第9話 後悔
「青春部?」
っく、ミスった。完璧にネーミングミスった。授業も聞かず4時間にぶっ通しで考えてたからな。思わずテンションが…やっぱ変かな
「あ、ああ」
「何する部活かわかんねぇけど…いい名前だな!!俺も入りたいぜ!!」
ああ、春城がこう言うということはやはり残念なネーミングだ…
そして、俺はまだ厨二抜けてないということなのか…
だがしかし、この場においてそれは好都合。とにかく春城の琴線に触れたなら結果オーライ!
「ああ、この部活はな、お前の、お前による、お前のための部活なんだよ!!」
「おお!どっかの大統領みたいだぜ!で、何する部活なんだ?」
「それ含め俺についてこい!」
「まだ飯も
「あとあと!」
はよはよ、と急かし、弁当を机に広げさせたまま職員室に向かう
「おいおい、まさかもう先生に申請するのか?!」
「善は急げっていうだろ?それに早くしないとお前が違う部活に入るからな」
「いや、別に東のところに入るって」
いーや、お前はいざとなったら別の部活に入る。
具体的に言うと、締め切りぎりぎりになると俺が部活を本当に作れるか不安になって、
とりあえず他の部活に入っとこ、あとで東に言えばいいよねって感じで俺を裏切る。
わかるよ、わかるわかる。なんだかんだ締め切り遅れて先生に怒られるの嫌だし。
まあ部活ぐらい好きに入って構わん。こんな地獄みたいなループに陥ってなければな。
野球部になんてもう入れさせんわ。二回も死んじまいやがって。
ということで楽しい部活作ってお前の命を守る代わりに、おとなしく俺の部活に入ってくれ。というか入ってくださいおねがいします…なんで俺が昔の自分に向かってお願いしなきゃならんのか
と、恨み言を行っている間に職員室につく。
まずはそもそも部活が作れるのか、そこが不安だなぁ。
「失礼します。さ、一年一組の東と」
「春城です。」
「山田先生に用事があってきました。入ってもいいですか」
うーん、この挨拶、まさか実質19歳になってもやるとは。恥ずかしい。
「おー東に春城。どしたー」
俺らの担任山田。小柄で短髪。見た目通りたんぱくな性格で年齢不詳。ここ重要。本人の口から年齢の話題が出てきたことがない。まぁ変に若々しくもなく、おばさんっぽくもなく。まさに年齢不詳だ。そして独身の女性教師。いや、独身かはわからないが指輪をつけていないので多分あってる。
その小柄な体からイメージできない雄々しいしゃべり方も、結婚してないと思う理由の一つ。まあ年齢も結婚も直接聞けって話だが怖くて聞けない。
「失礼します。えーと」
「おう」
「部活を作りたいんすけど」
「無理」
「え」
計画破綻するんですが
「で、なんで?」
「え、ああ、今ある部活動には自分の入るべき部活がないんすよ!って春城が言ってました」
「え?!」
「何?そーなのか?」
「え、いやおれは
春城の前に立ち言葉をかぶせる
「実は俺もそう思ってたんすよ!だから一緒に部活を作ろうってしてるんですけど…
無理なんすか?」
「んー。無理って言ったのはあたしの独断偏見経験則勘だ。」
「「はい?」」
「ちょっと待ってろ」
山田は席を立つ。
小声で後ろからなんか聞こえるな。妖精さんかな?
「おい!なんで俺が発案者みたいになってんだよ!」
違った。青春を求めてやまない青春お化けでした。
「いや実はな?部長はお前にやってほしいんだよ俺大勢の前に出るの苦手だし。」
「ええ…けどめんど
「面倒なところは何とかすっから。それに部活の創設者。初代部長だぞ?かっこよくねーか?」
「ま、まあ、確かに?」
まんざらでもない顔しやがって。
ふっ、お前の心をくすぐるなんざ朝飯前なんだよ。いやこの場合は昼飯前か。
春城フミヤのことは、お前のことは俺が一番よく知ってるんだぜ?
…この言葉すごく男らしいと思いませんか?恋人に言ったのなら…
「まあ部長になるのはいいけどよ。部活がそもそも作れるのか?」
「そこを今、山田が、あ、戻ってきた」
「ふーすまんすまん。一応校長と教頭に許可をもらってきた。」
「え、マジですか?!作っていいんすか?!」
「ああ、お二方は許可してくださった」
「おおやったぜ東!」
待て、引っかかる。明らかに山田の顔つきが、部活作れてよかったな、の顔じゃないぞ。
「ああ、勘違いするなよ?あたしに部活を作るかどうかの権限をもたせることについて許可をもらったんだ」
「「はぁ!?」」
「まぁ平たく言えば私が認めれば部活を作っていいってことだ。そして」
「簡単には認めないってことっすね」
ていうか一先生にその権限って重すぎねぇ?
「さぁな。とりあえず部活の内容を話してみろ。それを聞かなきゃ始まらん」
あ、まだ言ってなかったけ?
いざ内容となるとばかばかしくて恥ずかしいな。まるで厨学生だぜ。けど…早期ループ脱出のためなら致し方なし!!
「えっとですね。昨日春城と話してたんすけど、
うちの学校って運動部、文化部どっちかには絶対入らないといけないじゃないですか?」
「おう」
「ショージキな話、運動部に入って後悔する人も結構いると思うんすよ」
「ほお、その心は?」
「運動部の花形というか、入って一番楽しい、うれしいのは選手に選ばれることなんすよ。だけどその枠には限りがあって大概の人は泣いて終わります。」
「今の言い方はよくないし賛同できんな。別に結果がすべてじゃぁない。そこまでの過程も大事なんだ」
「もちろんそうっす。本気でやった人はそう思うでしょう。本気でやったから悔いはない、ここで得た経験は絶対に次に生きるってね。ですが本気でやらなかった人は?達成感なんて得られない。大した苦労もせずに結果を得られると思っていた人は部活で何を得たんでしょうか?」
「それは、頑張らなかったものにも非はあるんじゃないか?結果を、達成感を味わいたければそれなりの努力も必要だし、それを学ぶのも学校だ」
うん、いい言葉だし正論だな。
「ですが、人生でたった一度きりの青春をそんな失敗として、苦い思い出として残すのは、
すごく、すごく、悲しいことだとおもうんです」
あれ、少し、ほんの少しだけ視界がぼやけるな。なんでだ?
「ふむ、知ったように言うな」
「そりゃー…中学で苦い思いであったんすよ。で、人生でたった一度の青春をいいものにしたい、そう思っていても、そのための正解がわからない人はどうしたって妥協します。悔いのない青春だった、といえる人はこの日本で何人いるんでしょうか。
青春を味わいたい。だけど文化部はなんか嫌だ。そうだ、運動部に入ろう。自分はセンスあるのだし、まあレギュラーになって楽しくやれるだろう。そうやって高をくくって、大事な青春を無駄にした先輩を知ってます。だから
「まてまて、全然部活の内容に入らないじゃないか。おま、まあいい、そいつの話は良いから早く内容をいえ」
「あ、はい。
僕と春城が作ろうとしてるのは青春部。青春とは何なのかを研究し、実践する部活です!」
「はあ?…いや…そんな部活作れると思ってるのか?」
「おい、春城。お前が必至に考えた部活、馬鹿にされてるぞ」
「いや俺は」
「お前に聞いてるんだぞ?東」
「部活っていうのは何かに打ち込むこと、そして大切な仲間と絆をはぐくむことを目的としていると思います。
運動部もほかの文化部も大会があって、その大会を目標とするからこその結束が生まれ、絆が育まれると思います。だからこそ」
「だからこそ?」
「大会やコンクールみたいに誰かに価値を見出されることを目標とする部活のほかに、
自分たちのやることに自分らで価値を見出す部活もあってもいいんじゃないかと思って
俺、は部活を作ろうとしています。」
「それが、青春部と。青春とは何たるかを自分らで考え実践していくと、そういうわけか」
「命名は春城です」
「ナチュラルに嘘つくなぁ東!」
「まぁ、名前については審議だし、活動内容も不透明なんだが…」
お、おお?
「まあ、いいだろう。とりあえず、認めてやらんこともないかもしれん!!」
「うおっ!やったじゃん!!」
やらんこともないかもって…結局どっちだ?
「ただし!部員は5名が下限だ」
「へ?」
「さっき他の部活動の創設についても調べたんだが、どこも5人から発足してるようなんだよ。だから5人集めろ」
「お、お言葉ですが、今までの慣習にとらわれていては
「ここは学校。そして部活は公共教育の一環だ。公共に関するものっていうのは前例にのっとるべきなんだぞ?」
「え、でもさっきまですごくいい感じに
「なんだ?そんなにお前の論理を破綻させてほしいのか?」
くっそこの担任。議論になったらどうしたって生徒が勝てるわけないだろ?!
こっちは機嫌を悪くさせたら負けなんだから…
まあ、さっきの話は感情論の、それこそパンケーキよりふわっふわの理論だからな。
ちょろっと涙流してぺらぺらしゃべれば前半の話と後半の話がつながってないことなんて気にされないさ!!…ばれてますね。はい。っち、ばれないように早口でまくし立てたつもりだったのに
そこを通させてもらっただけ良しとするか。
「期限は木曜。それまでに6人部員になってくれる人を集めれば創部を許可する。」
「絶対ですね?まじで頼みますよ?」
「うむ、男に二言はない。」
あんた女だろうが…
・
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教室までの帰り道で春城が口を開く。
「なんかすごかったな。俺圧倒されそうだったよ」
まだ高1のおこちゃまには巧みな俺の論点ずらしには気づけなかったか。
「ふふん、だろうだろう。僕の完全な理論武
「お前の顔!!なんか途中泣きそうになっててさ!中学でどんだけ嫌な思いしたんだよ
それになんかちょこちょこ文っていうか、話の構築がおか
「俺トイレ行ってくる…」
「お、おう。」
トイレの個室は良い。外界と遮断した世界で、落ち着ける。落ち着け…
あああああああ!一分前のことなのにもう黒歴史化してやがる!いつもならその日の夜とかに悶えるのに!!
なんなの?【俺、は部活を作ろうとしています】。シンプルに昔を思い出して頭がはたらかなくなっちまった!
しかも春城に馬鹿にされた!!確かに今の俺と知能指数的には大して変わらんだろうけど、下位互換と思ってたやつに馬鹿にされた!しかもなんも言い返せねぇ!!
確かに春城は昔の俺であって、今の俺の方が幾分か長く生きてるから、おれが上って思ってた。いや誰でも思うだろ。三年前の自分と今の自分どっちが優秀?今でしょ!
ああ、だめだ。顔の火照りが収まらんぞ。これは時々フラッシュバックしそうだ。ああ憂鬱。
やだなぁ。過去の自分に馬鹿にされるって。俺は今回の人生クールにモテる予定だったのに..
教室に戻るか…
「そこでさ!東が涙目になってさ、こういったんだ」
「なんてですか!!」
「何といったんだ?!」
「【俺、は部活を作ろうとし
「やぁめぇろぉぉぉぉぉぉ!!!」
もういっそ見殺しにしてループしていいでしょうか、くそ女神。
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