにはなるかと思い、


 「いや俺は男だ。」


 と、一言だけ告げた。


 「なんだぁぁぁ、ビックリしたじゃねーっすか!!!! いや確かにアニキほどの美形なら女だってのもあり得るかと一瞬思っちあいやしたけどね!!!!!!!!!」


 いちいち賑やかな奴だ、だが生まれてすぐに兄弟キツネが死んでしまって、ずっと母親一人しか知らなかった俺に初めて出来た話が出来る相手(会話が成立しているとも思えないが)だ、本気で飽きるまで連れ歩くのも面白いかもしれない、と思ってしまった。本気で邪魔になったら殺せばいいだけの話だし。


 「お前はつくづく賑やかな奴だ。 もうちょっと静かにしてくれるなら付いてきてもいいぞ。


 「ホントっすか!!!!!!!!!!!! あっしは感激っす!!!!! 生まれて500年、こんなに嬉しかった事は無いっす!!!!!!!!!!!!」


 いや、お前さっきまで俺を殺すとか言ってなかったか?


 「俺、退屈してたんすよ、強い相手はいねーし、弱い奴ら相手に暴れても面倒くさいだけで楽しみなんかねーし、それで最近100年くらいは あの山でやる気なくぼーっとしたんでさあ。誰か俺様をこの退屈から救ってくれみたいに祈りながら。 そしたらアニキが来てくれたんでさぁ!!!」


 うわあ、ご丁寧に目に涙が滲んでるよ、引くわぁ。 ずっと山に引き籠っていると心も病むんかねえ? まあ楽しみを見付けたんなら結構結構。


 「アニキに付いていけば、絶対に楽しい事が待っているってあっしにはすぐ分かったんでさぁ、アニキぃ、どこまでも付いていきますぜ。」


 「その『アニキ』を何とか他の呼び方に変えてもらえないかな。 あと俺はお前の名前を知らない。」


 「アニキぃぃぃ、そりゃ酷いっすよ! 最初にスカイスクレーパーって名乗ったじゃありやせんか?!!!!」


 「そうか? お前の話は長いから聞いてなかったからな。 っていうか、名前長いな。『スカ』でいいよな。」


 「へ?  スカ  ですか?」


 「ああ、スカだ。」


 「いや、なんか、ちょっとその名前だと弱そうって言うか、、、何て言うか、、、」


 「だってお前弱いじゃん。」


 「そ!!!!!! そりゃアニキに較べればあっしなんてゴミムシくらいの弱さですが!!!」


 「それもいいな、ゴミムシにするか?」


 「いやいやいやいや!!!! アニキに付けて頂いた名前『スカ』を全力で全身全霊で名乗らせて頂きたく思います!!!!」


 「そりゃ良かった。 あと、アニキはやめろって。」


 「いや、そう言われましてもアニキはアニキなので、他にどう呼べば・・・。」


 こいつの事だから、俺が下手に冗談など言おうものなら全力でその呼び方を使い続けるんだろうな。 例えば「全知全能のご主人様」とか言って、真に受けて呼ばれ続けたりしたら自殺したくなる事間違いなし。 かと言って、譬えどんな呼び方だろうと俺自身から提案するのも恥ずかしい。


 「そのくらい自分で考えろ、合格するまで候補をどんどん挙げていけ。」


 「分かりやした!!!! えーっと、ご主人様!」


 「却下。」


 「全知全能のg」「却下。」


 「アニキ否定するの早!!!!」


 「却下。」


 「ううううぅぅ、先輩!」


 「却下。」


 「パイセン!」


 「却下。」


 「もう、どうしろと・・・親分!」


 「却下。」


 「大将!」


 「却下。」


 「ぜぃ、ぜぃ、ぜぃ、もう思い付かねー・・・ボス!」


 「却下。」


 「もう、勘弁してくださいよ~、これ以上は出て来ねーっすよ!」


 ボキャブラリーの貧困な奴だ。 この流れだと師匠とかマスター(ご主人様と一緒か)とか旦那様とか出てくるかと思ったのだが、意外に早くギブアップしやがった。


 「ふむ、名前を呼んでくれればいいと思ったのだが、考えてみれば、俺には名前が無い。 そうだ、俺に名前を付けてくれ。」


 「ええええええええええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」


 「いや、マジだ。」


 「な! 名前を付けるっていうのは超超超超超大事な事で!!!! それをおいらなんかが!!!!!!」


 「いや何でもいい、面倒くさいから早くつけてくれ。 気が変わったらお前を殺すか追い返すかもしれん。」


 「え! そ、それじゃ、全力で付けさせて頂きます!   超スーパーウルトラアルティメットギャラクsy」「却下。」


 「早いっすよ!」


 「長いのが嫌でお前をスカにしたんだから、同じ理由で却下だ。」


 「そうっすか? アニキには長くて立派な名前が似合うと思うんすけどねえ。 その美しい銀の鱗に流線型の身体・・・。」


 「鱗? あ、そうか、竜の姿のままだったな。 よし、ちょっと下りるぞ。」


 俺は返事も待たずに急降下した。 降りた辺りがたまたま家がゴミゴミと詰まった場所だったのは運が悪い。 近くに広い芝生の場所があったので、そこに降り立つ。 ここなら竜が二匹降りても大丈夫だろう。


 「ちょ! アニキ! ここはマズいっす! あっしの経験によれば、ちょっと面倒くさい事になるっす!」


 スカが何か言っているが、まあ気にしない。 どうせロクでもない事だろう。


 「さて、スカは俺が竜だと思っているようだが、実は違う。 俺は生まれて半年の子ぎつねだ。 見てろ。」


 瞬間、風の竜ライトの姿は消え去った。 人間どもがざわつきながら走り回っている石造りの大きな建物から声が上がったような気がしたが、まあ、どうでもいい事だ。 それよりも、


 「あれ? アニキ!! アニキ! どこへ消えてしまったんすか?!! こんな所にあっしを置いていくなんて酷いっすよ! アニキ! アニキ!!!!」


 俺だからスカが何て叫んでいるのか聞き取れるのだが、きつねに戻って初めて分かったが、竜の声は迫力のある咆哮にしか聞こえないんだな。 しかもスカは必至だから余計に五月蠅い。 


 回りの人間どもまで泣き叫んだり大声で連絡し合っているし、もう収集が付かないので、俺はさっきの7色の魔法ブレスを吐こうとして口に魔力を集め始めた。 さっきと同じ魔力だが、口が何十分の一も小さいので凝縮した魔力は竜の時の何倍もの光を放っているはずだ。


 「あれ? この魔力は??? 足元???  あああああああ!!!! この七色の光は間違いない、アニキだ!!!! アニキ!!!! そんなに小さくなって!!! って言っている場合じゃない!!!! アニキ、やめて下さい、そんな魔法撃ったら大変な事に!!!!!」


 ふん、やっと気付きやがったか。やっぱりマヌケな奴め。何が交渉事が得意だ、人の話を何ひとつマトモに聞いていないじゃないか。 


 俺は魔力を込めるのを中断して、きつねの身体のまま声だけ竜の声にして目の前に聳え立つスカに向って吠えた。


 「これが俺の本来の身体だ。 俺はあらゆる生き物に変身出来るから本当は身体なんて何でもいいしどうでもいいのだが、まあ、本来の身体を見たほうが名付けには役立つだろう。 ほれ、さっさと名前を付けてみろ。」


 スカから見れば豆粒みたいな小さい白いふわふわから竜の声で怒鳴られ、スカは魂を抜かれたみたいに立ち尽くしていた。 「ア、ア、アニ・・・キ・・・な、名前? え?え?」


 どうやら俺に名前を付ける為にここに降り立った事すら忘れている様子だな。まったく世話が焼ける。 さて、この使えない野郎をどうしてくれようか。




 その時、近くの茂みに小さな人間がいて、俺の咆哮に腰を抜かして立てなくなっているのが見えた。 あまりに弱弱し過ぎて魔力感知にも探査魔法にも引っかからなかったのだな。 俺の真っ白な毛皮には負けるが、白いふわっふわの服を着ている。 人間の標準の大きさが分からない、そいつは俺の4倍くらいの身長だが、その辺を走り回っている鎧を着た人間の半分以下の大きさだから、たぶん子供なんだろう。


 頭には防御にも何にも役に立たなさそうなピンクの長い平たい紐を付け、白いふわっふわの服の縁は、やっぱり防御にも役に立たないヒラヒラが一面に付いている。 そいつは顔の半分が目なんじゃないかってくらいにいっぱいに開いた目で、俺の方を凝視していた。


 「あ! 姫様!!!! やっと見つけた!!!  もう大丈夫です! こちらに!!!!」


 数人の鎧が走ってきて、ちっちゃな白いフワフワを小脇に抱えて連れ去っていった。 まったくどいつもこいつも騒がしい。 もっと静かに暮らせばいいのに、と、おせっかいながらも思ってしまう。


 鎧に抱えられて連れ去られる直前に、フワフワは、俺の方をまっすぐ見て


 「かわいい・・・・シロちゃん・・・・」


 と呟いた。 確かにそう言った。


 おそらく、慌てて走っていった鎧には聞き取れなかっただろう。俺の並外れた聴力だから聞き取れた本当に小さな呟きだったが、確かにフワフワは俺に向って『シロちゃん』と呼びかけた。


 ふむ、俺はシロちゃんか、短いし悪くないな。 実際白いし。


 見上げると、スカはまだ凍り付いたままだった。


 「 ア・・ニキ・・・竜じゃなくて・・・あんなチビっこ・・・でも魔法は本物・・・ホンモノのアニキ・・・・」


 まだ訳の分からない事をブツブツ言っている。 もう遅いよ、名前は決まった。 引き上げるぞ。


 どうせこいつは人の話は聞かない事が今は分かっているので、俺は余計な説明はしない。 そのまま再び風の竜ライトの姿に変身すると、すぐに大空へ飛び立った。 今度はゆっくり羽ばたいたので地上の人間なんかは吹き飛ばされてはいない。 何人かは転んでたみたいだがな。


 「あ、アニキ! 戻ってきてくれた! あ、待って! 待ってくださいよ! アニキ~~~!!」


 俺が竜の姿になった事で一瞬にして我に返ったスカが俺を追って飛び立つ。 さっきは静かだった家が込み合ってる場所に人が溢れて我先にと街の外に向って走っているが、みんな何を慌ててるんだ?


 全く世の中は騒がしい生き物ばかりだ。一度、一面何もない氷原で暮らしてみたほうがいいと思うぞ。


 「アニキ~!! 待ってくださいよ~~~~!!!!!」


 なんか騒がしいのがまだ付いてくるが、まあいい、さっそく次の攻撃力20万超えの所まで行くか。 俺はマップを呼び出して方向を確認した。

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