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月曜に初めて月曜に始まる  作者: 荻戸 凌丞
第一章 入学式の帰りに目の前で死ぬ男
6/25

第6話 また明日

学校についたときには14時10分。

幸い休み時間なので目立たずに入る。

さてさて春城は…

いた。げっ。尚江さんとしゃべってるし。うわー、いやだぁ。あそこに入ってしゃべんなきゃならんのか?

でも早めにやんねーと一緒に帰りにくくなるよなぁ。やだなぁ。あの人レベルの美人さんに汚物を見るような目で見られでもしたら俺、耐えきれない。基本的には人に嫌われたくないし。いや、今の俺には東のクールフェイスがあるんだ。堂々としゃべれば初対面で嫌われることもないはず。


「なぁなぁ」


「お、なんだ?お前このクラスにいたっけ?」


お、おう。状況によってはメンタルブレイクする言葉だな


「そうそう、さっき来たんだよ。俺は東。よろしくな」


「おう!おれは…春城フミヤ!よろ!」


「僕は尚江 永久だ。しかし初日から遅刻とはやるじゃないか。

なかなかの反骨精神だな!」


「いや、別に、そんなわけじゃ、ないですよ?」


いかんいかん、なんか勝手に敬語が出ちまったぞ?なんだ?この人のみなぎるオーラに俺はビビったのか?実質年下なのに


「あれれー、なんで東くん敬語なんですかぁー?あ、私は遠寺 恵瑠です!よ・ろ・し・くですぅ。」


この女神!急に入ってきやがって!!


「ふふ、仕方ない。僕のあふれ出る気品さに敬意を覚えてしまうのはね!!」


あれ、この人もしかして残念美人だったりする?あれあれ?怖さがなくなったぞ?


「ん?君は眠いのか?」


「へ?なんで?」


「いや目が…」


ああ、寝不足だからか。確かにしょぼしょぼしなくもない。


「今日が楽しみで寝れなくて。あ、もう授業始まるから席に戻るよ」


すごすごと席に戻る。いや、女子としゃべる機会は高3でもあったけど、全部事務的なものだったし、自分から女子にしゃべりかけるのハードル高いじゃん?しかもそのハードル超えた後さらに会話継続という地獄マラソンが控えてるわけ。

俺が何を言いたいかというと、女子と会話するのには非常にカロリーを消費するということです。

その分達成感が出てしまうんだが,,,自分で言ってて悲しい。


「なぁ、お前部活決めた?」


前の席に戻った春城に話しかけれる。


「いやまだだけど」


「じゃあ放課後みにいこーぜ!!」


「ああ、いいよ。」


これで、一週目二週目と同じルートになったと、

思ったのに…


「てか尚江なんで一人称僕なんだよー」

「ふふっ気になるかい?これには山よりも高く海よりも深い事情があるんだ」

「珍しいですよねぇ。ん?京一さん、どうしたんですかしかめっ面して」


そりゃしかめっ面にもなるだろうよ!!なんで尚江さんが帰り道にいるんだよ!!完全にルート分岐してんじゃねーか!!


「どうしたんだい東?」


「あ、いやなんでも


「もしかして、疑問に思ったのかい?」


ギクッという擬音がついただろう。今の俺の顔には。それくらいの慌てた顔をしている気がする。


「な、なななんんの


「僕が何で僕、というかがね!!」


あ、それはどうでもいいです。いや、よくないけど。そこそこ気にはなるけど、今それどころじゃないんだよ!あと5分もせずに目の前の男が死ぬ予定なんですよ!!


「そ、そうそう、気になっちゃってー。あはは」

と乾いた笑いをしながらも女神に目で訴える。


【なんでこの人もついてきてんだよ!!】


【家が一緒の方向だからじゃないですか?】


【じゃなくて、俺、お前、春城の三人で下校するって言ったろ!!】


【…】テヘペロッ


許されるかよ!!!

はぁ、何とかなるかなぁ。

女神よ、誘導頼むぞ…


「コンビ二に寄ってかねーか?」


お、今度はトイレじゃないのか。まぁコンビニに寄ってくれる方がいいから助かる。


「かまわないよ」


「あっ京一さん靴紐ほどけてますよ」

よしナイス女神


「あっほんとだ。春城ちょっと待ってくれ」


「ん」


「私たちは先にコンビニ行ってますよー」

女神と尚江さんは先を行く。

これで状況は前回とほぼ一緒。

後は神様を信じるだけだ。


「よし、おっけ春城。待っててくれてサンキュ」


「別にいいさ。てかお前なんで遅刻したの?」


「え、んー、寝坊?」


「…ふーん、あやしいなぁ、俺の嘘つきアンテナがビンビンに立ってるぜ」


「何言ってんだよ。ほらコンビニ行こうぜ」



横断歩道を渡る。もちろんあの車が通ったことは確認済みだ。


店内に入る。


「あ、春城。なんかおにぎり選んでてくれ」


「え?」


「妹に夜食買いたいんだけど俺味覚音痴って言われて。頼む!」


「べつにいいけど」


こちらに背を向ける春城。ほかのみんなも店の奥にいる。

よし。


カポ


俺はトイレに向かう。

神様よろしくお願いします。

願う。願う。願う。



そして、その黒は俺に突っ込む。





「あああああああああ!!!!!」

店内に俺の叫び声が響く。


「何だ?!?」

「車が店に突っ込んだぞ!」

「そこ子供いなかったか?!」


居たよ俺がそこに!!

痛て―よ体のあちこちが!!


けど声は出さないようにしないと!!

ああでもクッソ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいた、くなくなってきた。

いや痛いけど死ぬほどじゃなくなってきた。

腕を見る。車との衝突で千切れそうになっていた腕はそのほとんどが修復され掠り傷程度になっていた。

よし、傷と一緒に痛みも引いていく感じだ。

それがわかるとだんだん気持ちに余裕が出てくる。いや痛いんだけれども


「きみ、大丈夫か?!」


「あ、はい…奇跡的にかすり傷程度に収まってます。」


「しかしさっきすごい声を」


「いやぁ、さすがにびっくりしましたから!コンビニに、しかも俺に向かって車が突っ込んでくるなんて。ほんと、この程度の傷で済んでよかったです。

春城たち!!とりあえず外出ようぜ!!」


皆に呼びかけ店の外に連れ出し、すぐにコンビニを離れる。

このままここにいてまた轢かれるのは勘弁だからな


とりあえずうまくいってよかった。今回の作戦、まあ作戦といえるほど大したものではないが…いうならば博打。何回でも掛けられるからこそ打てたもんだ。


一週目、春城はこの時間帯に車に轢かれた。

そして二週目もほぼ同じ時間帯にコンビニに突っ込んだ車によって死んだ。

このことからするに、死亡には大体の時間帯、場所、そして死因が確定されているのではないかと推定した。今回は17頃、この横断歩道付近、車との衝突だ。

もちろん二回しか春城は死んでないから、正しいかはわからん。けど間違ってたなら、また考えるだけでこれは今回の死亡回避策としての仮定である。


そして、二週目の事故の時運転手は、金髪のガキの顔が思い浮かんで殺したくなった、といった。この【顔が浮かんだ】こと自体は超常的なことかもしれない。だけど運転手の目で、金髪のガキだと思ったやつを轢いた。その結果前回はコンビニの中で見えた金髪のやつ、つまり春城を殺そうとした。まあ殺したんだけど。


そこで今回活躍したのはこれ。ゴリラがいそうなところで買った金髪カツラ。

これをかぶって、店の外から見えやすいトイレへの導線を通ることで運転手に、こいつが頭に浮かんだ金髪のガキだ、と思わせ、俺を轢かせることができた。

念のため、かつらをかぶるところを見られないように入り口からトイレに曲がるときに、運転手から見えない位置で被った。


この考えの土台は、

・このループは俺の手に負えるものである

・俺自身が東の体で死ぬ場合には自動修復する

というものである。


一個目についてだが、もし俺がどう策を弄しても春城が死ぬ運命なら、俺がループする意味はない。俺の手で死亡を回避できるからこそ俺はループするはず。だとすればその死亡のタイミングや死因くらいは決められていると仮定した。


二個目については、女神の本に載ってた【対象者の体つまりは東の体では、その者は死亡することはない】ってのから導いた。もちろん死亡することないというのと傷が修復されるっていうのがイコールで結びつくわけではない。


だから実験した。ループ直前に手首を思いっきりぶっ刺して治るかどうか。

実験は成功。かなり深くまで刺したナイフの傷はみるみるうちに痛みとともに消えていった。


これで俺自身の怪我もその場で修復されることが分かった。

もし治らなくてもすぐにループするから大丈夫って寸法だ。


長々と考えたが、結局のところ、神様、僕の予想どおりの設定でありがとうございますってことだ。ん?神様ってあのアホ女神のことになるのか?なら今の発言は取消で。


「大丈夫だったか?東」


春城がわりかしあっけらかんと聞く。おいおい、こちとらお前の代わりに事故ったってのに。

まあ自分のためが9割だけど。


「普段の行いのおかげが無傷だったよ」


その場がシーンとなる。こういうのなんて言うっけ?天使が通った?ちょっと違うか


「なるほど、つまり僕を含めこの場にいる全員は日ごろの行いが善い!ということだな」


うわぉ、尚江さんポジティブ。実際は事故にあってる時点でね…運がいいとはね… 思えないよね…

それにほかに気がかりなことも多くある。


「細かいこと気にすると将来は毛が無くなりますよ」


「おい!マジでそういうのだめだぞ!め、遠寺!!こちとら親父の写真見るたびに将来ビクついてんだぞ!!」


「めちゃめちゃ元気じゃん東!ほんとに大丈夫そうだな!じゃ、俺こっちだからまた明日な!」

「僕もこの辺で。さよなら!!」


また明日、か。そうだよな。明日が来るんだよな、ついに。もちろんまだ確定じゃない。全然確定じゃないけど…

あ、やばい、涙が、眼汁が…


「意外と涙もろいですよね」


「なっお前まだ帰ってなかったのかよ」


「家の方向同じですもん」


「あっそ」


特にしゃべることなく歩く。不思議とその足取りは軽い。いや、原因はわかってる。誰も死んでない,今回は。それがとにかくうれしいのだ。痛いのが自分は嫌だった。はっきり言おう。俺が痛い思いをするのは嫌だ。ただそれ以上に他人の死の方が嫌だった。目の前で人が死ぬのと自分が痛い思いをするの?天秤はギリギリで校舎を選んだ。


今回はね!今回だけね!!というかあーでもしないと俺が一生高校生のままなんだから仕方ない。


この三日間のことを考えていると、ようやく我が家につく。三日も済めばもう我が家だよな。

とりあえず寝よう。そりゃもうぐっすりと。


「じゃ、また明日な」


このセリフをかみしめ、そして家に入る。


「ただいまー」

「お邪魔しまーす」


ん?いま?後ろからなんか聞こえたんだが?


「おい」


「はい?」


「いまなんて?」


「お邪魔しまーす」


「か!え!れ!自分の家に!なんで俺の安息地を女神に侵されなきゃいけないんだ!!」


「そこまで私のこと嫌ですか!?…ないですもん」


「は?」


「私、今日生まれたものですから、家が無いんです!!だから今日からここで居候させてもらいますね!!」


「かえれぇぇぇ!!!」


俺の安息の地に悪魔が召喚されました。



か、感想が欲しいです…お願いします…

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