013
(どわあああ、シロ様の声がするっす!!! でも姿は見えない!!!! まさかシロ様幽霊になって!!!!!!!)
(勝手に人を殺すな。これは念話だ。今どこにいる?俺は爆心地だ、戻って来れるか?)
(おおおおお!!! さすがシロ様、あの爆発の中心に居たまま無事でしたか!!! しかも念話なんてスキル初めて体験しやした!!!便利なモンすね!!! あっしは10kmくらい吹き飛ばされましたかねえ、なんせ一面の瓦礫や岩の塊なんかと一緒に飛んでたんで距離感も何も掴めなくなっていやして・・・まあすぐに戻れると思ういやす!!!!!)
(シロちゃん無事だったぁ? シロちゃんが地面に瞬間移動したと思ったら凄い爆風で岩とかが山ほど飛んできて、終いにはきのこ雲も立ち上るし、もう私もスカちゃんもシロちゃんも死んだかと思ったわよ。勢いに逆らわないで飛ばされるまま飛ばされたからダメージ少しは減らせたけど。)
(スカもボケもよく生きてた。別に死んでも俺は困らないが少しは寝ざめが悪いからな。ボケも爆心地まで戻って来れるか?)
(翼が結構ボロボロになっちゃったから、少し時間かかるけど、10分はかからないと思うわ。)
「という訳だ、聞いていたろ? 俺の横を飛んでいた奴等も生きているらしい。すぐにここに戻って来るから謝っておけよ。」
この念話というスキルの便利な所は個別対象とだけする会話とオープンチャンネルが選べるところだ。しかも対象に向って呼びかければ相手がスキルを持っていなくても会話が出来る。スキルを持っていれば他人のオープンモードの会話を聞く事も出来る。今は誰にでも聞こえるようなモードで会話したので、始祖竜の子にも聞こえていたはずだ。こいつが念話スキルを持っていればの話だが、始祖竜ならその程度のスキルは持っているよな??
「あの衝撃波で生き残これるなら結構強いのね、さすがお主のお供だけあるのね。弱いのが死んでもあまり心も痛まないけど意味もなく竜を殺したらさすがに寝ざめが悪いわ。来たらちゃんと謝るから安心してね。」
弱い生き物が死んでも心が痛まないというのは本当だ。 心が優しい人間だって、キャンプファイヤーの時、薪の中に住んでいた虫や地面の中で焼かれるミミズや火に飛び込む蛾の事で心を痛めて楽しめない人なんてほぼ居ないだろ、竜から見れば人間なんてミミズ程度のもんだからな。もちろんホッキョクギツネもだが。
「シロ様~~~~~!!!!よくご無事で!!!! って、ぐあああああ、何スか、この穴は!!!!」
ちょうど埃や煙が少し晴れて辺りの様子が見えるようになってきていた。スカが驚く通り、周囲は直径500mくらいのクレーターになっていて、底までの深さも100mくらいはありそうだ。 よくこれだけの岩石を吹き飛ばせたなあ。周囲10kmくらいに町があったら壊滅するレベルだな。
「ふむ、主様の名前はシロ様というのか、その名前、一生この心に刻みつけるぞえ。 ところで、そちら、シロ様の家来の者か、妾の攻撃からよくぞ生きて帰ってきた。あれは間違いの攻撃だったのじゃ、許してたもれ。」
「ぐあああああ、お前が犯人だったのか!!!! あんな攻撃は見た事がない、貴様何者なんすか!!!!!」
「妾か、妾はただの竜じゃ。 ラハブの娘、ラブと申す。ラブちゃんと呼んでも良いぞ。」
それを聞いたスカの顔がいっきに青褪めた。
「全ての竜の始祖、ラハブの・・・娘・・・・」
キツネの俺にはよく分からんが、竜にとって始祖竜ってのは特別な意味でもあるのか? 頭のネジが一本も二本も足りないような無礼者のスカが一瞬で気を付けの姿勢を取っているが何なんだ?単に強い者にひれ伏しているという雰囲気ではない。
「お待たせ~~~~、もうっ、死ぬかと思ったぞ。」
「おお、死ななければそれでいい。 しかしスカもボケも見事にボロボロになったもんだな。」
スカの身体には何か所も岩がめり込んでいるし、羽も3か所くらい大穴が開いて、全身血だらけだ。 ボケはもっと酷くて、羽もよく飛べるなと思うくらいボロボロで、骨も何か所も折れているようだ。おそらく内臓も無事ではないだろう。
「あー、ずるーい、二人だけ回復魔法使ったんでしょ!」
「おお、お前もシロ様の従者か、妾はラブと申す、此度は勘違いにより迷惑をかけた。許してたもれ。」
「あっはっはー、まあ、勘違いは誰にもあるよねー。ラブちゃんかあ、そのオーラは始祖竜さん? 始祖竜に攻撃されて生きていたなら、あたしは物凄く強いか物凄く幸運だと思う~~。どっちかな? やっぱり強いほう?」
ボケの楽天家は死にかけても変わらないな、こいつの良い所だ。
「ほれ、回復魔法をかけてやるから二人とも並べ、ボケは元の姿に戻っておけよ。」
飛んできたからボケは飛竜の恰好のままだ。 すぐに返信を解いたのだが、元の姿に戻ると怪我の酷さがより際立った。四肢は骨が見えるくらい肉がえぐれて、しかも折れているらしく身体を支えきれない。身体の損傷も相当なもので、何か所も鱗も皮も剥がれ肉が見えている、そして血の海から上がってきたかの如く全身血まみれだ。
「ほれ、これで治ったろう。」
こいつ等の程度だったら最上級の治癒魔法は必要ないかもとは思ったが、念の為に最上級の治癒魔法と体力回復魔法をかけておいた。
「ぐおおおおおおお! 生まれてから最高に身体の調子がいいっす!!!!!!!!!!!!!」
「あ、楽になった。 おー、感謝感謝。」
しかし、さすがの俺でも最上級の魔法2組みを4セットも使うと腹が減ってくるなあ。
「回復魔法で疲れた。 ちょっとメシでも食うか。」
「それならば妾の屋敷へ是非! 最上級の食事を用意させましょう!!!」
すげーな、被せるように即答してきたぞ、こいつ、どんだけ張り切ってるんだ。
「いや、移動するのも面倒くせえ、生魚出すからここで喰えばいいだろ。」
「最高の存在シロ様がそんな事ではいけません! 是非最高の食事を!!!」
「面倒くせえなあ、まず俺に対して『いけません』とか全否定から始まるというのも気に喰わないが、それより生きるって言う事は、最高の何かで周りを固めるもんでもないと思うんだ。世の中いろいろな物がある、美味いもん、不味いもん、強い奴、弱い奴、存在しているからにはそれぞれ理由があるはずだ、それをみんな肌で確かめたいのよ、俺は。まだ生まれて半年も経ってないからな。」
久しぶりにこんなに長いセリフを喋ったぞ、いや生まれて初めてかも。 見ると、ラブがその場で土下座をしている。
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