表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/3

竜騎士とか軍勢をあっさり撃退したかと思いきや、今度は鬼娘と子作りを強要ってどこの18禁?

 ワープした先、国境沿いの荒野に立つ。

 いきなり目の前に広がった光景は、とにかくドラゴン。

 ドラゴン、ドラゴン、ドラゴン。

 その上に乗って操る騎士。

「我等っ、竜騎兵団が先陣を切るぞっ、続けぇ!」

 隊長っぽい人が部下を鼓舞していて、士気も十分。

「たっ、隊長っ。魔族です魔族!」

 一人が僕を指差した。

 ドラゴンと騎士達の視線が一斉に僕に注がれる。

 せっさく格好良く出陣しようとしていた隊長っぽい人は、ある意味気勢を削がれて、


「誰だ貴様はー!?」


 って叫ぶから、 


「魔王です!」


 と、つい大声で返す。


「なぁにぃー!? 魔王だと!」

「隊長っ、魔王が一人で乗り込んでくるわけないでしょ! どうせこいつは頭のおかしな魔族ですよ!」

「それもそうだ!」


 と、ガハハハって感じで笑い出した。

 まあ、そりゃーそうだろう。

 確かに頭いかれてるよな。

 ぐうの音もでない。


「それより隊長っ、近くに鬼の村がありますぜっ、まずはそこから潰しましょう!」

「そうだなっ、見せしめには丁度良いだろう!」


 残酷なことを平然と言ってのける。

 一応、僕は今は魔王、魔物かもしれないけど、元人間として今のはいただけない。

 ああ、つくづく、僕は人間なんだって思う。


「ちょっと待って!」


 僕は感情を込めて叫ぶ。

 すると、声が物凄い衝撃波になって竜と騎士たちを吹き飛ばした。


「ぎゃああああ!」


 騎士たちの悲鳴と驚愕。

 僕はポカン。


「ふぁっ!?」


 騎士やドラゴンたちは、気づけば遥か彼方。

 

「えっ、えっ、えぇー?」


 そりゃーないべ。

 もっとこう、派手な魔法とか、格好いい能力とか剣とか、そういうので無双する展開じゃないの?

 何この手抜きー。

 肩透かしも良いところだ。


「はぁ」


 溜め息。

 いつもこうだよなー。

 僕はトボトボ歩く。

 すると、荒野の向こうに村が見えた。


「もしかして、あれが鬼の村?」


 騎士たちの言っていることを思い出す。

 とりあえず避難をした方がいいって言っとこう。

 そう思ったんだけど、後ろからドンドンと凄い地鳴りがした。


「きっ、騎兵隊だー!」


 そこらじゅうを馬、その後ろに続く兵士が埋め尽くすくらいの数。

 恐らく、これが本体。

 僕は村を見る。

 このままいけば、地獄絵図。

 にっ、にげるわけにはいかないっ。

 さっきは偶然、何かしらの魔法が出たからああなったんだ。

 どっ、どどどどっ。


「どーーーーしよーーーーーー!!!!!」


 先程より大きな声。

 目をつぶって、頭を抱える。

 が、地鳴りが消えた。


「えっ」


 嫌な予感。

 恐る恐る目を開けると、遥か彼方の空に何か見えるけど、あんだけいた馬や兵士の姿がない。


「うえー、またー?」


 読んだことあるラノベとか漫画の主人公みたいなことを言えたけど、あれよりも「またー」感が強い。


「もーいーや、村にいこ」


 完全にやる気なくして、村へ。



 村は、本当に鬼の方々の村だった。

 僕が魔王だと名乗ると、すぐさま全員土下座した。

 人間は信じなかったのに、魔族の人には通じた。不思議だ。

 村長みたいなお年寄りが言う。


「どうぞ、大したもてなしはできませんが、しばし滞在を」


 好奇心もあったので、僕は丁重にお礼を言ってからその申し出を受けた。


 が。

 宴会になり、お酒は飲まなかったけど色々疲れた僕は、用意された部屋のベッドに腰掛ける。

 そこに。


「まっ、魔王さまっ」


 村長の末娘の鬼が、顔を真っ赤にして現れた。

 何故か薄着。


「ヴあっ!?」


 その人はスレンダーな体型で、海斗くんと違ってグラマーじゃない。けれど、清純な雰囲気とか、クラスメイトに似たような子がいたので、それを思い出して、あーやばい。


「魔王さまっ、その、よ、夜伽を」


 顔を真っ赤に、上目遣いで近寄ってくる。

 僕の心臓はそれどころじゃない。


「かっ、火夜と申します。ふつつかものですが、よろしくお願いします」


 ペコリと頭を下げる。

 僕も釣られて頭を下げて、魔王で童貞ですと自己紹介。

 なっ、何してるんだ僕は。


「隣、よろしいですか?」

「はっ、はいっ」


 火夜さんが座る。肩が触れる、二の腕が触れる。

 息遣いの音が近い。何もかも、近い。

 それを思うと、頭が沸騰。

 ああ~、僕はどうすれば!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ