それは、とてもとても美しい
その日、少女は死んだ。
噂によれば自殺したらしい。一人暮らしの少女は右の手首をざっくり切り、風呂場に腕を突っ込んで死んでいたという。そりゃ誰も気づかないわけだ。きっと湯船は血みどろだった事だろう。
朝礼では先生や生徒のすすり泣く声が聞こえた。非常に滑稽だと感じた。どうせろくに彼女のことを知りもしないくせに。人というのは簡単に泣くのだ。改めて1つ賢くなった。
タラタラといつも通りの先生の長ったらしい話が続く。どうせ今泣いている奴らも明日になれば笑顔で挨拶してくるんだ。そう思うと全てがくだらなく感じ、あくびが出そうだ。
ぎゅっと口の中を噛む。少しだけ血の味がする。あくびなんてダメだ。私は優秀でなくてはならないのだ。どんな事があろうと正しい人間で居なければならないのだ。それなのに。
「(笑いが込み上げてきそうなのはどうして?)」
だってそうだろう。一応人が死んだのだ。さすがにそれは私はも分かっている。顔を少しだけ伏せて目頭を摘む。もちろん泣きそうとかではないのだが、こうすれば口角が上がってもバレないだろう。
そっと目を閉じる。何故?どうして私は気分が高揚しているんだ?息が荒くなるのを感じる。どうして?どうして?
靄が少しずつ晴れるように、段々と心が軽くなるのを感じる。
そうだ!自分が殺したからだ!!!
ああ、勿論自ら手をかけるなんて野蛮なことはしない。だって私は優秀だから。友達も居ない、家族も居ない彼女に1番寄り添って居たのは私だ。そうじゃないか。全てを完璧にするために成績優秀な彼女を消したいと思ったのは私じゃないか!!!
口角が音を立てるように段々と上がっていくのを感じる。顔を上げると全員の視線がこちらに向いているのを確認できた。
それは恐ろしいものを見る目から徐々に美しいものを見るような目に変わっていく。
『****様、次はどう致しますか』
心臓が高鳴る。まるで初恋の王子様を見る少女のように。高鳴りのあまりに絶頂しそうだ。口角が歪む。まるで玩具を貰った子供のように。クスクスと笑いが込み上げてきて段々とその声は高まっていく。
「ええ、だってこの世界は私を中心に回っているのだから!!!」
結局何かというのは想像におまかせします。個人的解釈としては"夢"