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最強もふもふ  作者: 木常
最凶軍団サクッと誕生編
2/16

002 生後4か月なんだけどね

 おかあさんがいなくなった


 おかあさんのそばをはなれちゃだめよって言っていたのにいなくなっていた


 さむいしおなかがへってうごけない


 ちょっとだけあたたかい何かが落ちていたのでもぐりこんだ


 おなかは空くし、さむい風がふいていてここから出れない


 そしたら、ずっとうごかなかった何かから棒が出てきた


 何だろ? 怖くなって奥にもぐろうかとしたけど、うまくできないからはいだす


 からだのおくから逃げろって聞こえてくるから逃げなきゃ


 でも、怖すぎてからだがうごかない。 逃げなきゃいけないのに。


 あたまの中で声がする、わがけんぞくとか分からないこと言ってる、どうしよ


 そしたらすぐに、『そのけんにとびのれ』って聞こえた


 あたまで考えるまえに足がとんでた。 けんって何?っておもったけど、その辺にとびのるようなものって、そこに立ってる棒しかないのでとびのった。


 すごく怖かった。おかあさんがいなくなった時よりも怖かった。 さむさも雪も氷も何もかも消えちゃって、今、その声だけが自分の全て。せかいの全てがその声だけになっちゃったみたい。


 だから棒の上にとびのった。考える前にとびのった。


 なにもおこらなかった。 もうあたまのなかに声もしなかった。


 棒から半分おちるように飛びおりたら、棒の下にあった少しあたたかかったボロボロの何かからキラキラ光るこおりのかたまりみたいなのが出てきて、ぼくの中に入った。


 食べたんじゃなくて口からでもなくて、どこかから勝手にそれが入ってきた。





 

 見渡す限りの氷原に倒れていた。


 俺の真っ白な毛皮の上にはすっかり雪が積もって、俺は雪の中50cmくらいのところに埋まってるらしかった。 ここはどこだろう?って思った途端に、頭の中に周囲の映像と自分の位置、地面からの深さというのが表示される。


 cmというのも聞きなれないが、人間の作ったものなんだろう。なるほど合理的だ、離れた場所にある大きい物や小さい物を、この単位とやらを使えば正確に比べられるんだな。


 この情報を出すインターフェイスというものも便利だ。 いろいろ考えるだけで知りたい候補をどんどん出してくれるようだ。 別に知りたくなければ選ばなければいいし、候補が違っていれば別の言い方で思い描けばいい。 人間というものは便利なものを作り出すもんだ。


 そういえば、どのくらいここで寝ていたんだろう?


 すぐ、頭の中に23日と11時間10分07秒と浮かんで来るが、何の事だか分からない。たぶん〇日っていうのはお日様が昇って沈んだ回数なんだろうけど。 あれ?それって結構長い間じゃね?


 すぐ頭の中に『種族:魔ホッキョクギツネ、名前:なし 生後130日』 と出てくる。 生まれてから130日のうち23日も眠っていたんなら、それは長いって言えるよな? 言えないか? 何せ俺はまだ一歳にもなっていない、世間の常識というものがよく分からない。 もちろんホッキョクギツネの常識も人間の常識もだ。 ああ、今は魔核を手に入れたから魔ホッキョクギツネか。 ちと長いな。 魔キツネでいいよな。 食肉目イヌ科らしいから、魔食肉でも魔イヌでもいいけど。


 そう思った途端、表示が魔キツネに変わった。 案外いい加減なんだな、このシステム。 あるいは作った人間が柔軟性のある奴だったのか。


 それにしても腹が減った。 近くの雪を火魔法で溶かして飲んだから喉の渇きは癒されたが、腹の減りは収まらない。 そういえば、母上は雪に飛び込んで中のネズミを捕ってたっけと思い出して、索敵魔法を展開する。 いるいる、雪の下にネズミの通路があって、あちこちチョコマカと走り回っているので、隷従魔法でここまで来させて食べた。


 別に雪を切り裂く魔法やこの一帯の雪を全て融かす魔法を使ってもよかったんだけど、やっぱ食べ物自らここに来させるのが一番楽だよなあ?




 腹が膨れたので、改めて俺は自分の事を確認する。


 アイテムボックスの中に鏡もあったのだが、やっぱり360度見えたほうがいいので俺は自分の分身を出現させた。 なるほど、これが俺の姿か。


 母親の1/10くらいだろうか? 30cmくらいの子ギツネだ。毛皮は真っ白で、少しやせ細っている。 倒れていた23日間と、母親が死んでから剣に飛び乗るまでの数日間、何も食べていなかったんだから仕方がない。世界最強の俺だから死なずに済んだだけ良かったという事にしとくか。


 俺の近くの雪の下には人間の死体があった。 俺に魔核をくれた奴だから、こいつが世界最強だったのだろうな。 ほぼ冷凍保存されているおかげで肉は腐っていなかったので、俺はそれを食った。 食料としても役に立ってくれてありがとうよ。


 突然、頭の中に声と文字が流れてきた


 『新しいスキルを獲得しました。 人肉喰い:人間種の天敵として恐れられる存在になる。  常時発動型スキル スキルのOn/Off可能。』


 ほう、俺たちキツネにとっての熊みたいな存在になったのか。これは面白い。


 ついでに、他のスキルも確かめてみるが、多すぎてとても全ては確認出来ない。 数字も並んでいるが、何のことだか分からないので、先に元々の自分のステータスや自分の母、母を殺した熊やさっきのネズミ達のステータスを表示してみる事にした。較べてみれば分かりやすくなるかもしれん。 ん? 俺が見ていない熊のステータスも出せるという事は、この魔核の前の持ち主、この餌になった人間が見た者のステータスも表示出来るって事なのか?



 レミング 名前:なし


 体力   0.2(0.2)

 攻撃力  0.1(0.1)

 防御力  0.1(0.1)

 すばやさ 58(58)

 まりょく 0

 スキル  耐寒性25 振動感知30



 ホッキョクギツネ 名前:かわいいぼうや


 体力   3(12)

 攻撃力  0.4(2)

 防御力  0.2(0.7)

 すばやさ 14(26)

 まりょく0

 スキル 耐寒性40 振動感知8 嗅覚10



 ホッキョクギツネ 名前:おかあさん


 体力   24(44)

 攻撃力  51(58)

 防御力  60(64)

 すばやさ 30(38)

 まりょく 0

 スキル 耐寒性55 振動感知20 嗅覚68



 ホッキョクグマ 名前:なし


 体力   450(800)

 攻撃力  580(700)

 防御力  420(550)

 すばやさ 24(28)

 まりょく 0

 スキル 耐寒性80 嗅覚48 爪付きビンタ30



 ほお、俺は母から『かわいいぼうや』と呼ばれていたのか。 照れるな。 そして熊はまさかの攻撃スキル持ちか。 母もたぶん本気で戦う気は無くて、俺から熊を遠ざけるとか、戦うフリでやり過ごすつもりだったんだろうな、熊に勝つつもりで挑むきつねなんているはずないから。しかし相手が攻撃スキル持ちで逃げられなかったってところか、母上も運が悪い。


 そして今の俺のスキルを表示してみた。


 魔キツネ 名前:なし


 体力   378,458(1,245,600)

 攻撃力  984,322(2,440,200)

 防御力  221,044(2,320,000)

 すばやさ 5,884(12,200)

 まりょく 22,466,310(199,300,000)

 スキル 老化遅延999 超思考999 超演算999 未来予知(近)999 未来予知(遠)120 変身999 耐穿999 耐刃999 耐衝撃999 耐震999 耐毒999・・・・


 スキルが多すぎて、読むのも面倒だから途中で辞めた。 というか、比べてみたところで、俺の数字がどうなのかよく分からんな。 誰かと比べてみれば分かるのかもしれんが、天敵の熊と比べても桁が違い過ぎてよく分からん。 まあでも、天敵がゴミクズに思えるくらい強くなったって事だけでも分かったからいいか。


 あと今の状態と満タンの数字の差が大きい物と小さい物があるのが面白いな。まだ関連が分からんが覚えておこう。




 とにかく、いつまでもこの氷原の真ん中にいても仕方がない。 ここらで別の場所に行ってみるか。 そして俺の強さを別の強そうな奴で確かめてみるのもいいかもしれない。


 とっとと去る事にしたのだが、ふと目の前の剣に目が留まった。 俺を世界最強にする為に役に立ってくれた剣、鑑定すると世界最強の剣『神降し』だと出ている。 最強だけじゃなくて、世界の王者の証の剣という事らしい。 せっかくだ、これも持っていくか。


 俺のこの30cmの身体や前足だとこの剣は持っていけない。前足には短い爪と肉球があるだけだからな。 仕方がないので、俺は変身する事にした。 俺の持っている変身スキルは何種類もあって、基本の変身スキルだと、どんな種族にでもなれるという奴、これは俺の魂がもしこの種族だったらという姿になるらしい。これだと何に変身しても赤ん坊の姿になってしまうから却下だ。

 そこで選んだのは、俺の魔核を構成する歴代の魔核の持ち主の姿になれるというスキル、殺し、殺され、この魔核の素となっていった何百万もの生き物達の姿になれるスキルを俺は選んだ。


 まず、俺はこの死んだ人間の姿になってみた。 頭の中に、『いつの時代の姿になりますか?』という文字と声が表示される。 俺は試しに『最初の姿』と唱えてみた。 人間の赤ん坊になるんだろうか?


 俺の予想に反して、俺は弱そうな10歳くらいの少年の姿になった。 ああそうか、これはこの人間が最初に魔物を殺して魔核を手に入れた時の姿なんだな、なるほど。


 そのままこの人間の全盛期の姿になるという手もあったのだが、別に興味もないので俺は竜に変身した。 世界最強の竜もリストにあったのだが、今回は一番飛ぶのが速い『風の竜ライト』を選んだ。 光のように速く飛ぶという意味で人間が名付けた名前らしい。 人間が作った能力管理システムのスキルだから、人間側の呼び名がデフォルトになっているんだな。


 この竜は翼とは別に前足がある。 プテラノドンとかいう前足が羽になったような翼竜とは全く別の種類だ。こいつなら、剣を持って、世界一の速さで空を飛べる。


 俺は特に未練もない凍てついた大地から、食べ散らかされた人間の死骸や氷の破片や一面の雪なんかを軽く吹き飛ばし、滑らかに大空へ舞い上がっていった。 

 さっきまでの俺は世界最弱にほぼ等しい存在だった、世界最強になった今、ゴミのように弱い奴らには興味すら無いが、それはさっきまでの俺自身への否定になるのか。そもそも、さっきまでの俺と今の俺はそもそも同じ生き物なのだろうか。

 俺は生まれてからたったの4か月、まだまだ俺には知らない事が多い、その中には解ける問題も沢山あるだろう。考えても分からない事はとりあえず放っておくに限る。

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